法エールVol.130

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ご挨拶

10月1日から消費税が10%に増税されました。増税に対しての評価はわかれているようですが、消費の落ち込みは、すでに数字にでてきているようです。

この消費税増税に合わせて、軽減税率等が導入されました。軽減税率では、一部商品が8%に据え置きになり、キャッシュレス決済ではポイントが還元されることになりました。

キャッシュレス決済とは、クレジットカード、電子マネー、口座振替を利用して、紙幣等の現金を使わずに支払い、受け取りを行う決済方法ですが、コンビニ等で支払いをしているのをみると、キャッシュレスで支払っている方が多いのに気づきます。キャッシュレスでの決済は、短時間で支払うことができ、お店側も現金の管理をしなくて済むので、非常に効率的です。紙幣や貨幣の流通が減れば、国も紙幣等を発行する費用を軽減することができます。

このように紙幣等の物がデータに変わるのは、司法書士の世界でも起こっています。平成17年に不動産登記法が改正され、登記申請のオンライン化が始まりました。熊本では、平成18年2月27日から熊本地方法務局本庁において実施され、順次県下の法務局の支局で実施されるようになりました。オンライン申請とは、これまでは申請書等の書面を法務局に持参又は送付して申請していたのが、システムに入力し送信すれば申請として受理されるというものです。この制度の導入により、司法書士事務所から遠方の管轄法務局へ申請する場合、郵送か持参する必要があったのが、事務所からオンラインで申請することができるようになり、法務局へ行く手間が省け、その分の時間を節約することができるようになりました。法務局もオンライン化することで、業務が効率化し、迅速に事件処理できるということです。オンラインは法務局に限らず税務署等の他の機関でも導入されています。

キャッシュレスやオンライン等の電子化の動きは、世界から見ても、当然の動きであるようです。日本は電子化が先進国の中で遅いという報告もでています。電子化することにより、手続きを合理化することができ、生産性向上に資することになります。これから少子高齢化を迎える日本にとって、電子化は大変重要な政策であり、普及促進に弊法人でも取り組んでいきたいと考えております。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 井上 勉)

養子縁組について

今年の6月7日に、経済的事情や虐待などから実親と暮らせない子のための特別養子縁組制度の対象年齢を「原則15歳未満」に引き上げることなどを柱とする民法等の一部を改正する法律案が成立しました。縁組の成立要件を緩和するとともに、養親希望者の負担が重いと指摘される手続きを改定し、制度の利用促進を図る目的があります。

そこで、今回から養子に関する事柄を3回に分けてご紹介いたします。

普通養子縁組とは?

血縁ではなく、当事者の意思によって親子関係を発生させる制度です。法律上の制限として、以下の点が規制されています。

  1. 養親が成年に達していること(民法792条)。
  2. 養子が尊属又は年長者ではないこと(民法793条)。
    →自己より年長の者を養子とすることはできません。
  3. 後見人が被後見人を養子とするには、家庭裁判所の許可を得ること(民法794条)。
  4. 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにすること。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は除く(民法795条)。
  5. 配偶者のある者が縁組をするには、配偶者の同意を得ること(民法796条)。
    →配偶者のある者が養親・養親を問わず縁組を行う場合、配偶者の同意を得る必要があります。ただし、4.の場合を除き、共同して縁組を行う必要はなく、単に同意を得るのみで足ります。
  6. 未成年者を養子とするには家庭裁判所の許可を得ること。ただし自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は除く(民法798条)。

普通養子縁組の効果

養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得し(民法809条)、養子と養親及びその血族との間においては、血族間と同一の親族関係が生じます(民法727条)。

ただし、縁組当時に存在した養子の子(いわゆる連れ子)と養親及びその血族との間においては、血族間と同一の親族関係は生じません。

なお、普通養子縁組では、養子と実親との親族関係は消滅せず、縁組後も相互に相続・扶養の権利義務は存続します。

判例紹介

入れ墨の施術行為を業として行うことが医師法17条の「医業」に該当しないとされた事例

大阪高等裁判所 平成30年11月14日判決

事案の概要

医師免許を有しない入れ墨の施術業者(彫り師)である被告人が、業として、針を取り付けた施術用具を用いて皮膚に色素を注入する行為(いわゆる入れ墨)を行ったとして、医師法17条(「医師でなければ、医業をなしてはならない。」)違反の罪に問われた事案です。原審である大阪地方裁判所は、入れ墨の施術に当たり、その危険性を十分に理解し、適切な判断や対応を行うためには、医学的知識及ひ技能が必要不可欠」であり、「本件行為は、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為であるから、「医業」を内容とする医行為に当たる」と判断し、入れ墨の施術を「医師免許を得た者にのみ行わせることは、重要な公共の利益を保護するために必要かつ合理的な措置」だとして、被告人が罰金刑に処せられたので、控訴したものです。

裁判所の判断

「入れ墨は、皮膚の真皮に色素を注入するという身体に侵襲を伴うものであるが、その歴史や現代社会における位置づけに照らすと、装飾的ないし象徴的な要素や美術的な意義があり、また、社会的な風俗という実態があって、それが医療を目的とする行為ではないこと、そして、医療と何らかの関連を有する行為であるとはおよそ考えられてこなかったことは、いずれも明らかというべきである。彫り師やタトゥー施術業は、医師とは全く独立して存在してきたし、現在においても存在しており、また、社会通念に照らし、入れ墨の施術が医師によって行われるものというのは、常識的にも考え難いことであるといわざるを得ない」などとして、原判決を破棄し、被告人を無罪としました。

コメント

入れ墨の施術は、医師法にいう医業にあたらないとされました。当たり前だとも思える判決です。もし、この施術を医師でないとできないとすると、「医師を目指す者は、一般的に、大学の医学部で6年間の教育を受け、医師国家試験に合格しなければならず、医師として医療行為等に従事するには医師免許を取得する必要があるなど、医師法が規定する医師の免許制は、各種の資格制の中でも相当に厳しい制限といえる。タトゥー施術業が、医業に含まれ、医師免許を必要とする職業であるとしたならば、入れ墨の彫り師にとっては禁止的ともいえる制約になることは明らかというべきである。」とあるように、職業遂行の自由(憲法21条)を制約することにもなりかねないといえます。

ところで、この入れ墨についてですが、我が国における歴史は古く、近年では、国内外で入れ墨の芸術性が評価されるなど、その文化的側面にも注目が集まっていますが、入浴規制等現在の社会的状況に照らすと、入れ墨が正当な行為として受け入れられているとまではいい難いように思います。日本で開催されたラグビーのワールドカップに出場した選手の中にも入れ墨をした選手がいましたが、来年、東京でオリンピックが開催されることに伴い、世界各国から入れ墨をした多くの人が来日することが想定されます。日本において、入れ墨に対し異なった価値観を持つ人々をいかに受容性するかについても注目されるところです。

(判例タイムズ参照)

コラム

~ご挨拶~

法エール4月号(No.124)のコラムにて「行政書士合格」のご報告をさせていただきました。その後行政書士登録が完了し、9月から行政書士として在籍することになりました。合格へのうれしさはもちろんありますが、合わせて「有資格者」としての重みと責任をひしひしと感じています。

平成17年から司法書士法人ヒューマン・サポート法律支援センターでの司法書士補助者として学ばせていただいたたくさんの経験と感謝を胸に抱き、少しでも多くの皆様のお役立ちができるよう日々がんばってまいります。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

行政書士法人ヒューマン・サポート 行政書士 中村 享子
(司法書士法人ヒューマン・サポート法律支援センター連携行政書士)

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