清水事務所 大島文恵
2023年11月20日
利益相反②(会社)
ご挨拶
先日、当法人が受託した事件で簡易裁判所に訴訟提起した案件があり、当職が弁論期日に裁判所に出廷しました。裁判自体はすぐに終わったのですが、その後に、裁判官と少し雑談をしました。その中で、裁判官から、コロナ禍で訴訟件数が減少したものの、コロナが収束し、最近訴訟が増えてきているというお話がありました。たしかに、当職の担当する紛争案件でも、コロナ収束後、訴訟提起するものが増えてきており、今後訴訟提起するときには、訴訟の期日まで少し時間がかかるとご依頼者に伝えなければならないと思いました。裁判官の話を聞いて、訴訟事件数が気になり調べてみました。裁判所の統計をみると、昭和27年から令和4年までの事件数の推移が書かれてありました。そのなかで、民事・行政事件は、コロナ前の平成30年が約155万件ありましたが、令和2年のコロナ禍は、約135万件と、コロナ前に比べ20万件も件数が減っていました。
おそらく令和5年は、民事・行政事件は、前年よりも増加するのではないかと予測しますが、コロナが裁判に影響を与えていたかもしれないというのは驚きでした。
裁判官の何気ない一言で、またひとつ勉強になりました。
それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。
(代表社員 井上勉)
利益相反②(会社)
先月号では一般社会における取引において、お互いに利益が相反する行為のことを、利益相反行為と説明しました。
そこで、今月号では、株式会社の取引で起こる利益相反行為について説明します。
利益相反行為は、会社における取引においても生じます。例えば、取締役とその取締役が所属する会社の間で動産、不動産を売買する場合や、同一の取締役が所属する複数の会社間で同様の取引をする場合などです。
代表権のある取締役と会社間で取引をする場合に何らの手当てもせず取引ができるとすると、会社に不測の損害が生じてしまう可能性があります。なぜなら、代表権のある取締役は、その権限において自身の意思のみで取引内容を決定することができてしまうからです。すなわち、売買取引で例えると、その取締役の意思のみで価格を決定することができ、その取締役の有利な価格で会社と取引できることになります。会社が不利な内容での取引を行う結果、その会社の株主に不利益が生じるととになります。
そこで、会社の取引において利益相反行為に該当する場合は、株主総会の承認(会社法(以下「法」といいます。)356条1項2号)が必要になり、取締役会設置会社の場合は、取締役会の承認(法365条1項)が必要となります。
上記のように、基本的には親子間の利益相反行為とは異なり、裁判所の手続きなどは不要です。しかし、取締役会設置会社において、取締役全員について利益相反行為に該当する場合などは、注意が必要です。取締役会の決議は、特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができない(法369条2項)ため、取締役全員について利益相反行為に該当する場合、取締役全員が特別の利害関係を有することとなってしまいます。この場合、取締役会の決議ができなくなるため、裁判所にて職務代行者(一時的に取締役の職務を行うべき者)を選任してもらい(法346条2項)、選任された職務代行者が取締役会に出席し、単独で決議を行うことになります。
なお、同一人の取締役が含まれる会社間で取引するような場合も、利益相反行為に該当する場合もあるため、取引前に確認しておく必要があります。
また、この利益相反行為は、一般社団法人や医療法人などの法人にも適用があります。よって、例えば医療法人が利益相反行為に該当する取引をするような場合は、理事会の承認(医療法46条の6の4で準用する一般法人法84条ほか)を得る必要があります。
裁判例紹介
予備校の教材の転売禁止特約及び違約金条項が消費者契約法に違反するのか
(東京地裁令和4年2月28日)
【事実の概要】
予備校(以下「X」または「本件予備校」という。)が提供するA大学の入学試験に合格することを目的とする講座を申し込んだ元予備校生(以下「Y」という。)は、Xの規約において、Xから提供された教材(以下「本件教材」という。)にはXの規約第8条第4号に基づく譲渡禁止条項(以下、「本件譲渡禁止条項」という。)があるにもかかわらず、これを無視してインターネットのフリマサービス・アプリを利用して転売しようと出品した。これに対して、XからYに、本件譲渡禁止条項違反になるとの警告がなされたにもかかわらず、警告を無視して前後3回にわたりインターネット上のフリーマーケットに出品したため、Xの規約第8条第6号に基づく違約金条項(以下、「本件違約金条項」という。)に基づいて500万円の違約金請求訴訟を提起された事案である。
