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法エールVol.182

薄場事務所 永井友美子

2024年3月20日

死後事務委任契約 判例紹介 春の芸術鑑賞



ご挨拶


熊本県の知事である蒲島郁夫氏は、任期満了を迎え、4月15日に県知事を引退されます。

4期16年にわたり熊本県政をリードされた蒲島知事の功績は幾多にもおよび、熊本県民として感謝に堪えません。

蒲島知事の県政を振り返りますと、財政再建として、1年目から自身の給与をカットし、県民に知事の県政への本気さを示していただきました。

懸案であった川辺川ダムについてはダム建設を白紙撤回し、その後人吉・球磨の記録的な豪雨を受けての災害対応として、撤回した川辺川ダムについて方針を転換。流水型ダムの建設を示しました。県民の幸福追求という知事の理念に沿うご判断であったと思います。

九州新幹線の全線開業をPRするキャラクターとして「くまモン」をデビューさせ、くまモンを全国一のゆるキャラとし、熊本県の認知度を向上させました。

熊本地震のときは、毎日テレビ等で県民に状況を報告し、少しでも県民の不安を解消しようと努められました。創造的復興を掲げ、地域経済の再生に向けた支援を行いました。

そして、TSMCの進出を機に、インフラ整備など次々と施策を打ち出し、熊本県の経済だけでなく九州全体の経済の底上げにつながる取り組みを行われました。

蒲島知事は、県民総幸福量の最大化という目標(理念)を基に価値判断を行い、逆境の中にこそ夢があるという信念に基づき、どのような状況にあっても諦めずに行動されておられました。私自身、蒲島知事の講演等でお話をお聞きし、大変勉強になりました。思いのこもった言葉は、相手に伝わり、それがまた別の人に伝わり、実現に近づいていくのではないかと思います。蒲島知事ありがとうございました。

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。


(代表社員井上勉)




死後事務委任契約


死後事務委任契約とは、委任者が受任者に自己の死後の事務を生前に依頼する契約です。

自己の親族と疎遠である人やそのような親族がいない人は、自分が亡くなった後のことに不安を覚えることがあります。こうした不安を払拭するための方策として締結されるのが、死後事務委任契約です。


(1)契約の成立


死後事務委任契約は、委任者と受任者の合意により成立します。遺言書のような決まった様式はありませんが、委任の内容を明確にするため、通常は公正証書などの書面を作成します。


(2)委任事務の内容


死後事務の内容としては、委任者が亡くなった後の葬儀・火葬、火葬後の墓の管理・永代供養、住居の明渡し、親族等関係者への連絡、医療費・施設利用料の精算、ペットの処遇、SNSアカウントの閉鎖などが想定されます。

なお、特定の財産を特定の人に遺贈するような内容は死後事務委任の内容に含めることはできず、遺言において定めておく必要があります。


(3)委任事務の執行費用


委任事務の執行費用は委任者の相続人が負担することになりますが、実務的には、委任者が生前のうちに受任者に一定の金額を預けておく取扱いがなされます。なお、執行費用が預かった金額よりも少なかった場合は、残った金銭については、委任事務終了後に相続人に引き渡すことになります。


(4)受任者の報酬


受任者の報酬は契約書の中で定めることになりますが、報酬の支払い時期は原則として委任事務が終了した時となります。なお、執行費用と同様に、報酬金額をあらかじめ受任者に預けておき、受任者は委任事務終了時に報酬として精算することになります。なお、仮に執行費用や報酬が預り金よりも多くなった場合は、受任者は契約に基づき、委任者の相続人や相続財産清算人に対しそれらの金額を請求することになります。


(5)遺言との関係


遺言は、相続に関する事項や、遺贈など相続以外の財産の処分に関する事項、認知など身分に関する事項などといった民法で定められた内容についてのみ法的な拘束力が生じます。しかし、相続発生後には法律で定めれら遺言事項以外にも、葬儀の執行や病院代等の精算などといったさまざまな手続きが必要になります。このような場合に、生前に死後事務委任契約を締結することにより、死後の事務手続きを委任しておくことができます。なお、遺言において全財産を妻子に相続させる内容の遺言を書いているにもかかわらず、死後事務委任契約において、特定の誰かに謝礼を支払うことを委任していた場合は、いずれが優先するのかといった問題が生じ、トラブルに発展しかねません。そのため、死後事務委任契約を締結する際には、遺言と抵触する内容とならないように留意する必要があります。

