法エールVol.58

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ご挨拶

両親が結婚しているかどうかで子どもが相続できる遺産に差を設けている民法の規定について、最高裁判所大法廷は「社会が変化し、家族の多様化が進むなかで、結婚していない両親の子どもを差別する根拠は失われた」と指摘し、「憲法に違反する」という初めての判断を示しました。「民法の規定は法の下の平等を定めた憲法に違反している」という初めての判断を示したものであり、この決定は、審理に加わった裁判官、全員一致の結論だということです。

平成7年に、最高裁大法廷は、民法の相続に関する規定は、憲法に違反しないという決定を出しましたが、その後、結婚や家族に対する国民の意識が変化している実情を踏まえ、今回、18年前の判断を見直したことになります。また、決定では「話し合いなどで合意し、遺産相続が確定している場合、今回の判断が改めて影響しない」と指摘し、過去のケースについてさかのぼって争うことはできないとしています。

今後は、今回の最高裁の決定により、憲法違反とされたことで明治31年から100年以上続いてきた民法の規定は、改正を迫られることになりますが、改正されるまでは、この民法の規定の運用は、差し控えられることになろうかと思います。

時代の趨勢に柔軟に対応する規定にしていくことも、進化した司法制度の現れですね。

私たちの組織も、目まぐるしく変遷する依頼者の法的ニーズに対応できる柔軟な姿勢で取り組んでいきたいと思います。

それでは、今月号もよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

会社の組織再編について

今月からは3回シリーズで、会社の組織再編に関する大まかな手続きにの流れについて、ご説明しようと思います。

組織再編とは、合名会社が株式会社になる、などの組織変更手続き、二つ以上の会社が合体する吸収合併手続き、ある会社の一部門だけ、他の会社に譲り渡すという吸収分割手続きなどがあります。

そこで今月は、組織変更の手続きををご説明します。

組織変更とは、株式会社が合名会社、合資会社、合同会社になること、又は、合名会社や合資会社、合同会社が株式会社になることをいいます( 会社法2条26号) 。ある会社が他の会社形態への変更を望む場合に、いったん会社を解散させて、あたらに会社を設立するという手続きをせず、この組織変更の手続きを行えば、法人としての同一性を保つことができます。

この組織変更を行う際の手続きの流れは以下のとおりです。

 

組織変更手続きの流れ

1.組織変更計画書の作成

 ↓ ※効力発生日等の決定

2.組織変更について承認決議

 ↓ ※債権者保護手続きと並行して組織変更の承認

3.債権者保護手続き(官報公告及び現存する債権者への個別の通知)

 ↓ ※公告及び通知から1カ月の異議申し出期間

4.組織変更計画で定めた効力発生日到来

 ↓ ※効力発生の後に登記申請

5.組織変更の登記申請

 ↓ ※登記申請から完了までの約1週間

6.登記手続き完了

   ※手続き開始から完了まで最短で約2カ月ほど

 

この手続の中で、まず、時間との戦いとなるのが官報への公告の掲載手続です。官報への掲載日から1カ月を下らない期間に債権者に異議がないかをお尋ねするものです。

この官報手続きを省略することはできません。また、場合によっては、官報へ掲載するための申し込みから実際に掲載されるまで20日ほどかかる場合があります。そのため、官報の申込みから掲載までの期間と1カ月の異議申出期間を合わせると早くても約2カ月ほどかかることになります。そこで、手続きを検討される際は、この期間を計算に入れてお考えください。

判例紹介

結婚相手紹介サービス契約に関し、書面不備があったことから、退会後のクーリング・オフを認めた事例

東京高等裁判所 平成22年9月22日 判決

<事案の概要>

Aさんは入会当時51歳、男性、会社員である。B会社は、結婚相談業および結婚仲介業等を業としている事業者である。

Aさんは、B会社事務所において、ウエディング情報閲覧・お見合い・交際・結婚アドバイス、紹介対象は日本人女性という条件で、登録期間1年、入会金357,000円、月会費8,000円の結婚相手紹介サービス契約を締結した。

B会社のシステムは、インターネットを用いて登録会員から結婚相手を検索できるシステムであったが、入会1カ月を経過した頃、B会社担当者から、中国人女性との国際結婚を勧められ、上海でのお見合いツアーに参加するよう勧められ、ツアー料金157,500円を支払い、3日間参加した。

帰国後、Aさんはお見合いツアーで知り合った中国人女性との結婚誓約書に署名した。AさんはB会社に対し、その中国人女性と上海で結婚式を挙げるための結婚式料、成婚ツアー料として3,097,500円を支払った。

しかしその後、Aさんは婚約を撤回し、B会社及び代表取締役それぞれに対し結婚式料、成婚ツアー料の返還を請求したが、拒否された。

Aさんは弁護士を通じ、B会社に対し、本件は特定商取引に関する法律の特定継続的役務提供に該当するが、交付書面にクーリング・オフに関する事項、役務提供期間、中途解約に関する事項、清算方法などの記載がないことから、クーリング・オフする旨を通知し、既払金全額の返還を求めた。

 

<裁判所の判断>

仮にAさんが退会していたとしても、本件契約においては「書面不備」等が認められクーリング・オフ期間は経過していないとされる。したがって、本件契約についてクーリング・オフをすることができるというべきである。

本件契約により定められた役務提供の内容は、結婚相手紹介サービスのみでなく、お見合いツアーや成婚ツアーも含まれることから、一体としてクーリング・オフの対象となるべきものである。

 

<コメント>

複数の契約がなされているケースであっても、一体としてクーリング・オフの対象となることがあり、他にもエステサービスと一緒に購入した化粧品などもクーリング・オフの対象となるとなり得ます。

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