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法エールVol.180

龍田事務所司法書士 戝津麻弥

2024年1月20日

任意後見制度 判例紹介 司法書士日記




ご挨拶


当法人では、毎年、年度方針発表会を行っております。当法人の今年の年度方針は、「力闘向上闘いの勝者となり、より良い司法制度を創造する。」です。力闘向上は、パナソニックグループの創業者である松下幸之助翁の言葉です。松下幸之助翁は、「事業を経営することも商売を営むことも、そのこと自体が真剣の闘いである以上、これを戦い抜く精神が旺盛でなければ、結局敗者にならざるを得ない。ただし、その闘いたるや、正々堂々でなくてはならぬ。良い意味における闘争心、正しい意味における競争精神なきところ、事業の成功も個人の向上も絶対に望めない」とおっしゃっています。「今、ここ」100%の気持ちで、一日一日を懸命に生きていく中で、私利私欲といった敵が自分自身の中に出てくると思いますが、そのようなときは、負けそうになる自分自身と闘い、それに勝って、自分自身を成長させていこうというという気持ちで、今年一年行動していきます。

また、今年は、4月から相続登記の義務化が始まります。去年、法務省が相続登記の義務化に関して認知度調査をしたところ、およそ7割の方が知らないということでした。さらに相続登記をしなかった場合の過料の制裁については、約8割の方が知らないということでした。今後、法務省が認知度を上げるために広報活動をさらに行うのではないかと思われますが、弊法人でも、市民の皆様に少しでもご理解いただけるように、セミナー等を開催できればと思います。

法エールは、今年で15年目を迎えます。毎回、法エールをお読みいただきましてありがとうございます。今年も、少しでも有益な法的情報をご提供できるように取り組んでまいりますので、何卒宜しくお願い致します。

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。


(代表社員 井上勉)




任意後見



令和5年9月17日に総務省が報道資料として公表した資料によると、令和5年9月15日現在、日本の総人口における65歳以上の高齢者の割合は29.1%と過去最高になりました。また、75歳以上人口がはじめて2000万人を超え、10人に1人が80歳以上となりました。このような日本の高齢化に伴い、自分自身の将来をどのように過ごすか、財産をどのように守るか、そして、自分が亡くなった後の財産や自宅の整理等をどうするかといった問い合わせが多くなっています。当法人においても、将来を見据えた様々な手続きを提案することも以前に比べ増えています。そこで、今回から相談が増えてきている「任意後見制度」、「民事信託制度」、「死後事務委任契約」の手続きの概要につき、説明します。


任意後見制度


人は、年をとるにつれて、次第に物事を判断する能力が衰えていくことは避けられません。ときには認知症といわれるような状態となり、自分の持っている不動産の管理や預貯金の出し入れ等、自分

の日常生活に関わる重要な事柄について適切な処理をすることができなくなる場合もあります。また、事故や病気等が原因となって同じような状態になることもあります。そのようなときに、財産の管理や医療契約、施設への入所契約等の身上に関する手続きを自分に代わってやってくれる人(よく知っている人)がいると安心して過ごすことができます。

このように、将来、自分の代わりに手続きを行ってくれる人を選んでおく制度が、任意後見制度というものです。

将来の財産の管理や施設入所等の身上に関する手続きをお願いしたい人(「委任者」あるいは「本人」といいます。)が、自分の判断能力が十分なうちに、あらかじめそれらの手続きを代わりに行ってくれる人(「任意後見受任者」といいます。)と任意後見契約を締結し、将来、委任者が認知症や精神障害等で判断能力が不十分になったときに契約に基づいて、選任しておいた任意後見受任者が任意後見人として本人の支援を行うことになります。

この任意後見契約を締結するには、「任意後見契約に関する法律」により、公正証書でしなければならないことになっています。委任者と任意後見受任者が公証役場に赴き、または、公証人が施設や病院等に出向いて、公正証書を作成することになります。

任意後見契約は、委任者の判断能力が不十分となった場合に備えて、あらかじめ締結されるものですから、任意後見人の仕事は、委任者の判断能力が不十分な状態になってから始まることになります。

具体的には、任意後見受任者や親族等が、家庭裁判所に対し、委任者の判断能力が低下して任意後見事務を開始する必要が生じたので「任意後見監督人」を選任してほしい旨の申立てをします。そして、家庭裁判所が、任意後見人を監督すべき「任意後見監督人」を選任すると、その時から任意後見契約の効力が発生し、任意後見受任者は「任意後見人」として、契約に定められた手続きを開始することになります。任意後見人は本人のために行った支出や活動内容等につき、定期的に任意後見監督人に報告します。任意後見監督人は通常年1回、家庭裁判所に任意後見人の財産管理や身上保護のために行った活動を報告します。このように、家庭裁判所は任意後見監督人を通して間接的に任意後見人を監督し、任意後見人が本人のために適切な財産管理や身上保護を行っているかを確認することになります。なお、任意後見人の報酬は任意後見契約の中で定めることになりますが、任意後見監督人

の報酬は家庭裁判所がその金額を決定します。


(厚生労働省ホームページより)




判例紹介


会社における実質的経営者の交替と賃借権の無断譲渡

(最高裁判所平成8年10月14日第二小法廷判決)



