法エールVol.122

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ご挨拶

先日、ある会合で人材についての熊本の状況等についての話をお聞きしました。熊本有効求人倍率は、去年の12月の段階で1.65倍と、震災以降全国平均を上回っているということでした。さらに、今後、桜町や熊本駅前の再開発によって、数千人規模での求人が発生するとのことでした。熊本の現状を考えると、数千人の求人を集めるのは至難の技だと思いますが、おそらく賃金を高く設定するのではないかということでした。

このような話をお聞きすると、ますます人材の獲得が難しくなることが予想されますが、その対策となると考えてしまいます。ある統計では、働き方改革を実施して、職場環境を整備した会社は、社員さんの定着率がよいということです。これは、労働者の方が、賃金も大切ですが、それ以外の部分を重視していることを示しています。

おそらく、仕事へのやりがいや人間関係の良好さ等、ある意味、仕事の本質的な部分を求めているのではないかと感じます。

当法人は、社員さんあっての法人ですので、社員さんとコミュニケーションをとりながら、社員さんの人生をより豊かなものにしていけるように、努力していかなければならないと感じた次第です。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 井上 勉)

民事信託について

前回より、民事信託についてご紹介していますが、今回は、事例を通して説明したいと思います。

【事例】

Aは、賃貸アパートと自宅を所有しており、金融資産が3,000万円程あります。賃貸アパートの収益は月に50万円ほどです。

Aには妻のBと娘が3人おり、娘にはそれぞれ子供がいます。

娘3人は仲が良くなく、Aが亡くなった後、相続で揉めないか心配です。

Aとしては、Bが不自由なく生活できて、B死亡後は、娘3人が平等に財産を受け取れて、最終的に長女の息子が、不動産を承継してもらえればと考えています。

Aは、信頼をおいている長女の夫のCに相談しました。Cは、会社経営をしており、知り合いも多かったので、司法書士に相談することにしました。

【解決策】

司法書士と相談した結果、信託を活用することにしました。Aの財産のうち、賃貸アパートと自宅と金融資産の一部を信託財産として、受託者をCとしました。当初の受益者はAで、Aが死亡したら、第2受益者をBとしました。こうすることで、Bは自宅に住み続け、アパートの収益を受け取ることができます。Bが死亡した後は、第3次受益者として、娘3人を定めます。娘3人には、平等にアパートの収益が分配されることになります。そして、娘3人が死亡
した後は、信託契約を終了させ、長女の息子が帰属権利者となり、不動産を取得するようにします。

この契約は、非常に長い期間にわたるので、途中なにが起こるかわかりません。地震がおきて建物が壊れるかもしれませんし、老朽化等で修繕が必要になることもあります。そのため、それに対応できるように柔軟な規定をおく必要があります。また、信託契約の当事者である受託者に何かあっても大変なので、第2受託者の定めも必要かもしれません。Aの相続では遺留分の問題がでてくるかもしれません。そのために、別途遺言書を作成しておいたほうがいいかもしれません。相続税の納税のことも考えておく必要があります。

信託契約は、比較的長期にわたることが多いため、いろいろなことを想定して、条項を考える必要があります。そのため、じっくり時間をかけて作成することをお勧めします。

判例紹介

遺言を書いた旨の発言が証拠として認められなかった事例

東京高裁 平成29年9月1日 判決
(判例時報2379号)

事案の概要

A女(被相続人)とB男(A女の夫、平成21年死亡)の間には、長女Yと二女Xがいます。

平成24年4月19日、Aは全財産をXに相続させる旨公正証書遺言をしました。Aは平成26年7月に死亡しました。

Yは、平成25年2月8日付自筆遺言(以下「本件遺言」といいます。)があるとして、家庭裁判所に検認を申し立てました。その本件遺言には、全財産をYに相続させる旨記載されていました。

そこで、Xは、本件遺言の無効確認請求訴訟を提起しました。

Yは、準書証(ビデオ、録音等の証拠)として、平成25年2月8日にAが本件遺言を作成する様子をスマートフォンで撮影したとする動画データと同月3日に録音されたとする音声データを提出しました。動画データは4コマを継ぎ合わせた2分間のもので、音声データは家政婦との会話「Yがかわいそうなので遺言書を書いた」旨が録音されていました。

