法エールVol.171

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ご挨拶

2月19日に、熊本城マラソンが開催されました。新型コロナウイルス感染症の影響で3年間中止されていましたが、感染者の減少等もあって開催となり、大会には約1万2千人の方が参加されました。大会当日は、天候に恵まれなかったものの、マラコンコースの沿道にはたくさんの方が応援されていました。私も弊法人の薄場事務所近くで応援しておりましたが、久しぶりの光景で、やっとコロナ前の状況に戻ってきたと嬉しく思いました。

さて、日本銀行熊本支店が出している熊本県の金融経済概観2月公表分では、「熊本県内の景気は、持ち直している。先行きについては、海外の経済動向や原材料価格等の上昇、感染症の趨勢等の影響を注視していく必要がある。個人消費は、持ち直している。観光は、回復している。住宅投資、公共投資は、横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、増加基調にある。生産は、高水準で推移している。雇用・所得情勢をみると、改善の動きがみられている。この間、1月の消費者物価指数(熊本市、生鮮食品を除く総合)は、前年を上回った。」との記載がありました。

段々とコロナ前の状況に戻りつつある中、景気も上向きになっていっているようです。このままの状況でいければと期待しております。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

~任意後見制度~

1月号より、任意後見制度について説明しています。前回は、任意後見契約は、判断能力が十分あるときに本人と将来の任意後見人(任意後見受任者)が公正証書で作成する必要があることを説明しました。

今回は、実際に任意後見契約が発効するタイミング及びその手続きについて説明します。

 

判断能力が低下したら「任意後見監督人選任の申し立て」をする

認知症の症状がみられるなど、本人の判断能力が低下したら、任意後見監督人の選任を申し立てを行います。任意後見契約は、任意後見監督人が選任されたときから効力が発生します。申し立て先は、本人の住所地の家庭裁判所です。また、任意後見監督人選任の申し立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者です。原則として、本人以外が申し立てを行う場合には、本人の同意が必要とされています。

任意後見監督人が選任された時点で、任意後見受任者は「任意後見人」となり、任意後見契約に基づき職務を行うことになります。

任意後見監督人は、任意後見人が契約内容どおりに適正に仕事をしているかどうかを監督する役割の人です。また、本人と任意後見人の利益が相反する法律行為を行う際に、本人を代理する役割もあります。任意後見人が行った職務等について、任意後見監督人は家庭裁判所に報告を行います。任意後見監督人を通じて、間接的に家庭裁判所が任意後見人を監督することで、本人の保護を図るという仕組みです。

 

任意後見契約が終了するとき

任意後見契約は、本人または任意後見人が死亡・破産すると契約は終了します。また、任意後見人が認知症などで被後見人等になったときも同様です。

また、任意後見人に不正行為、著しい不行跡、その他任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は任意後見人を解任することができます。解任請求ができるのは、任意後見監督人、本人、その親族または検察官です。

また、任意後見契約を解除するときは、家庭裁判所が任意後見監督人を選任する前か後かで、手続きが異なるので注意が必要です。

(選任前)本人または任意後見受任者は、いつでも契約を解除することができます。ただし、公証人の認証が必要です。

(選任後)本人または任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、契約を解除することができます。

 

任意後見制度は遺言書や民事信託手続きなどの終活手続きの一つです。国が取り組む「任意後見制度の利用促進」と共に、我々も情報発信を続けていきたいと思います。

 

判例紹介

自衛権・戦力・駐留軍-砂川事件

最高裁判所第一小法廷 平成6年1月27日判決

事案の概要

1 駐留米軍立川飛行場の拡張計画に対して反対同盟員、労働組合員、学生団体等による反対運動が展開されるなかで、1957年7月8日土地測量に反対する運動員の一部が境界柵を数10メートル破壊し、飛行場内に数メートル立ち入った。この行為は、「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(旧安保条約)第3条に基づく行政協定に伴う刑事特別法」(以下、「刑事特別法」)第2条に該当するとして、起訴された。

