ご挨拶
法エール9月号でお知らせしましたように「NPO法人身近な犯罪被害者を支援する会」が12月1日に設立されました。
この法人は、身近な犯罪被害に遭った人の身近で気軽な相談窓口としての役割を果たしていこうとするもので、弊法人の司法書士や職員が中心となった組織です。
熊本には、既に「くまもと被害者支援センター」や「法テラス」等がありますが、これらの機関は、重大事件に対する負担が大きく又敷居が高いということもあり、暴行や窃盗等、身近といえる犯罪の相談窓口としては不十分ではないかといわれていました。
そこで、今回のNPO法人の設立に結実したのです。
設立をするまでは、相談員養成講座が行われましたが、弊法人の職員も積極的に参加しました。
このNPO法人が活用されることで、熊本においてより安心安全な社会の実現に寄与できればと思います。
それでは、今月号も宜しくお願いします。
(代表社員 大島 隆広)
競売と任意売却
今回は「任意売却」について説明します。前回検討した「競売」が不動産所有者の意思とは関係なく裁判所の権限で強制的に不動産を処分されてしまうのに対し、任意売却は債権者との合意を前提に所有者自身の「任意」の意思で売却することが可能である点に最大の特徴があります。
任意売却により各種債権者との合意が得られれば残債務が免除される場合も期待され、また、不動産に設定されている抵当権を抹消することが前提となりますので残債務の支払が必要な場合においても「無担保」の債務となります。
1. 任意売却手続きの流れと留意点
前提:任意売却可能期間
一般的に住宅ローンの滞納が6ヶ月程度持続した場合、債務者である不動産所有者は「期限の利益」を喪失します。
「期限の利益」とは高額となる不動産購入対価を一定の契約を踏まえて分割返済することを認めた債務者の権利であり、当該利益が喪失するとは住宅ローンの残債務の一括返済を強いられる状態を意味します。
実務的には、金融機関は債務者ではなく「保証会社」に代金一括返済を求め、保証会社は金融機関に代金を一括で支払います(「代位弁済」)。
これにより債権者は金融機関から保証会社へ移行します。
債権者が保証会社へ移行する前においては、金融機関は保証会社からの代位弁済により債権回収が可能であるので任意売却の交渉余地がありません。
従って、任意売却が可能な期間は「債権者が保証会社へ移行した日」から「競売における開札の前日」までとなります。
以上を踏まえまして、任意売却の流れを概観していきましょう。
(1)物件所有者の売却意思及び関係者の同意
任意売却は強制的に物件を処分する競売とは異なり、あくまでも物件の所有者が「任意」に売却するものです。また、所有者が債務者自身ではなく物上保証人(担保を提供しているだけの人のことをいいます。)の場合には、この物上保証人の同意が必要となります。
(2)物件の調査
実際に物件売却の仲介を依頼する不動産業者による査定等に基づき売却予定額を調査します。なお、保証会社からの同意を得る場合、実務的に不動産鑑定士による鑑定評価書の提出を要求されるケースがあります。
(3)利害関係人の調整
利害関係人の調整で最も難航するのが「売却代金の配分」です。競売であれば売却代金の配分は法律で決められていますが、任意売却の場合には代金の配分方法も「任意」になります。
複数の抵当権が設定されている場合、1番抵当権者だけでなく2番、3番と後順位の抵当権者からも同意を得る必要があります。競売であれば無配当で強制的に抵当権を抹消されるであろう2番や3番順位の抵当権者についても、任意売却の同意に際しては抵当権抹消承諾料(いわゆる「ハンコ代」。実務的には10万円~30万円
を要するケースが多い)を必要とするケースが多々あります。
また、税金滞納により対象物件が差し押さえられている場合には官公庁等に交渉し解除してもらう必要がありますが、解除に際しては滞納税金の支払が要求されます。しかしながら、金額的に一括支払が困難なケースも多く官公庁等に対して滞納税金の圧縮、一部減免、分割払い等をお願いする必要があります。なお、税金滞納を放置しておくと競売に準じた「公売」という売却手続きに移行する場合もあるため留意が必要です。
(4)売買契約の締結及び配分額の決定
任意売却についても通常の取引に準じて売買契約が締結されますが、手付金は保全のため仲介業者が預かるケースが多く、場合によっては手付金の受け渡し自体が行われないこともあります。また、売主に金銭的余裕がないケースが殆どであることから、契約書においては売主が瑕疵担保責任(売買の目的物である不動産に欠陥があった場合において売主が買主に対して負う責任)を負わないという条項が盛り込まれることが一般的です。