原審(東京地裁)は、「亡Aが自書したことを前提とする本件遺言の確認状況が本件動画に記録されていることや…本件遺言の作成に関与したQがこれを預かり検認期日まで保管していたことを理由としてXの請求を棄却しました。

そこで、Xは東京高裁に控訴しました。

裁判所の判断

東京高裁は、次のとおり判示して、原判決を取消し、本件遺言が無効であることを確認しました。

(動画データには)「亡Aが、遺言書本文あるいは書きなおした封筒の文字を記載する様子について一切撮影されておらず、Yの上記主張(Aの体調への配慮など)は、必ずしも説得的ではない。…本件動画には、視野に入りやすい位置に置かれた本件新聞が何度も映されており、後日の証拠となることが撮影者において十分意識されていたことが推認される。にもかかわらず、亡Aが、遺言書の全文、日付及び氏名を自書し、押印する動作が断片的にすら全く撮影されていないことは、実に不自然といわざるを得ない。」

コメント

自筆証書遺言では、1.遺言者の遺言能力の有無、2.全文・日付・氏名の自書(手書き)要件と押印要件の充足、3.偽造、改ざんの有無などが問題になります。自筆遺言作成時の様子がもれなく動画に記録されていれば、1.2.3.を証明できます。ただし、動画の撮影者が推定相続人等であれば、証拠の評価に影響する場合もあるでしょう。

最終的には、個別の事案ごとに総合的に判断することになると思いますが、自筆遺言作成時に弁護士や司法書士といった法律の専門家に助言を求めることも適正な自筆遺言を残すための一方策であろうと思います。

また、本年1月13日から民法の改正により、自筆遺言の様式が緩和され、財産目録については、パソコン作成や通帳等のコピー添付が認められるようになりましたが、誤記訂正の方法は緩和されていません。

来年7月10日からは、法務局における自筆遺言保管制度が開始する予定になっているこの時期に、遺言制度に関心を持っていただくきっかけとなれば幸いです。

司法書士日記

司法試験予備試験の受験を思い立つこと10か月。法律の勉強が楽しすぎて、いまや司法試験病に取りつかれております。

仕事や日常会話の中で、法律用語を耳にすると、何法の何条に書いてあったか、思い出そうとしてしまう自分。「裁量」という言葉を聞くと行政法の判例が思い出され、テンションが上がってしまう自分。日常会話で「詐欺」という言葉を聞くと、「それは、刑法上の詐欺の構成要件には該当しない。」とか考えてしまったりする自分。4歳と2歳の息子の言い訳が論理的ではないことに歯がゆさを覚え、論理的な受け答え教え込もうとしてしまう自分。仕事で作成する文書について、論理の飛躍がないか、ナンバリングがおかしくないかという点が気になって気になって仕方がない自分。

そのせいでしょうか、家族や友人から変人扱いされることが増えました。兎にも角にも5月の短答試験に向けて、引き続き頑張っていこうと思います。

龍田事務所 司法書士 野口 芽久美

コラム

~永続する学び舎~

このたび、私が小学生の頃に通っていた剣道の道場が創立50周年を迎え、昨年末に記念パーティーに出席させていただきました。全日本剣道選手権で優勝するような選手を輩出している県内でも有数の道場ですが、当時の稽古を思い出すだけでも胃が痛くなります(笑)。

当時指導していただいた教官の先生方も出席されており、鬼のように怖かった先生方が、80歳前後の朗らかなおじいちゃまに!今でも時折防具をつけて子供達に指導されておられるとのこと。

剣道は、一生涯できる武道だと思います。今、私は剣道から離れてますが、いつの日か、先生方がお元気なうちに、竹刀を交えて感謝の気持ちを伝えたいと思っております。

幣法人も、50年、100年と永続できるように、今自分に与えられたことを精一杯励み、お客様から必要とされる組織になれたらと改めて思えた貴重な時間でした。

清水事務所 福島 直也

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