法エールVol.08

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ご挨拶

皆様、いかがお過ごしでしょうか。さて、いよいよ年内に熊本県司法書士会による調停センターが稼働します。

これは、ADR(Alternative Dispute Resolution)と呼ばれているもので、日本語では一般的に「裁判外紛争解決手続」と訳されています。ここでは、140万円以下の紛争に関わる事件を司法書士が調停実施者となり、紛争当事者の意見を聴いて、和解による解決を目指します。

これまで、話合いによる解決というと、主に裁判所の調停手続がありましたが、新たに国民に対し提供する法的サービスが一つ増えることになるのです。特徴としては、裁判所による調停と異なり、休日や勤務時間以外においても実施することができ、時効の中断や訴訟手続の中止等一定の効果が付与されることになります。

ただ、利用する料金は、裁判所の調停より高めに設定してあり、また、初めての試みということもあり、どの程度利用されていくのかについて、不透明な部分もあります。いずれにしても、紛争解決の選択肢が一つ加わることになります。当法人においても、積極的にこの制度を活用していき、この制度の利用により、一人でも多くの人の紛争の解決ができればと思っています。詳細については、あらためてお伝えしていきます。それでは、今月号も宜しくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

遺言の活用

前回は遺言書の種類や特徴等について説明しました。今回と次回は、遺言を作成する場合、よくある質問をあげていきます。

Q. 遺言書を作成できない場合はありますか?(遺言者の状況)

A. 遺言書を作るには遺言者自らの意思によって遺言書を作成する必要があります。認知症等で判断能力が低下すると遺言そのものができなくなる恐れがあります。遺言者が重い病気にかかっている場合等は早急に遺言書を作成しなければなりません。

遺言ができるかどうかは状況によって異なりますので、一度司法書士や公証役場に相談してみると良いでしょう。もちろん当法人もご相談をお受けしています。

また近年の法改正で口がきけない、耳が聞こえない方でも公正証書遺言ができるようになりました。その他署名ができるか等遺言ができる状況かどうか、確認する必要があります。署名ができない状況でも遺言書を作成することはできます。

Q. 遺言書には何を書けばよいのですか?(遺言の内容―財産)

A. 基本的には遺言者の財産をどのように分配するかを記載すればよいでしょう。しかし、財
産にも様々な種類があります。

現金や預貯金など、分けやすい財産は大きな問題にはなりにくいですが、不動産や貴金属など分けにくい財産、分けられない財産もあり、こういった財産は管理費や登記の関係上、後々相続人間で争いになるケースも少なくありません。遺言者の意思に合う形で財産分配がされるよう、できるだけ全財産に関する遺言書を作成します。財産がどれだけになるのかはっきりと分からない場合も、「○ ○ に一切相続させる」等全財産を対象とした遺言となるように遺言書を作成することができます。

また、遺言を使えば、相続人以外の者に株式等の財産を遺贈することもできます。

事業承継に関連して、株式の割り当てが問題にあることがあります。株式は原則として各相続人に民法で定められた割合に応じて相続されます。そのため相続人間で対立がある場合や、相続人が多数となり、意思の統一が図れない場合などに円滑な株主総会が開催できない恐れがあります。その対策として、遺言書で株式を誰に相続させるか決めておくことができます。後継者のために遺言書で株式の行方を決めておいたほうがよいでしょう。

ただし、相続人以外の者に遺贈する場合、次の遺留分に注意してください。
(なお、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」等によって、遺留分等に関して民法の特例が定められていますが、これについては後日掲載する予定です。)

Q. 遺言書があっても相続人に財産を分けることがあると聞いたのですが?(遺言の内容―遺留分)

A. 遺言によって財産を受け取れないとされた兄弟姉妹以外の相続人でも、いくらかは財産を受けとれることがあります。これを「遺留分(いりゅうぶん)」といいます。たとえば、相続人が配偶者と子A、Bの3人であり、遺言によって配偶者が全財産を相続する場合、子AおよびBは、民法上の相続分の4分の1に2分の1を掛けた8分の1を遺留分として主張できます。

