法エールVol.158

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ご挨拶

熊本は、まん延防止等重点措置により、飲食店を中心に営業時間の短縮等が行われ、2月13日が期限とされていましたが、3月6日まで延長されました(令和4年2月20日現在)。ワクチン接種も3回目接種が始まりました。コロナ感染症の克服はまだまだ先になりそうな状況です。

何か法律的なことでお困りごとがございましたら、弊法人にご相談ください。

そのような状況の中、弊法人に今月から、令和2年度の司法書士試験合格者が司法書士として入社しました。弊法人では久々の司法書士の入社ということで大変うれしく思います。その方は、20代女性なのですが、最近は20代の司法書士試験合格者が全合格者の10%未満という状況なため、大変貴重な人財であると思います。これから少しずつ実務を覚え皆様のお役に立てる人財となるように事務所全体でバックアップできればと思います。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

~成年年齢の引き下げ等の改正~

前回より、2022年4月1日において、これまで民法の規定によって20歳とされてきた成年年齢が18歳に引き下げられることにつき説明しています。

今回も引き続き、成年年齢関係についての民法の改正につき、Q&A形式で説明いたします。なお、以下のQ1からQ3については、前号をご参照下さい。

 

Q4 成年年齢の引き下げによって、18歳で何かできるようになるのですか?

A.民法の成年年齢には、①一人で有効な契約をすることができる年齢という意味と、②父母の親権に服さなくなる年齢という意味があります。

①では、成年年齢が引き下げられることにより、これまで18歳、19歳の人が契約をする際は、親の同意が必要でしたが、今後は親の同意は不要になります。例えば、一人暮らしのためにアパートを借りる(賃貸借契約を締結する)場合には、これまでは親の同意が必要でしたが、成年年齢引き下げ後は、一人で契約を締結することができるようになります。他にも、携帯電話の契約やクレジットカードを作成すること、ローンを組む場合の自動車の購入などといったことも単独でできるようになります。

なお、2022年4月1日より前に、18歳、19歳の人が親の同意なく締結した契約については、引き続き取り消すことができます。

②では、現在の規定では、自分の住む場所(居所)の指定や、仕事を行うことの許可については、親権者が行うことになっていますが、それらも成年年齢の引き下げにより、自分の意思だけで決めることができるようになります。

その他、10年有効のパスポートの取得や、司法書士、公認会計士などの国家資格に基づく職業に就くこと、家庭裁判所において性別の取扱いの変更審判を受けることなどについても、18歳でできるようになります。

Q5 18歳に達して一人で契約する際に注意することはありますか?

A.未成年者の場合、契約には親の同意が必要です。もし、未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には、民法で定められた「未成年者取消権」によって、親か本人がその契約を取り消すことができます。これは、未成年者を保護するためのものであり、未成年者の消費者被害を抑止する役割を果たしています。

しかし、Q4にもあるように、18歳に達すると成年となり、親の同意がなくても自分で契約ができるようになりますので、未成年者取消権は行使できなくなります。つまり、契約を結ぶかどうかを決めるのも自分なら、その契約に対して責任を負うのも自分自身になります。

契約には様々なルールがあり、そうした知識がないまま、安易に契約を交わすとトラブルに巻き込まれる可能性があります。社会経験に乏しく、保護がなくなったばかりの18歳に達した人を狙い打ちにする悪質な業者もいます。

そうした消費者トラブルに遭わないためには、未成年のうちから、契約に関する知識を学び、様々なルールを知った上で、その契約が必要かよく検討する力を身につけておくことが重要です。

Q6 女性の婚姻開始年齢が18歳に引き上げられるのはどうしてですか?

