法エールVol.126

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ご挨拶

平成30年7月に、相続法制の見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と、法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。

この改正は順次施行されることになっておりまして、すでに今年の1月13日から、自筆証書遺言の方式緩和(財産目録については手書きで作成する必要がなくなりました。)が施行されました。

そして、今年の7月1日から、以下の内容が施行されます。

  1. 贈与等に関する優遇措置
    婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産(居住用建物又はその敷地)の遺贈又は贈与がされた場合については、原則として、遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。
  2. 預貯金の払戻し制度の創設
    預貯金が遺産分割の対象となる場合に、各相続人は、遺産分割が終わる前でも、一定の範囲で預貯金の払戻しを受けることができるようになります。
  3. 遺留分制度の見直し
    (1)遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができるようになります。
    (2)遺贈や贈与を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができます。
  4. 特別の寄与の制度の創設
    相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。

7月の施行は、実務上も重要でありまして、皆様の身近にも当てはまる事項があるかもしれません。相続法の改正等につきましては、幣法人におきましても、順次皆様に情報提供を行っていきたいと考えております。ご質問等ございましたら、お気軽にご連絡ください。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 井上 勉)

委員会設置会社について

皆様、委員会設置会社という言葉を聞いたことありますでしょうか。あまり、聞きなれない言葉だと思います。株式会社において、取締役会以外にも指名委員会、報酬委員会、監査委員会、取締役とは別に執行役という役員を置くことができます。東証一部上場企業でもそんなに多く利用されている機関ではありません。今月はこの「指名委員会等設置会社」について少しだけお伝えしたいと思います。

この制度の趣旨としては、執行役に業務執行権限を大幅に委譲して経営の合理化・迅速化を図り、更に取締役会による業務執行の監督をより強化するために設けられた制度です。

次に各委員会・執行役の選任機関と役割です。

☆指名委員会・・・

取締役会で取締役の中から選任されます。

取締役の候補者を決定します。

☆報酬委員会・・・

取締役会で取締役の中から選任されます。

取締役・執行役の候補者を決定します。

☆監査委員会・・・

取締役会で取締役の中から選任されます。

取締役・執行役の候補者を決定します。

☆執行役・・・

取締役会で選任されます。取締役と兼ねることができます。取締役会により委任された会社の業務を執行を決定します。そして実際に業務を執行します。

☆代表執行役・・・

取締役会で執行役の中から選任されます。

なお、最高経営責任者(CEO)という言葉をお聞きになられることもあろうかと思います。しかし、これは外国の制度であり、日本の会社法で規定されている役職ではありません。

判例紹介

紛失した携帯電話が不正使用された場合の電子マネーサービス提供者の責任

東京高等裁判所 平成29年1月18日判決

事案の概要

Xは、電子マネーサービス提供業者(Y2)が提供する、携帯電話に電子マネーを記録して使用できるサービスを利用し、クレジットカード会社(Y1)発行のクレジットカードを利用してその電子マネーを購入していた。

Xは、2012年11月13日、電子マネーを用いてタクシー料金を支払い、バーで飲食した後、駅の自動改札を通過しようとして携帯電話がないことに気づいた。そこで、Xは、バーとタクシー会社に問い合わせたが、見つからなかった。そのため、14日午前11時頃、携帯電話会社Aに連絡し、通信サービスを停止するとともに、警察署に遺失届を提出した。ところが、同月15日から2013年1月9日までの間、何者かが携帯電話を利用して151回にわたり電子マネーを291万9,000円分購入していた。

2012年11月発行の利用明細書には、同月15日に3回にわたり計4万円分の電子マネーがチャージされた記載があるが、Xはこれに気づかず、12月発行の利用明細書では大部分が電子マネーのチャージだったことから、1月10日、Y2に連絡して電子マネーサービスの利用停止措置をとった。Xは、Y1に対し不正使用による代金を請求しないよう申し入れたが、拒絶されたため、いわゆるブラックリストに登載されることを回避するために、請求額を振り込み、不正使用に係る代金291万9,000円の支払いを終えた。

Xは、Yらには電子マネーの不正購入についてそれぞれ注意義務違反がある旨主張し、共同不法行為に基づき、Yらに対して、連帯して291万9,000円に弁護士費用、遅延損害金の支払いを求めた。

裁判所の判断

裁判所は、次のように判断してY2に対して、約225万円と遅延損害金の支払いを命じた。

携帯電話によるサービスの利用においては、画面ロック機能のほか、会員が登録したパスワードによって、その安全性が確保されているが、まったく問題がないとまではいえず、携帯電話の紛失等に伴い第三者が不正に利用するおそれが皆無とはいえないことは十分に想定し得る。

Y2においては、携帯電話の紛失等が生じた場合に、サービスの不正利用を防止するため、登録会員がとるべき措置について適切に約款等で規定し、これを周知する注意義務があると認めるのが相当であるが、当時、携帯電話を紛失等した場合について、Y2への通知そのほかの何らかの手続きを必須とする旨の記載をそのホームページにしておらず、約款にも定めを置いていなかった。加えて、当時のホームページには、紛失等した登録携帯電話の事業者との通信サービスを停止もしくは解約すれば、本件電子マネーの新たなチャージを防止することができるという認識が誤りであることを示唆する記載は見当たらない。

上記の事情を考慮すれば、少なくとも、2012年11月当時における登録携帯電話の紛失等について、Y2には、上記注意義務の違反があると認めるのが相当である。

コメント

今後、電子マネーの普及はますます進んでいくものと思われます。便利になる一方で、不正使用の問題や、ID・パスワード管理など、利用する我々も、もっと注意を払っていく必要が出てくるでしょう。

コラム

~こっちのもん~

最近ジェニーハイというバンドの楽曲をよく聞きます。

もともとのバンドマンが二人、お笑い芸人二人、作曲家兼ピアニストの五人で構成されていることが注目されがちですが、現代音楽としてのクオリティを追求し、それぞれの個性を強調する歌詞や映像が伴う自己紹介的な楽曲が話題になっています。

各メンバーの得意分野を「こっちのもん」だと胸張って歌う姿に、何だか前向きな気持ちになります。

自分にとって、「こっちのもん」と言えるぐらいのものは何だろう?

とりあえずはジェニーハイを聞きながら、やれることを愚直に頑張るのみです。

龍田事務所 宮川 真理江

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