法エールVol.27

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ご挨拶

平成23年3月11日、未曾有の大震災が発生しました。東北地方太平洋沖地震です。死者も行方不明者もこれまでの規模と比較にならない大惨事となりました。この災害の前までは、若者による大学入試問題の携帯電話による不正流出事件や幼児殺害事件があり、若者の将来に対し不安を感じていたところ、原子力発電からの放射能流出問題も含め、今後の日本の将来の行方に不安を与える災害と遭遇することになってしまいました。

生活をしていくための日常を取り戻すために、被災地は今(3月15日現在)でも混乱していますが、もう暫くすると被災関連の法律問題が浮上してきます。「罹災都市借地借家臨時処理法」のような有事の時に適用される法律問題をはじめ、身分法関係、雇用法関係等に関する身近な法律問題にとどまらず、生活相談にも対応していく必要があります。阪神淡路大震災の時には、司法書士の有志がいち早く現場に駆けつけ、無料出張相談を行っています。

一日も早く法的サービスの提供ができる環境ができることを祈念しつつ、今回の災害でお亡くなりになった方々に対し、心からのご冥福をお祈り申し上げます。

それでは、今月号も宜しくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

トラブル解決の方法

今月は、トラブル解決方法の一つである支払督促手続につき説明します。

(事例)

AさんはBさんに、平成22年3月1日に200万円貸しました。返済期限は平成23年3月1日です。しかし、Bさんは期限を過ぎてもお金を返しません。AさんはBさんからお金を返してもらいたいのですが、裁判となると長期化するのではないか・・・と不安を感じています。

<支払督促の流れ>

支払督促の流れ
このような場合、Aさんは「支払督促」という方法をとることができます。
支払督促とは簡易裁判所の裁判所書記官を通じて、Bさんに対して金銭を支払うように督促する手続です。支払督促の最大の特長は手続の簡便さです。Aさんの申立てがあると、裁判所は申立書を形式的に審査し、Bさんに送達します。この際、裁判所に出廷する必要はありません。

支払督促が利用できるのは金銭または有価証券の請求権に限られますが、前号で紹介した少額訴訟とは異なり、請求金額の大小に関係なく(数万円から億単位まで)利用することができます。また、一般の民事訴訟では、請求する金額(訴訟の目的の価額)が140万円を超えるときには地方裁判所、140万円以下の場合には簡易裁判所、というように金額によって手続きを行う裁判所が分けられていますが、支払督促の場合には、常に簡易裁判所(原則として相手方(Bさん)の住所地を管轄する簡易裁判所)に申立てをすることになります。

支払督促はAさんの申立てのみで行われますが、請求に間違いがあったり、不当な請求がなされた場合等には、Bさんは支払督促を受け取った日から2週間以内に、異議を申し立てることができます。この場合は通常の訴訟に移行することになります。
Bさんが異議を申立てなければ、Aさんは30日以内に仮執行宣言の申立といって、Bさんの財産を差し押さえをすることができるように裁判所に申立てをすることができます。Aさんが仮執行宣言の申立てをしなければ、支払督促は効力を失うことになりますので注意が必要です。
仮執行宣言が付された支払督促があれば、支払いをしないBさんの財産を差し押えて競売し、その売却代金から貸したお金を回収することができます。
支払督促の申立から強制執行の手続きに入るまで、早ければ1ヶ月ほどで行うことができますので、Aさんは迅速に貸したお金の回収を図ることができます。

3回にわたって法的紛争解決手段について紹介をしてきましたが、相手方の支払意思の有無や争いの有無等により、適切な手段も異なってきます。お近くの事務所にご相談ください。

判例紹介

インターネット上の取引契約の成立時期

東京地方裁判所 平成17年9月2日 判決

インターネット上の取引契約の成立時期

事案の概要

  1. ヤフーが開設するインターネット上のショッピングサイトにおいて、Yの売りだしていたパソコン1台の値段が2,787円と表示されていた。そこでXはこれを3台注文し、その日のうちにヤフーから受注確認メールを受信した。そのため、Xは注文が正確にできたと認識した。
  2. 翌日にXはYから、サイトの表示は誤ってなされたもので注文には応じられないとのメールを受信したが、これには納得せずパソコン3台を売り渡すよう求めるメールを返信した。その後の調査により、この契約の目的物はDVDソフトであったところ、Yからヤフーへの伝達は適正であったものの、入力ミスによって、インターネット上のショッピングサイトに中古パソコンと表示されてしまったことが分かった。
  3. その3日後にXはYから契約は成立していないこと、ヤフーはYからの連絡を受けて表示を削除したことでYとしても事故の拡大防止に対処したといった内容のメールを受信した。
  4. その後にXが再度パソコン3台の売り渡しを求め、Yは契約の成立を否定するメールのやり取りがあったが、数ヵ月後にXはパソコン自体は不要であるが、損害賠償として、同機種の中古パソコン3台分の代金相当額345,000円を請求した。

今回のポイント

ネット上の取引において注文者がサイト開設者から受注確認メールを受信した時点で売買契約は成立するかどうか。

判決の要旨

ヤフー(サイト開設者)による受注確認メールは売主の承諾と認めることはできず、これをもって契約が成立したと見ることはできない。よって、Xの損害賠償の請求は認められない。

解説

ネットの取引は、売主の「電子承諾通知」が注文者に到達したときに成立します。サイト開設者の受注確認メールは、注文者の申込みが正確に発信され、サイト開設者まで届いたことを、サイト開設者が注文者に確認するものでしかありません。そのため、受注確認メールでは、売主に意思表示が到達したといえるものではないようです。
本件以外にも、類似するネットの通信販売の事例において、値段表記を誤り、当初は注文を取り消すメールを送ったが、反発が多く「社会的信用を優先する」ため表記通りの金額で販売し、億単位の損失を出した会社もありますし、反対に「契約は成立していない」ことを押し通したと
いう会社もあるようです。
何れにせよ、やはり間違いを起こさないよう確認することが肝要ですし、ヤフー・楽天・アマゾンなどショッピングサイト任せにしないというところも大切ですね。

コラム

~Happy Wedding ♪~

先日、「自分に影響を与えた人」のことついて、知人と話をする機会がありました。誰か1人に絞るのがかなり難しかったのですが、高校時代の親友の顔が思い浮かびました。図書館好きの彼女の影響で、私も読書が好きになりましたし、自分の考えを当時からしっかり持っていた彼女に、私も色々とアドバイスをもらいました。

そんな彼女から、この前電話があり、「今度結婚することになった。」という嬉しい報告!!私も二次会の幹事を任されたので、4月の結婚式に向けて着々と準備中です。久しぶりに、心がほっこりするような出来事でした。早く彼女のウェディング・ドレス姿が見たいです♪

(清水事務所 髙岡 愛)

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

先日、携帯電話を新しいものに変えました。携帯ショップの店員さんから、さまざまな機能があることを紹介してもらい、「スゴイ。こういう事もできるんだ。」と感動したのですが、購入後、早速家に帰って操作してみると、使い方一つ一つをマスターするのに結構時間がかかります。

もともと電子機器の操作には自信がない方ですが、ほんの一部しか使いこなせていない自分だけに、買っただけで満足して宝の持ち腐れにならないよう、気をつけたいと思いました。

(清水事務所 司法書士 西本 清隆)

お知らせ

当法人では、継続的な相談にも対応できるよう、顧問契約の締結も行っています。

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