法エールVol.168

PDF版

ご挨拶

早いもので年末を迎えました。今年は皆様にとってどのような一年でしたでしょうか。

コロナ禍の3年目を迎え、ワクチンや新薬の開発により、コロナウイルスに対抗できる手段が増えて少しずつ日常の生活に戻りつつあるように感じます。私が所属する勉強会でもこれまではZoomのみで行うことがほとんとでしたが、Zoomとリアルのハイブリット開催等、以前と異なる取り組みも増えてきました。

今年は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻というショッキングな出来事が起こりました。ウクライナ、ロシア両国の国民が多数死亡するという悲しい状況となりました。ロシア・ウクライナ両国共に異なる主張があると思いますが、調整を図る中で早期に停戦に至ることを願います。

コロナやウクライナ侵攻等の影響で、日本は円安の進行と物価上昇で不況に陥るとマスコミ等で言われております。現在のインフレ率は、欧米が8~10%で、日本は2%程度ということです。欧米と比較すると日本のインフレはまだ低いということがいえます。しかし、今後物価上昇で商品への価格転嫁がさらに進んでいくとインフレ率は上昇していきます。また、日本の財政リスクは高いとマスコミ等でいわれておりますが、数字をみるとG7諸国の中で国債デフォルト確率はドイツに次いで第二位の低さだということです。これは日本の国債が国際的に信認されていることを表します。円安により日本の価値が下がったとは一概にはいえないようです。円安と物価上昇で日本が不況に陥るかどうかは今後の政策に関わってくるところがあります。賃金上昇等により需要創出に取り組み、需給のバランスを図っていきながら、乗り切っていければと感じます。

最後になりましたが、本年も皆様には大変お世話になりました。心より感謝申し上げます。

来年も本年同様よろしくお願いいたします。よいお年をお迎えください。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

~組織再編③~

先月まで2回にわたり、組織再編に関する前提としての「ホールディングス化」の目的、メリット、デメリットについて説明いたしました。そこで、今月は、具体的にどのような方法でホールディングス化していくのかについて説明いたします。

具体的方法の一部として、会社法に基づき株式移転、株式交換、株式交付という方法が用いられています。

 

株式移転

まずはじめに株式移転について説明します。株式移転とは、今ある既存の会社とは別の会社を新しく設立し、その新設会社を完全親会社(100%出資)とする方法です。新設会社に既存の会社の株式を取得させる方法であり、多額の資金を準備する必要がありません。したがって、まだこれから発展していくことを見越してホールディングス化を目指す企業にとっては、採用しやすい方法です。また、通常株式会社の設立には公証役場にて定款の認証を必要としますが、この方法によれば、その認証をすることなく、新しい会社を設立することができるため、コストも安く、完了までのスピードも速いです。

 

株式交換

次に株式交換ですが、既にある複数の会社をホールディングス化していくにあたり用いることが多い手続きです。既存会社の一つの会社へ、他の既存会社の株式を100%持たせるようにすることで親子の関係を作ります。例えば、A社、B社、C社の3社があり、A社を持株会社とし、B社、C社をを子会社とする場合は、B社、C社の株主に対し、それぞれの株式を取得する代わりにA社の株式を交付し、又は金銭を交付します。これにより完全な親子関係を作り上げ、B社、C社の株主はA社へと変わります。なお、金銭交付の場合、B社、C社の株主であった人はA社のは株主にはなりません。

 

株式交付

最後に株式交付です。株式交換が100%子会社を作ることに対し、株式交付は、持株会社としたい会社が他の会社の株式の一部を取得することで子会社化する手続きです。50%以上100%未満の株式を取得して完全ではないにしろ子会社化するということになります。上の例でいうとA社がB社の株主に対し、B社の株式を取得する代わりにA社の株式を交付し、B社の株式の60%を取得して、また、C社の株主に対しても同様にC社の株式を取得する代わりにA社の株式を交付し、C社の株式の75%を取得することにより、A社とB社、C社との親子関係を作り上げます。

 

3か月にわたり、ホールディングス化や組織再編について説明しましたが、御社のさらなる発展、事業承継等を検討するにあたり参考にしていただければと思います。

 

