法エールVol.161

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ご挨拶

皆様、今年のゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたでしょうか。

3年ぶりにコロナによる行動制限がありませんでしたので、外出された方も多かったのではないでしょうか。

テレビニュースでの情報では、過去2年に比べて外出は増加し、近距離での外出はコロナ前に近づいたということでした。

しかし、遠方への外出はコロナ前の6割ほどであり、観光業界は厳しかったのではないかということでした。

私は、家族で外食に行きましたが、人気店はどこも多く、予約しようとしたところ何軒かは満席で予約を断られました。

行きたいお店になかなか行けないということは残念ではあるのですが、飲食店に活気が出てくると熊本の街も元気になりますので、喜ばしくも思いました。

熊本の街は活気が戻りつつありますが、ゴールデンウィークの外出が多かったことで、今後コロナ感染が増加する可能性があります。

そうすると行動制限等の話がでてきてまた外出を控える状況になれば、せっかくお客様が戻ってきた飲食店も再度厳しい状況になります。

どのような状況になれば安心して生活できるのか、先が見えない状況の中、政府の明確な説明を期待したいところです。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

~民法等一部改正について~

前回は、不動産登記法の改正の中で、相続登記の義務化についてご説明いたしました。今回は、住所変更登記と外国に居住する所有権の登記名義人の国内連絡先の登記について説明いたします。

 

1.住所変更登記等の申請の義務化と職権登記制度

現在、不動産登記名義人の住所変更登記等の申請は任意とされており、変更の登記申請をしなくても大きな不利益がなく、また、転居等の度に所有する不動産についてそれぞれ変更の登記申請をするのは負担であることから、住所変更登記等がなされていないケースがありました。

しかし、主に都市部では、住所変更登記等の未了が所有者不明土地の主な原因となっているとの調査結果もあることから、所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることが義務付けられました。「正当な理由」がないのに申請を怠った場合には、5万円以下の過料に処せられます。

ただし、法務局の登記官が他の公的機関から取得した情報に基づき、職権的に変更登記をする新たな方策も導入されることになりました。個人に対しては、本人による「申出」があるときに限定されますが、法人に関しては、法人の住所等の変更が生じた場合(法人の主たる事務所等につき法人登記の変更の登記申請がなされた場合)、その法人の「申出」がなくても、職権で変更の登記がなされることになります。

この改正は、公布日である令和3年4月28日から5年以内に施行されることになっていますが、令和4年5月20日現在において、施行日は確定していません。

施行日前に住所等変更が発生していたケースについても、施行日からは登記の申請義務が課されますので、注意が必要です。

 

2.外国に居住する所有権の登記名義人の国内連絡先の登記

近時、国際化の進展の下で、海外在留邦人の増加や海外投資家による我が国への不動産投資の増加により、不動産の所有者が国内に住所を有しないケースが増加しつつあります。こうしたケースにおける所有者へのアクセスは、基本的に登記記録上の氏名・住所を手掛かりとするほかありませんが、我が国のように住所の公示制度が高度に整備された国は少ないことなどから、その所在の把握や連絡を取ることに困難を伴うことが少なくないとの指摘がされています。

所有権の登記名義人が外国居住者である場合については、住基ネット等との連携によっても住所等の変更情報を取得することができないため、円滑に連絡をとるための特別な仕組みが必要です。

そのため、所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、国内における連絡先を登記事項とすることになりました。具体的には、国内における連絡先となった者の氏名・住所等を登記することになります。

この改正は、令和6年4月1日から施行されます。

 

以上が、不動産登記の住所変更登記等に関する改正点についての主な説明となります。次回は、相続土地国庫帰属制度について説明致します。

 

判例紹介

不法行為における短期(主観的)消滅時効の起算点

最高裁判所第三小法廷 令和3年11月2日 令和2年(受)第1252号

事案の概要

X(原告・被上告人)は、平成27年2月26日に発生したY(被告・上告人)との自動車事故により、心身傷害と車両損傷を被った。その後、遅くとも同年8月13日までにはXはYが事故の相手であることを知り、事故による心身傷害については、同年8月25日に症状固定の診断が下された。

Xは平成30年8月14日に損害賠償の訴えを提起したが、原審は「同一の交通事故により被害者に心身傷害及び車両損傷を理由とする各損害が生じた場合、被害者の加害者に対する車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の短期消滅時効は、被害者が、加害者に加え、当該交通事故による損害の全体を知った時から進行するもとの解するのが相当である」として、車両損傷に基づく損害賠償請求権について、Yによる時効消滅の主張を排斥した。

民法724条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一.被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
二.(省略)
民法724条の2
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。

 

裁判所の判断

「車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の短期消滅時効は、同一の交通事故により同一の被害者に心身傷害を理由とする損害が生じた場合であっても、被害者が、加害者に加え、車両損傷を理由とする損害を知った時から進行するものと解するのが相当である。なぜなら、車両損傷を理由とする損害と身体傷害を理由とする損害とは、これらが同一の交通事故により同一の被害者に生じたものであっても、被侵害利益を異にするものであり、車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は、身体傷害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権とは異なる請求権であると解されるのであって、そうである以上、上記各損害賠償請求権の短期消滅時効の起算点は、請求権ごとに各別に判断されるべきものであるからである。」として、Xの車両損傷による損害賠償請求及びそれに伴う弁護士費用の請求については消滅時効が完成したとして、その訴えを退けた。

 

コメント

本判決は、同一の交通事故により被害者に車両損傷及び身体傷害を理由とする各損害が生じた場合に、車両損傷を理由とする損害賠償請求権の短期消滅時効の起算点を、事故日(ただし、同日において、被害者が加害者を知らなかった場合を除く。)としたものです。身体傷害を理由とする損害賠償請求権については、治療終了日(傷害分)又は症状固定日(後遺障害分)から消滅時効が進行するものとされており、それぞれ時効の起算点が異なることから、それぞれの請求権が時効により消滅する時期が異なることになり、時効管理に留意する必要があります。

なお、令和2年4月1日より、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効については、これまで、被害者又はその法定代理人が、損害及び加害者を知った時から「3年間」と規定されていたのが、「5年間」に伸長されています。

 

コラム

~ローズガーデン~

この季節になると近所の家のバラが見頃を迎えます。

十年頃前から植え始めたそうですが庭仕事の好きなご主人が心を込めて世話をしておられます。

赤・黄色・白・濃いピンク・薄いピンクいろとりどりのバラが咲き周りの人たちも毎年楽しみにしています。

散歩していると垣に沿って植えられているバラの甘い香りに包まれて幸せな気持ちになります。

また歩く度、見る位置ごとに雰囲気が変わるのも魅力です。

ここ数年コロナ禍でレジャーや旅行が制限される中、まるでバラ園にいるかのような癒しを与えてもらっていることに感謝しています。

清水事務所 大島 文恵

 

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