法エールVol.157

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ご挨拶

新年あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、弊法人では、毎年、年度方針発表会を行っております。法人と個人で今年の目標を設定し、発表します。弊法人の今年の年度方針は、「実践躬行(じっせんきゅうこう) 動いて変える輝く未来へ」としました。この実践躬行とは、論語の述而第七の中で、「躬(み)もて君子を行うことは、則ち吾未だ之を得ること有らざるなり。」という言葉があり、「君子の道を実行することは、私にはまだなかなか出来ない。」と訳され、そこから、「理論などを実際に実行してみること。言うだけでなく、実行してみることが大切だ。」という意味に解されています。

今年も、年始からコロナの感染が増加しておりますが、このコロナ禍、立ち止まっていては何も生まれません。社員一人一人が、定めた目標に向かって行動していき、少しでも自己実現に近づけ、そして達成できるよう、全社員一体感をもって取り組んでまいります。

法エールは、今年で13年目を迎えます。毎回、法エールをお読みいただきましてありがとうございます。今年も、少しでも有益な法的情報をご提供できるように取り組んでまいりますので、何卒宜しくお願い致します。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

~成年年齢の引き下げ等の改正~

令和4年4月1日より、民法により20歳とされてきた成年年齢が18歳に引き下げられます。これまで、公職選挙法の改正により、国政選挙においては、選挙権年齢は18歳以上と既に引き下げられていました。今回は、民法が改正されることにより、これまでより2年早く成年者として、親権者の同意なく契約が締結できるようになるなど、生活における影響も大きなものになります。

そこで、今回より、成年年齢関係についての民法の改正につき、Q&Aをご紹介いたします。

 

Q1 そもそもどうして民法の成年年齢を18歳に引き下げるのでしょうか?

A.我が国の成年年齢は、明治9年の太政官布告から20歳とされてきました。

しかし、近年、公職選挙法の改正により、選挙権年齢が18歳に引き下げられるなど、国政上の重要な事項についても、20歳未満である18歳、19歳の人を大人として扱うという政策が進められてきました。また、世界的にも、成年年齢を18歳としているのが主流となっています。

このような状況を踏まえ、市民生活における基本法である民法においても、18歳以上の人を大人として取り扱うのが適当ではないかとの議論がなされるようになりました。

そうして平成30年6月13日、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立し、令和4年4月1日より施行されることとなりました。

この改正は、18歳、19歳の若者の自己決定権を尊重するとともに、積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにする意義を有するものと期待されています。

Q2 成年年齢は、いつから18歳になるのでしょうか?現在、19歳の人の扱いはどのようになるのでしょうか?

A.成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする「民法の一部を改正する法律」は、令和4年4月1日から施行されます。したがって、その日以降に18歳に達する人は、18歳に達した日に成年となります。(改正民法第4条)

なお、令和4年4月1日の時点で18歳以上20歳未満の人(平成14年4月2日生まれから平成16年4月1日生まれの人)は、令和4年4月1日に成年に達することになります。

Q3 お酒やたばこも18歳から解禁になるのですか?

A.民法で定める成年年齢が18歳に引き下げられても、お酒やたばこに関する年齢制限については、20歳のまま維持されます(未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙禁止法は、その名称も含め改正されます)。また、公営ギャンブル(競馬、競輪など)の投票券の購入も、年齢制限は20歳のまま維持されることになります。これらは、健康被害への懸念や、ギャンブル依存症対策の観点から、18歳に引き下げることは適切ではないとして、これまでどおり20歳から解禁となる扱いです。

18歳に変わるもの20歳が維持されるもの
  • 帰化の要件
  • 10年用パスポートの取得
  • 性別の取扱いの変更の審判
  • 医師免許、司法書士資格、公認会計士資格、行政書士資格等の取得

(その他、約130法律)

  • 養子をとることができる者の年齢
  • 喫煙年齢、飲酒年齢
  • 競馬、競輪、オートレース、モーターボートなど公営競技における投票券の購入
  • 国民年金の被保険者資格

(その他、約20法律)

 

