法エールVol.167

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ご挨拶

先日、天草大陶磁器展に行ってきました。去年は、コロナ羅患者の増加で開催中止となりましたが、基本的に毎年開催しており、今回で2年ぶり18回目の開催です。陶磁器展には、他県も含めてたくさんの陶芸家が集まり、自らの作品を展示しています。作品をみると、陶芸家によって作風が異なるので、見るだけでも楽しい時間を過ごすことができます。

天草地方は、古くから全国でも有数の陶石(陶磁器の原料となる岩石)の産出地として知られており、陶石といえば天草陶石を指すと言われるほどです。しかし、陶磁器の原材料である陶石は有名でも、陶芸家は少なかったということです。そのため、天草の陶芸家が集まり協議し、行政の協力も得て、平成12年度に開催された県民文化祭において、「陶石の島から陶磁器の島へ」と題した決議文が採択されました。それ以降、陶芸のまちづくりを進め、若手陶芸家の育成や天草陶磁器の知名度向上等行ってきました。

現在の天草には、大小さまざまな窯元が20以上あります。平成12年から始まった事業は少しずつ形になり、毎年天草大陶磁器展にはたくさんの方が来場されます。天草の陶芸家の作品はどれも素晴らしい物ばかりであり、その作品のほとんどは日常で利用され、実用的です。天草の陶磁器が全国の方々に日々利用されることを願っています。

弊法人も、ビジョンを掲げて日々行動しております。今回、天草大陶磁器展に行き、天草の陶芸家の方々のように、ビジョン達成に情熱をもって取り組んでいこうと改めて思いました。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

~組織再編②~

先月は、「ホールディングス化」とは何かという説明をさせていただきました。今月は、ホールディングス化の目的と、ホールディングス化することのメリット、デメリットについて説明致します。

 

まず、ホールディングス化する目的としては、所有と経営の分離による役割の明確化によってスムーズな成長を図る、会社の経営者というポストを作り、社員のモチベーションアップや経営者意識の向上による会社の成長を図る、M&Aに機動的に対応できる体制を構築する、事業承継の準備や節税に利用する、などが挙げられます。

 

次に、ホールディングス化のメリット、デメリットは、主に以下の点が挙げられます。

 

メリット

  1. 意思決定の迅速さ
    グループ会社に個々の事業を任せた上で、持株会社はグループ全体の意思決定に特化することができます。これにより、経営の迅速化を図ることができ、効率的な事業運営を行うことができます。
  2. 事業ごとにリスクを分散
    仮に、グループ会社のうちの1社が莫大な損失を出した場合でも、持株会社やグループ内の他の会社に対する影響を抑えることができ、グループ内の他の会社を守ることができます。
  3. 組織の活性化
    グループ全体が活性化し、総合力を発揮することで、一部門に限られないグループ全体としての戦略的な方法が図れます。
  4. 円滑な事業承継
    ホールディングス化によって設立した持株会社の株式を後継者に引き継ぐ方法により、グループ会社の株式の分散を防ぎ、先代経営者の事業を円滑に引き継ぐことができます。

 

デメリット

  1. 連携が取れにくくなる
    同じ会社の中での別部門の場合は、連携も取りやすいのですが、別会社となると社風や企業経営の判断基準が異なることもあり、グループ会社間に対立が生じてしまうと、意思疎通がスムーズにいかなくなることが考えられます。
  2. 維持・管理コストの増大
    会社間で部門が重複し、コストが増加し、ホールディングス全体の収益確保を阻害してしまうことも考えられます。

 

次回は、ホールディングス化を行うにあたっての手続について説明します。

 

判例紹介

情報公開と知る権利

最高裁判所第一小法廷 平成6年1月27日判決

事案の概要

1 大阪府の住民Xらが、1984(昭和59)年に制定された大阪府公文書公開等条例に基づいて、1985(昭和60)年1月ないし3月に支出された大阪府知事の交際費(約200万円)について、公文書の公開(閲覧及び写しの交付)を請求した。しかし、大阪府は歳出額現金出納簿、支出証明書、債権者の領収書および請求書兼領収書について、そこに記録されている情報が本件条例(1999〔平成11〕年全面改正前のもの)8条4号等および9条1号に定める非公開情報に該当するとして、公開しない旨の決定をしたため、Xらは大阪府知事(Y)に対し、非公開決定(処分)の取消しを求めて出訴した。