判例紹介

第三者が提起する親子関係不存在確認の訴え

最高裁判所第二小法廷 令和4年6月24日判決

事案の概要

亡E及び亡Dは、亡Aと亡Bとの間の子であり、亡Cは、戸籍上亡Aと亡Bとの間の子とされている者である。

亡Eは昭和25年に、亡Cは平成14年に、亡Dは平成29年に、それぞれ死亡した。亡Dの戸籍上の法定相続人は、亡Eの子である上告人X外1名(丁)及び亡Eの子ら3名(甲・乙・丙)である。

本件は、Xが、検察官に対し、亡Cと亡A及び亡Bとの間の各親子関係の不存在の確認を求める事案である。

原審は、亡Cと亡A及び亡Bとの間の各親子関係に関し、第三者であるXは、本件各親子関係が不存在であることにより自己の身分法上の地位に直接影響を受けることはないから、本件訴えにつき法律上の利益を有しないと判断して、これを却下すべきものとした。

 

裁判所の判断

原判決を破棄し、第1審判決取消し。本件を家庭裁判所へ差し戻す。

本件各親子関係が不存在であるとすれば、亡Dの相続において、亡Cの子らは法定相続人とならないことになり、本件各親子関係の存否によりXの法定相続分に差異が生ずることになる。親子関係の不存在の確認の訴えを提起する者が当該訴えにつき法律上の利益を有するというためには、当該親子関係が不存在であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることを要すると解されるところ、法定相続人たる地位は身分関係に関する者であって、Xは、その法定相続分に差異が生ずることにより、自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けるとうことができ、法律上の利益を有するというべきである。

 

コメント

判例は古くから、親族が他人間の親子関係不存在確認の訴えを提起するには、単に親族であるというだけでは足りず、他人間の親子関係の不存在の確認によって、その第三者が、特定の権利を得るか、または特定の義務を免れるような直接の利害関係を有することを要求しているが、権利義務への影響という表現に代えて、本判決では、身分関係に関する地位への直接の影響という表現が用いられ、本件Xに法律上の利益が認められてた点で、意義あるものと考えます。

 

コラム

~娘と映画鑑賞~

去年の年末、映画「マトリックス」の続編があるとのことで、娘(当時小学四年生)を誘い観に行きました。

娘と一緒に映画館で映画を見るのは初めてで、娘にとって楽しい思い出になってくれたらいいな・・・とか、あのシーンは凄かったよね・・・とか話せたらいいな・・・などなど、私なりに思うところはあったのですが、現実は思い描いた通りにはいきません。

映画が始まるや否や、娘は売店で買ったホットドッグを平らげ、ジュースを飲み干したと思うと、10分もかからない内に夢の中へ。

その後、映画の中で大きな音がした瞬間だけ目を覚まし、また夢の中へを何度となく繰り返し、エンドロールでやっと目を覚まして一言、「面白かったね」と。

「オイ!」と突っ込みを入れたくなりましたが、映画がシリーズ4作目で前作を見てないと話が分り難かったり、日本語吹替ではなく字幕だったり、眠ってしまうのも仕方ないところもあり、私自身反省しました。

というわけで、去年のリベンジではありませんが、今年は映画「Dr.コトー診療所」を娘と観に行きます。

以前のドラマ版を娘も見ているし、言葉は日本語。

去年の反省をしっかり生かした選択をしていますので、今年は去年と同じ轍を踏むことはないと思います。

さて、今年は娘と映画の内容の話ができるのでしょうか。

ホントのところ、私の思いが実現するかどうかはあまり重要ではなく、失敗も含め、こんな何気ない日常の積み重ねこそ、後々良い思い出になるような気がしています。

龍田事務所 山田 祐樹

 

お知らせ

寄り添う支援で笑顔ふたたび

当法人は、「NPO法人身近な犯罪被害者を支援する会」との連携を図っています。
ご質問、ご相談等ございましたら、当法人もしくは下記までご連絡ください。
TEL 096-341-8222 FAX 096-341-8333

命の絆・大切に、輝く命・永遠に

当法人は、「一般社団法人命の尊厳を考える会」との連携を図っています。
ご質問、ご相談等ございましたら、当法人もしくは下記までご連絡ください。
TEL 096-337-1251 FAX 096-337-3355

司法書士法人ヒューマン・サポート法律支援センター

当法人では、継続的な相談にも対応できるよう、顧問契約の締結を行っています。
会社・個人問いません。詳しくはお近くの事務所までお気軽にお問い合わせください。

PDF版