売買契約が終了した段階で確定した売却金額に基づき配分の最終調整を行います。実際の売却金額が予想額を上回る場合等は、「抵当権の抹消費用」「不動産の仲介手数料」等通常は売主の負担である費用を売却代金から充当してもらったり、場合によっては「引越代」(実務的には30万円程度が標準)も売買代金から出されることもあり、売主が別途負担しなくて済むことになります。
(5)買受人の代金支払い配分表に基づく支払い
売買当事者、不動産業者のほか債権者等利害関係者が一堂に会して売買代金の決済を行います(抵当権の抹消と所有権の移転等の登記手続きを行う「司法書士」も立会います)。なお、通常の取引の場合には買主が売主の口座に売買代金を振り込みますが、任意売却の場合には事前に合意された「配分表」に基づき買主から各債権者に直接売買代金が振り込まれます。
(6)抵当権の抹消
各債権者への支払が完了した段階で、司法書士が抵当権抹消の手続きを行います。これにより残債務の支払が継続する場合においても「無担保」の状態へ移行します。また、事前の交渉次第では残債務が免除されるケースも期待されます。
以上が任意売却の流れとなりますが、当該メリットを競売との対比で整理すると以下のようになります。
競売の場合には売却代金が任意売却よりも相当程度低額である場合が多く、その場合任意売却を選択することにより競売よりも債務を減らすことができる。
競売の場合には売却代金は全て債権者への支払へ充当されるが、任意売却の場合、交渉如何によっては「引越代」等の生活再出発資金を確保することができる。
競売の場合には引越時期等は任意に設定することはできないが、任意売却の場合には諸事情を考慮して転居することができる。
競売の場合には残債務の返済計画について自ら保証会社等と交渉する必要があるが、任意売却の場合には上記(3)(4)等のプロセスで任意売却後の返済計画等も合意している状態が通常であり、無理のない返済計画を所与として生活を再スタートすることができる。
※通常、競売開始決定から落札までは半年程度しかありません。従って、目的達成のためには関係者の行動を常に先回りしたストーリーを作成する必要があり、また、当該ストーリーについて各債権者等から合意を得る必要があります。時間的制約のなかでストーリーを作成し、そして、利害関係者との調整を図りながら合意を得る、その行為を成立させることが任意売却実現の最大のハードルとなっています。従いまして、先ずは私達司法書士をはじめ、弁護士、不動産鑑定士、不動産業者等各種専門家へ相談されることを強くお勧めします。
司法書士日記
~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~
熊本ではほとんどの方が知っている「くまモン」。
先日の「ゆるきゃらグランプリ」で堂々の1位に輝いたキャラクターです。
熊本のいたる所に出没(?)しており、さまざまなキャラクターグッズも登場しており、お店の看板、さらには飲食店で出てくるおしぼりの袋にもくまモンがプ
リントされています。
当初は「この真っ黒いクマは何だ?かわいいのか?」と疑問視してましたが(きっとそう思われていた方も多いはず!?)、今では子どもからお年寄りまで大人気のくまモン!
私もすっかりくまモンファンの1人です。
(健軍事務所 司法書士 山﨑 順子)
コラム
~反省~
気をつけなければと自分も反省する場面を目撃してしまいました。
通勤途中に信号待ちをしていると1台の先頭の車が急発進!!
信号は赤のままなのですが一瞬何事かと思いました。
状況を確認するとどうやら左折の矢印信号が青になったところ直進の信号が青になったと勘違いし車を発進させたようでした。
途中で気付くかなと思っていましたが、予想に反して直進は完了。
危ない・・・と思いつつ、そういえばさっき私の右をパトカーが走っていたようなと思ったと同時にパトカーがサイレンを鳴らし発進。
直進した車も渡った後気付いたようですぐに停車していました。
私自身たまに間違いそうになることもあり、事故になる可能性を考えると非常に反省しないといけないなと思う内容でした。
(健軍事務所 宅野 洋史)
お知らせ
当法人では、継続的な相談にも対応できるよう、顧問契約の締結も行っています。
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