判例紹介

危急時遺言の確認における、真意に出たものであるとの心証の程度

東京高等裁判所 令和2年6月26日 決定

事案の概要

本件は、深刻な病状で入院中の遺言者Cがした危急時遺言について、証人の1人Aが民法976条4項に基づき家庭裁判所による遺言の確認を求め申立てをした事案である。

Cの法定相続人は、夫、長女、長男Bである。Cは体調を崩し、ほぼ寝たきりだったが、同居する夫、長女から十分な介護を受けられず、Bの手配で入院に至り、退院後はB宅に居住・療養していた。その後、重度の心不全と多臓器に障害が生じ、再び入院し、数日で命を落とすかもしれないほどの病状であった。入院前より、Cの財産につきBから相談を受けていたF弁護士は、C自身から公正証書遺言作成の同意、「Bにすべて残す」との遺言内容を確認していたが、Cの急激な体調悪化の連絡を受け、危急時遺言の手続きを開始し、Cが小康状態を保ち、医師の質問や生年月日を答えられる状態にあった某月19日、法定の手続に則り、Aを含む行政書士3人を証人として、前記内容の危急時遺言を作成した。

本件申立てを受け同月23日、家庭裁判所調査官がC本人と面談したところ、Cは誰が立ち会ったか、どのような内容の遺言かとの問いかけに明確に答えられず、その後の同趣旨の問いかけにも、あいまいな答えに終始した。同日の神経内科医の診断によれば、簡単な質問には答えられるが、判断が必要な質問には答えられないとのことであり、認知機能検査MMSEの結果では25点中4.5点(認知症の疑いが強い)の得点であった。数日後、Cは死亡し、Aは民法976条4項に基づき、家庭裁判所に遺言の確認を求めた。

裁判所の判断

原審は、「遺言作成時の遺言者の状態に照らし、遺言の趣旨や効果を理解したうえで、口授することができたというには、疑義が残るものであり、本件遺言が遺言者の真意にでたものとは認められない。」として、Aの申立てを却下した。A及びBは即時抗告し、控訴審においては、概ね原審と同様の事実認定でありながら、「遺言者の真意につき家庭裁判所が得るべき心証の程度については、確信の程度にまで及ぶ必要はなく、当該遺言が一応遺言者の真意に適うと判断される程度のもので足りると解するのが相当である」と述べ、総合的検討の結果、Cの遺言は、Cの真意に叶うと判断される程度の心証は得ることができると結論付け、遺言は有効であると判断した。

 

(死亡の危急に迫った者の遺言)

第976条 疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。

(2項、3項省略)
4 前三項の規定によりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
5 家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。

 

コメント

危急時遺言は、「確認」の手続きを経る必要があり、この遺言においては、遺言の日から20日以内に、家裁の確認の審判を受けなければならないとされています。これは、遺言が遺言者の真意に出たものであるのか判定するものです。死亡の危急に迫った遺言者の遺言が真意に出たものであるかの判断は極めて難しく、また、危急時遺言の大部分はやり直しがききません。そこで、確認の際の真意性の心証形成につき、厳格な態度判断をするよりも、一応遺言者の真意に適うと判断される程度の緩和された心証で足りるとの見解が多数派となっています。今回紹介した裁判例の判断も、この多数派の見解と親和的なものになっています。

日常のやり取りにおいてすら、相手の言が真意に出たものであるか判断するのは難しいこともあり、自分の意志を正確に伝えるためにも、また、死後にトラブルの種を残さないためにも、元気なうちに公正証書遺言等法定の方式に則った遺言書を作成しておくことをお勧めします。

 

司法書士日記

私は、休みの日は家にこもっていたいタイプで、本を読んだり、ボールペンを集めたりすることが唯一の趣味です。

ここ数年は、ジェルインキのボールペンがお気に入りで、よく使っているのは、「ペンテルのエナジージェル0.7mm」です。

とても書き心地が良いペンですが、飽きてきたこともあり、新しいペンとの出会いを模索しておりました。

そんな折、最近テレビで文房具特集の番組を見ていたところ、ボールペンの代わりに細字のサインペンを使う人が増えているという情報を得ました。

そこで早速「magicラッションpen0.5mm」を買ってみました。

サインペンなだけあって、ボールペンより力を入れずに書け、ノンストレスで、書き心地もとても良いです。

しばらくこのペンを使い倒していこうと思います。

龍田事務所 司法書士 野口 芽久美

 

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