Yは、いずれの条項も消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する条項であり、Yの利益を一方的に害するとして、消費者契約法10条に反し無効であると主張した。
の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
【裁判所の判断】
(1)本件譲渡禁止条項は消費者契約法に定める不当条項か本件教材は、XからYに貸与されたものと認めるのが相当である。Yは本件教材を自由に処分する権利を本来的に有するとはいえないうえに、Yは、A大学の入学試験に合格するために本件受講契約を締結し、本件教材の貸与を受けたのであるから、本件教材を第三者に売却できないことによって何らかの利益が害されるとは言い難い。これに対し、本件教材が第三者に対して譲渡されれば、受講生ではない第三者にXのノウハウが流出するというべきであって、本件予備校の受講生の減少にもつながり得るといえる。そうすると、本件教材の譲渡によってXの営業上の利益が害されるといえる。したがって、教材が譲渡等されることによってXの営業上の利益が害されないように本件譲渡禁止条項を設けることに合理性がないとはいえず、Yの主張は、採用できない。
以上のとおり、本件譲渡禁止条項が消費者契約法10条に違反して無効である旨のYの主張は、採用できない。
(2)本件違約金条項の有効性
本件予備校において講座を受講するに当たって貸与された教材は、受講生にとって、A大学の入学試験に合格するための勉強に利用するためのものであり、売却等をするために入手するものではないから、その教材を第三者に対して売却等ができなかったとしても、受講生に特段の不利益はないというべきである。これに対し、Xは、前述のとおり、教材が第三者に譲渡されれば、営業上の利益を害されると認められる。そうすると、本件違約金条項は、受講生の利益を一方的に害する不当な条項とはいえないから、消費者契約法10条によって無効とは認められず、Yの主張は、採用できない。
【コメント】
上記(1)、(2)ともにYの主張は認められませんでしたが、Xが主張した本件違約金条項については、500万円ではなく、100万円の限度で有効と認めるのが相当であるとの判断がなされました。本件違約金条項の目的が受講生による教材の売却等を防止し、Xが営業上の損害を被らないようにするという点にあるのであれば、かかる目的を達成するために必要な限度を超えた違約金を設定すると、受講生の負う負担と比して不均衡となることから、必要な限度を超えた違約金の範囲については、公序良俗に反して無効と認めるのが相当であるとしたのです。
昨今は、個人が気軽にフリマサービス・アプリを利用して、気軽に物を販売でき、SDGsの関心の高まりも相まって、多くの方がそのサービスを利用しています。しかし、実際に販売が許されている物なのか確認が不十分なままに販売してしまうと、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
フリマサービス・アプリの利用規約の内容をしっかり確認したうえで、賢く利用したいものです。
コラム
― 愛犬の成長―
愛犬家の実家の両親がトイプードルの成犬を昨年1 1月に飼いはじめました。
実家では元々数匹トイプードルを飼っていたのですが、前の持ち主が飼えなくなり譲り受けたとのことでした。
その犬は用心深い性格もあり、来た当初は生活環境や人にも慣れず、吠えてばかりでした。
「なかなか慣れないよね」と私は言っていましたが、「成犬から飼うのだから」と両親は愛情たっぷり注いでその犬が慣れるのを待ち続けました。
実家ではゲージには寝るとき以外は入れず、普段は室内を自由に遊べるような環境にしています。
元々飼っていた陽気で天真爛漫な犬たちとたくさん遊び、もりもり食べて筋肉の付き具合や体つきも次第に変わってきました。このような環境で1年が経過しました。
今ではすっかり慣れ、実家に時々遊びに来る私たちにも挨拶にくるような犬へと変わりました。
前の持ち主も時々来ては自分の譲り渡した犬が幸せそうな様子にとても喜んでいるそうです。
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