A.2022年4月1日より成年年齢は18歳に引き下げられますが、女性の婚姻開始年齢は16歳から18歳に引き上げられます。そもそも、男性の婚姻開始年齢が18歳、女性の婚姻開始年齢が16歳と定められていた理由は、男女間での心身の発達に差異があるためとされていました。しかし、現在、高校進学率が98%を超えており、婚姻をするためには男女に関わりなく、少なくとも18歳程度の社会的・経済的成熟が必要であるとの考えが一般化しているものと考えられることから、女性の婚姻開始年齢についても2022年4月1日から施行されます。

なお、2022年4月1日時点で既に16歳以上の女性は、引き続き、18歳未満でも結婚することができます。

 

判例紹介

未成年後見人による預貯金引き出しと親族相盗例(刑法第244条)準用の有無

最高裁判所第一小法廷 平成20年2月18日 決定

事案の概要

被告人は、娘の死後、家庭裁判所により娘の子(被告人の孫)Xの未成年後見人に選任され、Xの預貯金の出納、保管等の業務に従事していた。被告人は、Xの伯父夫婦と共謀して、1,500万円を超える金員を費消するため、これらの預貯金口座から引き出し、横領した。

 

裁判所の判断

第一審の福島地方裁判所は業務上横領罪の成立を認め、控訴審である仙台高等裁判所は、被告人らの控訴を棄却した。そこで、被告人らは親族相盗例が準用(刑法255条・同244条)されるべきである旨主張し、上告をした。これに対し、最高裁判所は適法な上告理由には当たらないとして上告を棄却したが、職権で次の判断を示した。

決定要旨

「刑法255条が準用する同法244条1項は、親族間の一定の財産犯罪については、国家が刑罰権の行使を差し控え、親族間の自律にゆだねる方が望ましいという政策的な考慮に基づき、その犯人の処罰につき特例を設けたにすぎず、その犯罪の成立を否定したものではない。」

未成年後見人の選任、義務等に関する民法の規定を見ると、「未成年後見人は、未成年被後見人と親族関係にあるか否かの区別なく、等しく未成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っていることは明らかである。

そうすると、未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、家庭裁判所から選任された未成年後見人が、業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に、上記のような趣旨で定められた刑法244条1項を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はないというべきである。したがって、本件に同条項の準用はなく、被告人の刑は免除されないとした原判決の結論は、正当として是認することができる。」

 

コメント

刑法244条1項で「配偶者、直系血族又は同居の親族の間で第235条の罪(窃盗罪)、第235条の2の罪(不動産侵奪罪)又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。」と規定されており(「親族相盗例」と呼ばれています。)、業務上横領罪にも準用されています(同法255条)。

この親族間の窃盗等に関する刑の免除につき、「法は家庭に入らず」という政策判断に基づくというのが一般的な説明です。本件では、Xの祖母である被告人はXの直系血族に当たるのですが、同時に未成年後見人という地位にもあったことから、親族相盗例が準用されるかが問題となりました。

この点につき、本決定は「未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するもので」「同条項(刑法244条第1項)の準用はない。」としました。

未成年者後見人による未成年者の保護もこの公的利益に含まれると解されますので、「法は家庭に入らず」という親族相盗例が想定した状況といえないことを決定の根拠としたものと思われます。

 

コラム

~私のヒーロー~

私にはヒーローがいます。

それは、今年、中学3年生になる甥っ子です。

小学校卒業後に大阪の親元を離れ、大分県の明豊中学校に通っている彼は、小学校2年生の頃から夏休みになると、毎年大阪から一人で飛行機に乗って、熊本まで遊びに来るような行動力に満ち溢れた少年です。

小学生の頃から大人顔負けの絵を書き、パズルをやらせたら、ものの数分で完成させるような超人です。

中学校に入学した当時はガリガリでしたが、部活の厳しい稽古に耐え、今では細身のキン肉マンのように成長しています。

そんな彼、4月から生徒会長になるそうです。

君の95万パワーの内、ほんのちょびっと分けて欲しいと願う、最近肩こりが激しい伯父さんでした。

清水事務所 福島 直也

 

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