当法人において、死後事務委任契約に関するご相談もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

(参考『死後事務委任契約実務マニュアル-Q&Aとケーススタディ』新日本法規)




判例紹介


死亡後間もないえい児の死体を隠匿した行為が刑法190条にいう「遺棄」

に当たらないとされた事例(最高裁判所令和5年3月24日判決)



【事案の概要】


被告人は、来日して技能実習生として働き、受入会社が用意した家屋(以下「寮」という。)で生活していたところ、自分が妊娠していることを知ったものの、そのことを周囲の者に言わず、医師の診察を受けなかった。

被告人は、令和2年11月15日午前9時頃、寮の被告人の居室(以下「自室」という。)内で、本件各えい児を出産したが、いずれも遅くとも出産後間もなく死亡した。

被告人は、少し休んだ後、自室において、本件各えい児の死体を、タオルで包み、段ボール箱に入れ、その上に別のタオルをかぶせ、更に被告人が付けた本件各えい児の名前、生年月日のほか、おわびやゆっくり休んでくださいという趣旨の言葉を書いた手紙を置いてその段ボール箱に接着テープで封をし、その段ボール箱を別の段ボール箱に入れ、接着テープで封をしてワゴン様の棚の上に置いた。

被告人は、同月16日、妊娠の可能性を聞いた監理団体の職員等に連れられて病院で受診し、医師から検査結果を示され、同日午後6時頃、赤ちゃんの形をしたものを産んで埋めた旨話したため、同月17日、寮の捜索が行われ、前記2の状態で置かれた段ボール箱の中から本件各えい児の死体が発見された。

原審は被告人に対し、死体遺棄罪として懲役3月、執行猶予2年の刑を言い渡した。(第一審は懲役8月、執行猶予3年)


【裁判所の判断】


原判決及び第1審判決を破棄する。被告人は無罪。

刑法190条は、社会的な習俗に従って死体の埋葬等が行われることにより、死者に対する一般的な宗教的感情や敬けん感情が保護されるべきことを前提に、死体等を損壊し、遺棄し又は領得する行為を処罰することとしたものと解される。したがって、習俗上の埋葬等とは認められない態様で死体等を放棄し又は隠匿する行為が死体遺棄罪の「遺棄」に当たると解するのが相当である。そうすると、他者が死体を発見することが困難な状況を作出する隠匿行為が「遺棄」に当たるか否かを判断するに当たっては、それが葬祭の準備又はその一過程として行われたものか否かという観点から検討しただけでは足りず、その態様自体が習俗上の埋葬等と相いれない処置といえるものか否かという観点から検討する必要がある。被告人は、自室で、出産し、死亡後間もない本件各えい児の死体をタオルに包んで段ボール箱に入れ、同段ボール箱を棚の上に置くなどしている。このような被告人の行為は、死体を隠匿し、他者が死体を発見することが困難な状況を作出したものであるが、それが行われた場所、死体のこん包及び設置の方法等に照らすと、その態様自体がいまだ習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められないから、刑法190条にいう「遺棄」に当たらない。

(死体損壊等)


刑法第190条死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。


【コメント】


上記判例は、ベトナム人技能実習生が孤立出産した事件として全国的にも大きく報道されました。

裁判の中で被告人は「動揺して頭の中が真っ白になった。具体的に何をしていいのかわからなかった。ただ、元気になったらきちんと埋葬しようとは思っていた。」と証言しています。実際、そのような気持ちを持って行った彼女の行動は無罪とされました。孤立出産の中、えい児を弔おうとした彼女の気持ちを考えると、胸が詰まる思いです。外国人実習生の労働環境問題や、それらの人々を受け入れる日本の対応をどうするのか、国が抱える課題と言えます。




春の芸術鑑賞


先日、熊本市中心部で行われたストリートアートプレックス熊本というイベントを見て来ました。

年に何回かベートーヴェン等の命日にちなんだメモリアルコンサートや、ジャズのイベント等が行われていて、今回あったのはその中でも1 番色々なパフォーマンスを見られるE X

T R A V A G A N Z A という大きめのイベント。アフリカンダンスやフラメンコ、演劇のパフォーマンス、ジャズ演奏、中には「歩く彫刻」という筋肉美を楽しめるものまで色々な表現を町のあちこちで見ることができました。

普通のステージでは考えられないような近い距離から鑑賞することができ、演者もお客さんも盛り上がる良いイベント。それなのに、なんと観覧料は無料。

県外から来た知人がとても羨ましがり、地元でもしてみたいと言われてました。


薄場事務所 永井友美子







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