法エールVol.155

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ご挨拶

衆議院選挙が、10月31日に投開票され、結果が出ました。結果はご存じのとおりと思いますが、熊本2区は西野だいすけさんが当選されました。

西野だいすけさんは、もともとが財務省の官僚でしたが、5年前に財務省を辞めて熊本に帰ってきました。ちょうど西野さんが熊本に帰ってきたころに、私の友人の誘いで一緒に食事をさせていただきました。友人から「選挙にでるからよろしく。」と言われ、私はてっきり熊本の市議選か、県議選に出られるものと思い、「市議ですか、県議ですか?」と聞いたところ、西野さんは「熊本2区から衆議院選に出ます。」と言われ、驚いたことを覚えております。それから5年、西野さんは雨の日も風の日も街頭に立って演説をされ、戸別訪問は5万数千件ということで、血のにじむような努力をされていました。たまにコンビニ等でお会いすることもあり、プリウスの中でコンビニのおにぎりを食べながら書類に目を通す西野さんの姿を見たときは、少しでもお役に立てればと思ったりしました。

西野さんは、努力の甲斐があり、今回当選されましたが、5年間の活動等を拝見していると、西野さんの強い信念、崇高な志に、周りの方たちが共感し、たくさんの後援会ができ、そこからまた西野さんを応援しようという輪が広がっていったように感じました。5年前には、熊本2区では難しいと周りから言われていても、自分の思いを曲げずに取り組み、その結果、当選された西野さんには、たくさんのことを学ばせていただきました。

問題、課題が絶えず現れてくる中で、志を曲げることなく、弊法人も熊本の皆様のために、微力ながら、有益な法的情報をご提供することができるように努力してまいります。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

相隣関係について

先月より、民法等改正に関する相隣関係(隣地使用権、ライフラインの設備の設置・使用権、越境した竹木の枝の切取り)についてご説明しております。

今月は、ライフラインの設備の設置・使用権についてご説明いたします。

 

第2回(ライフラインの設備の設置・使用権)

民法は、電気・ガス・水道等に関する継続的給付を受けるための設備(いわゆるライフライン)が、未発達の時代に制定されたため、各種ライフライン設置における他人の土地等の使用に関する規定を置いておらず、土地所有者が導管等の設置を希望する場合において、どのような根拠に基づいて対応すべきかが判然としないという問題がありました。

そこで、改正民法において以下のとおり明文化されました。

 

(改正民法213条の2第1項)

土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

このように明文化されたことにより、土地利用の可能性が向上し、ライフライン設置の承諾を他の土地の所有者から得られないために住宅が建てられない、土地を売却できない等の問題は解消されていくものと考えられます。

しかし、無制限に設置・使用ができるわけではなく、以下のような制限・制度等を設けました。

 

【設置場所・使用方法の制限】
設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備のために損害が最も少ないものを選ばなければならない(改正民法213条の2第2項)。

 

【事前通知制度】
他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない(改正民法213条の2第3項)。

 

【償金・費用負担の規律】
土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人の所有する設備を使用する際に損害が生じた場合には、以下のとおり償金を支払う必要があります。(改正民法213条の2第5項~7項)

  • 土地に設備を設置する者は、その土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。
  • 他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
  • 他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

 

次回は、越境した竹木の枝の切取りについてご説明いたします。

 

判例紹介

祖母による子の監護者指定申立

最高裁判所 令和03年03月29日 決定(令和2年(許)第14号)

事案の概要

  1. Y1と前夫は、平成21年△△月、子Aをもうけたが、平成22年2月、子Aの親権者をY1と定めて離婚した。
  2. Y1及び子Aは、Y1が離婚する前から、子Aの祖母(Y1の実母)と祖母宅で同居するようになり、以後、Y1と祖母が子Aを監護していた。
  3. Y1は、平成29年8月頃、子Aを祖母宅に残し、Y2と同居するようになり、以後、祖母が子Aを監護している。
  4. Y1とY2は、平成30年3月に婚姻し、Y2は、子Aと養子縁組をした。
  5. 祖母は、Y1及びY2を相手に、家事事件手続法に定められた「子の監護に関する処分」として、子Aの監護をすべき者を定める審判を申し立てた。

原々審は、未成年者(当時9歳)の福祉のためには、祖母を監護者として指定し、その安定した監護養育を継続させることが相当であると審判した。その後、Y1とY2が抗告した。原審では原々審と同様、祖母を監護者と定めるのが相当として抗告を棄却したが、Y1及びY2は、父母以外の第三者は、子の監護に関する処分として子の監護者指定の審判申立てをすることができないとして、許可抗告を申し立てた。

裁判所の判断

原決定を破棄、原々審判を取り消し、祖母の申立てを却下。

(1)民法766条1項前段は、子の監護をすべき者、その他、子の監護について、父母が協議をして定めるとし、同条2項は同条1項の協議の主体である父母の申立てにより、家庭裁判所が子の監護に関する事項を定めることを予定しているものと解される。

民法その他の法令において、事実上子を監護してきた第三者が、家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく、監護の事実をもって上記第三者を父母と同視することもできない。子の利益は、子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないが、上記第三者に上記の申立てを許容する根拠となるものではない。

 

(2)祖母は、事実上子Aを監護してきた者であるが、子Aの父母ではないから、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分として子Aの監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできない。したがって、祖母の本件申立ては、不適法というべきである。

 

(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
民法第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
(以下、略)

 

コメント

今回の事案では、子Aは祖母との同居も望んでいたようです。祖母と孫との関係が深い状態だったのでしょう。しかしながら、最高裁の判断では、祖母が監護者となれる法律の根拠がない、実態を考慮しても許容する根拠がないということで、祖母が子Aの監護者になることが認められませんでした。これからの子供と取り巻く環境や関係性も重視しながら、よりよい生活が送れる法整備を望みます。

また、同じ日に最高裁において、祖父母が申立人として、孫(亡子の子)への面会求める審判の申立も認められませんでした(令和2年(許)第4号)。

コラム

~オークション~

先日、日本で開催されたあるオークションが話題となっていました。

このオークションは羽田空港第1ターミナルのホールで開催された美術品のオークションです。

ニュースでご覧になられた方も多いと思います。

草間彌生氏などの世界のアート作品が集まり、全作品の落札価格が数十億になるという、日本で開催されるものとしては、最大規模のものだったようです。

なんでも、消費税や関税に関する法律の改正等により、これまで開催に足かせとなっていた税金を、一定の要件の下では納めなくてもよいことになったことがきっかけのようです。

そして関税等が課されない取り扱いは、今後オークションだけではなくアートギャラリーにおいて作品が販売される際にも適用されるようです。

これからも、このようなギャラリー等が増えてくれば、なかなか自分では買えないとしても、会場に出向き、自身の目で世界のアート作品を鑑賞できる日が来るかもしれませんね。

楽しみです! !

龍田事務所 伊藤 峰治

 

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