同条例8条では、「公開をしないことができる」情報として、4号で企画、調整段階に関する情報(「府の機関又は国等の機関が行う調査研究、企画、調整等に関する情報であって、公にすることにより、当該又は同種の調査研究、企画、調整等を公正かつ適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれのあるもの」)、また9条は、「公開をしてはならない」情報として、1号でいわゆるプライバシー情報ないし個人情報(「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個入の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」)を挙げていた。

2 第1審(大阪地判平成元・3・14)は、情報公開条例は「基本的に憲法21条等に基づく「知る権利」の尊重と、同法15条の参政権の実質的確保の理念に則り、それを府政において具現するために制定されたもの」であり、「過去において行政機関の保有する文書が、行政庁側の種々の名目のもとに、ややもすれば、意的・濫用的に秘密扱いされ、住民の知る権利を妨げ、ひいて地方自治の健全な発展を阻害する面のあったことに鑑み、それらの弊害を除去するために制定されたことは公知の事実であり、そのようにして制定された情報公開条例の非公開事由該当性を、もっぱら行政機関の側の利便を基準に、その主観的判断に基づいて決するとすれば、その範囲が不当に拡大する危険性があり、ひいては、情報公開制度の実質的意味が失われる」として、適用除外規定を厳格に解釈し、非公開決定を取り消した。原審(大阪高判平成2・10・31)も、第1審判決を支持して控訴を棄却したのでYは上告。

 

裁判所の判断

裁判所は、以下1及び2を理由に、大阪高裁の原判決を破棄し、再度大阪高裁で審理することを命じました。

1 大阪府知事の交際費に係る歳出額現金出納簿及び支出証明書のうち、交際の相手方が識別され得るものは、相手方の氏名等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなどを除き、大阪府公文書公開等条例(昭和59年大阪府条例第2号1)おいて公文書の非公開事由を定めた8条4号等により公開しないことができる文書に該当する。

2 大阪府知事の交際費に係る歳出額現金出納簿及び支出証明書のうち、交際の相手方が私人で識別され得るものは、交際内容等が一般に公表、披露されることがもともと予定されているものを除き、大阪府公文書公開等条例(昭和59年大阪府条例第2号)において公文書の非公開事由を定めた9条1号により公開してはならない文書に該当する。

 

コメント

この最高裁判決に対しては、最高裁が、情報公開条例の趣旨・目的を憲法上の「知る権利」の具体化とは捉えないで、公開請求権を単なる条例上の権利としか認めようとしなかったとして、時代に逆行する判決であるとの批判も受けています。多くの情報公開条例の制定の趣旨目的は、「『知る権利』の保障と個人の尊厳の確保に資する」こと、そして、「地方自治の健全な発展に寄与する」ことを考慮すると、できる限り多くの情報を公開すべきとも言えます。しかし、相手方の情報が公開されることにより、相手方との信頼関係を損なったり、交際事務の目的が達成できなくなるなど、行政の公正かつ適切な公務執行に支障を生ずるおそれもあります。情報を公開することにより得られる利益と、公開することにより生ずる不利益と、どちらが上回るのかにより判断が分かれるようです。

近年は、交際費等を含め、行政に関する情報を積極的に公開する自治体もあり、今後も情報の公開に繋がるよう住民として行政の動きに関心を持つことが大切です。

 

コラム

~プラネタリウム~

先日、熊本博物館のプラネタリウムを観ました。

どの季節の空も美しいのですが、特に多くの1等星が輝く冬の南の空は格別です。

オリオン座の四角形の左上で赤く輝く「ベテルギウス」、白く輝くおおいぬ座の「シリウス」と、こいぬ座の「プロキオン」を線で結び、これら、3つの星を結ぶ「冬の大三角」はよく知られています。

椅子を後方に倒して、天井に映し出された星空がゆっくりと移り変わっていく様子を眺めながら、小学校4年生の時にクラスの友達数人と夏の研究宿題のため、学校のグラウンドに集まり、寝転がって天の川銀河がまたたく夜空を見たことを思い出しました。

壮大な宇宙の神秘さに不思議な感覚を持ったものでした。

138億年の宇宙の歴史を365日に置き換えると、人類が誕生したのは大晦日の午後11時52分にあたるとも言われています。

くよくよしそうな気分も切り替えてポジティブになれそうです。

都会では、排気ガスで綺麗に星空が見えないことが多いと聞きますが、有り難いことに私達の故郷熊本では美しい星空を見ることができます。

たまには、寝転がって夜空を眺めてみませんか。

行政書士法人ヒューマン・サポート 行政書士 上野 庸祐
(司法書士法人ヒューマン・サポート法律支援センター連携行政書士)

 

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