この遺留分の制度は、残された相続人の生活を保護するためのものではありますが、せっかく遺言書を作成したのに、この遺留分を請求をされたために遺言書どおりに財産が分配できない場合でてきます。具体的な内容は個別に異なりますので、遺言書を作成されるときに司法書士等の専門家に相談し、確認すると良いと思います。

なお、この遺留分の請求の内容は民法で決められています。

次回も引き続き、遺言を作成する場合によくある質問について説明します。

判例紹介

遺言書の破棄・隠匿行為と相続欠格(相続人の資格喪失)について

最高裁判所 平成9年1月28日 判決

事件の内容

Aさんは、昭和60年2月頃、「土地を売り、その売却代金を自分が会長的立場にあったB会社に寄付するから、同社の代表取締役であり長男であるYは、同社の債務の弁済に充てること、また、他の兄弟Xその他もこれを承諾すること。」という趣旨の遺言書を自分で作成し、これをYさんに預けました。その後、Aさんは他界しましたが、上記遺言書が所在不明となったため、Yさんはそれを他の相続人に示すことが出来なくなりました。このため、相続人間で遺産分割協議が行なわれ、「Aの遺産全部をYが相続する。YはXに対し3,500万円を支払う。その他の相続人は一切相続しない。」という内容の分割協議が成立しました。しかしその後、Xは、Aが遺言書を残していたことを知りXが受け取ることのできる財産はもっと多かったのではないかと考え、Yが遺言書を偽造または破棄・隠匿した等を理由として、相続権不存在及び遺産分割協議無効の確認を求め訴えを提起しました。

判決の内容

「相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、その相続人は相続人である資格を失わないと解するのが相当である。」

相続に関する被相続人(本件ではAさん)の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者は、当然に相続人になれません(民法第891条5号)。これは、遺言に対する著しく不当な干渉行為をした者に対するペナルティーです。

本件でのYさんは、遺言書の保管者でありながら、管理が不十分であったためか遺言書の所在が不明となり、これが遺言書の破棄または隠匿にあたるとして訴えを提起されたわけです。この点に関し、本判決は, 遺言書を故意に破棄または隠匿するだけでは足りず、破棄または隠匿することにより、不当の利益を得ようとする目的までも必要であるとしたのです。この「不当の利益を得ようとする目的」ですが、自己に対し全遺産を遺贈する内容の遺言につき、法定相続分の取得でよいと考えて遺言書を破棄した場合等には、この目的がないと言えるようです。

遺言書には、遺族に対する故人の切実な思いが込められています。死者の最終意志を尊重するという法律の精神からして、遺族の方も故人の遺志を最大限尊重し、遺産相続争いができる限り生じないよう心掛ける必要があるようです。

コラム

夏の風物詩といえば花火。

子供の頃は夏になるとよく自宅の庭で花火をやっていました。もちろん大人同伴、傍にはバケツを置いて、火の元十分注意して。楽しかったですね~ 。

今は、マンションが増え、両親共働きの家庭も増え、住居状況、家庭環境、時代も変わり、庭先で花火なんていう光景はあまり見られなくなったように思われます。寂しいですね~ 。

又、花火大会も忘れてはいけません。数日前から天気を気にして、当日は浴衣にうちわ。

色とりどりの大輪の花が夜空に輝くたびに歓声があがり・・・う~ ん、花火大会に行きたくなってきました。

最近は浴衣もなかなか着る機会がないかと思います。花火大会には是非浴衣をセットで日本の夏を感じてほしいと思います!

(健軍事務所 澤村 篤子)

スタッフ紹介

今月は健軍事務所の澤村篤子さんを紹介します。

澤村さんはとても素敵な女性で、私の憧れです。

そして偶然にも私と澤村さんは同じ高校出身です。なんと澤村さんはあの「森高千里さん」と同じ時期に在学していたようで、学生時代の森高千里さんを見かけていたそうです。羨ましい!

また澤村さんは笑顔の素敵な明るい女性で、とてもしっかりされています。

私が気づかなかったところに的確なアドバイスをくださるので、いつも助けられています。その明るさと細やかな気配りで澤村さんは当法人になくてはならない存在です。

(清水事務所 髙岡 愛)

お知らせ

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