【事実の概要】


Y(被告・控訴人・上告人)は、運送業等を目的とする有限会社であり、Aとの間でA所有の本件土地を賃借し、同土地上に車庫(本件建物)を建築所有して同土地を占有している(Aが死亡し、A'が相続によりAの地位を承継)。Yの持分は代表取締役B及びその家族が全部を保有し、役員もBの親族。B及びその家族は、Yの持分全部を個人で運送業を営んでいたCに売り渡し、同日付けでYの役員全員が退任し、Cがその代表取締役に、同人の家族がその他の役員に就任した。同日以後、Yの経営はCが中心となって行い、Yは本件土地建物

を使用して従前と同様の運送業を営んでいる。

X1およびX2(原告・被控訴人・被上告人。以下「Xら」)は、本件土地をA'から買い受けた後、Yに対し、所有権に基づいて建物収去土地明渡しを求め、Yの土地賃借権の抗弁に対しては、①賃借権の無断譲渡②信頼関係の破壊を理由とする賃貸借契約の解除を再抗弁として主張した。

一審は、Yの代表者がBからCに変わりその社員に変更があったとしても、その前後を通じて法人格に変更はないのであるから、賃借権の譲渡があったとはいえないとして①を否定した上で、A'とYとの信頼関係はBがCにYの経営権を譲渡したことにより完全に失われたとして②を理由とする解除を認めた。原審は、持分の譲渡の前後を通じてYの法人格は形式的には同一性を保持しているとはいえ、小規模な個人会社においては経営者と土地所有との個人的な信頼関係に基づいて土地賃貸借契約が締結されるのが通常であり、経営者の交

代は、その実質に着眼すれば旧経営者から新経営者に対する賃借権の譲渡であるとして、Xらによる解除の主張を認めた。そのため、Y上告。


【判旨】


破棄差戻し(なお、判旨中の「右」は、それぞれ「前記」に読替え。)


民法612条に定める「賃借権の譲渡」が賃借人から第三者への賃借権の譲渡を意味することは同条の文理からも明らかであるところ、賃借人が法人である場合において、右法人の構成員や機関に変動が生じても、法人格の同一性が失われるものではないから、賃借権の譲渡には当たらないと解すべきである。そして、右の理は、特定の個人が経営の実権を握り、社員や役員が右個人及びその家族、知人等によって占められているような小規模で閉鎖的な有限会社が賃借人である場合についても基本的に変わるところはないのであり、持分の譲渡及び役員の交代により実質的な経営者が交代しても、同条にいう賃借権の譲渡には当たらないと解するのが相当である。

賃借人である有限会社の経営者の交代の事実が、賃貸借契約における賃貸人・賃借人間の信頼関係を悪化させるものと評価され、その他の事情と相まって賃貸借契約解除の事由となり得るかどうかは、右事実が賃借権の譲渡に当たるかどうかとは別の問題である。Xらの契約解除の主張を認めた原審の判断には、民法612条の解釈適用を誤った違法があり、右違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかであり、原判決は破棄を免れず、また、Xらの他の解除事由の主張について更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻すとした。


【コメント】


この判決は、小規模で閉鎖的な有限会社における実質的な経営者の交代と民法第612条に規定する賃借権の譲渡に関しては、実質的な経営者の交代につき法人格の同一性があることを理由として、賃借権の譲渡には当たらないとしました。次に、信頼関係の破壊に関しては、賃借権の譲渡に当たるかどうかとは別の問題とし判断を保留し差戻していますが、重要な事項ですので、次のとおり紹介します。

一般的には、契約上の債務不履行があった場合、その履行を催告、催告後相当期間内に履行がなければ、契約解除という手続となります(民法第541条)。しかし、賃貸借契約は継続的な契約であり、相互の信頼関係を基礎とするため、最高裁判所の判例上、債務不履行(賃料の滞納、用法義務違反等)が行われても、様々な事情を考慮して、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、解除権は発生しないとされています(いわゆる「信頼関係破壊の法理」)。この「特段の事情」には、物的・経済的側面のみならず、個人的信頼関係、譲渡の対象の種別その他当事者の諸事情が含まれるのが一般的です。賃貸借当事者間の早期紛争解決の一助として、今後も、この信頼関係破壊の法理に関する判例の集積及び準則化が望まれます。



司法書士日記



少し前に母と2 人で日帰りで温泉へ行ってきました。

私の「温泉に行きたい! 」との思いつきで即決定しました。

玉名市内の家族湯に行くことにしたのですが、サウナ付のお部屋もあるとのことで人気らしく、日や時間によっては受付してから入浴できるまでの待ち時間がかなり長くなることもあるとのことで、当日は早め(? )の1 1 時頃に到着。受付をすると一番早い時間が1 6 時とのことでした。少し迷いましたがせっかく準備万端整えて来ていたので受付を済ませました。

約5時間の待ち時間どうしよう、、と地図アプリで周辺を検索。するとすぐ近くに別の温泉施設があることが判明。早速行ってみると、そこにも家族湯があり、タイミング良く空いているとのことだったので入浴。あがった後はちょうどお昼時でお腹も空いており同施設内の食堂でお蕎麦を頂きました。そして、待望の時間を迎えました。

内風呂と露天風呂が設備されており、日本庭園のような眺めでなんとも良い雰囲気。内風呂と露天風呂を交互にゆっくりと浸かり癒しの時間を過ごしました。

家族湯を2 回満喫し、慢性肩こりもほぐれ、リフレッシュできた1 日となりました。母も久しぶりの

温泉でとても喜んでおり、一緒に行けてよかったです。


(龍田事務所司法書士 戝津麻弥)



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