2 第1審の東京地方裁判所は、以下のように判示した(所謂「伊達判決」)。

  1. 米軍駐留に関する憲法判断を行うに当たって、憲法9条は、「自衛権を否定するものではないが、侵略的戦争は勿論のこと、自衛のための戦力を用いる戦争及び自衛のための戦力の保持をも許さないとするもの」である。「現実的にはいかに譲歩しても・・・国際平和団体を目ざしている国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事的安全措置等を最低線としてこれによってわが国の安全と生存を維持しようとする決意に基づくもの」である。
  2. また、米軍駐留と憲法9条の関係を考察すると、駐留米軍は旧安保条約1条に基づき極東の平和と安全のためとして、「戦略上必要と判断した際にも当然日本区域外にその軍隊を出動し得る」。したがって、「わが国が自国と直接関係のない武力紛争の渦中に巻き込まれ、戦争の惨禍がわが国に及ぶ虞は必ずしも絶無」ではない。

また、駐留米軍が日本の防衛に使用される場合、駐留するのは「わが国政府の要請と、合衆国政府の承諾という意思の合致があったからであって、従って合衆国軍隊の駐留は一面わが国政府の行為によるもの」である。「実質的に考察するとき、わが国が外部からの武力攻撃に対する自衛に使用する目的で合衆国軍隊の駐留を許容していることは、指揮権の有無、合衆国軍隊の出動義務の有無に拘らず、日本国憲法第9条第2項前段によって禁止されている陸海空軍その他の戦力の保持に該当する」。結局駐留米軍は違憲であり、刑事特別法2条も憲法31条に違反し、被告人は無罪である。

3 この判決に対して、検察側は刑事訴訟規則254条1項に基づき最高裁に跳躍上告した。

 

裁判所の判断

原判決破棄・差戻し。

自衛権、自衛権の範囲に関し、主として判示した事項は次の4点です。

①憲法第9条の立法趣旨について

憲法第9条は、わが国が敗戦の結果、ポッダム宣言を受諾したことに伴い、日本国民が過去におけるわが国の誤って犯すに至った軍国主義的行動を反省し、政府の行為によって再び戦争の参禍が起ることのないようにすることを決意し、深く恒久の平和を念願して制定したものであつて、前文および第98条第2項の国際協調の精神と相まって、わが憲法の特色である平和主義を具体化したものである。

②憲法第9条第2項の戦力不保持の規定の立法趣旨について

憲法第9条第2項が戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となって、これに指揮権、管理権を行使することにより、同条第1項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起すことのないようにするためである。

③憲法第9条はわが国の自衛権を否定しているか

憲法第9条はわが国が主権国として持つ固有の自衛権を何ら否定してはいない。

④憲法は、わが国が自国の平和と安全を維持しその存立を全うするための自衛の措置をとることを禁止するか

わが国が、自国の平和と安全とを維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使であって、憲法は何らこれを禁止するものではない。

 

コメント

自衛権・自衛力を検討するに当たっては、そもそも①日本国には自衛権はあるのか、あるとして、その自衛権の及ぶ範囲、自衛のための措置とはどこまでなのか、その自衛権とは個別的自衛権なのか、集団的自衛権も含まれるのか②自衛力とは何か、戦力不保持との関係はどうなるのか等々、憲法解釈上難しい問題が多々あります。また、日米安全保障条約、これに基づく日米地位協定(安保体制)などもあり、政府による憲法解釈も加わります。

このような状況の中、ロシアのウクライナ侵攻を契機として、中国の台湾侵攻や尖閣諸島の奪取の問題、ミサイルを頻繁に発射している北朝鮮問題、北方領土返還の問題、そして、戦後の防衛・軍事政策、安保政策の歴史的大転換と言われる敵基地攻撃能力保有の問題等が一挙に注目を浴びています。

危機的状況における有事対処の基準は、やはり、国家の最高法規である憲法の趣旨・精神にあるはずです。平和主義を希求する日本としては、国際的に中立的立場から平和構想を提示したり、国際的紛争・対立の緩和に向けて提言を行うなど、平和を実現するための積極的行動が要請されていると思います。これを基軸として、今後の世界情勢と政府の見解・解釈の動向を多面的、かつ、全体的に見守っていく必要があるようです。

 

コラム

~献血にいってみませんか~

先日、久しぶりに献血をしたところ色々と新しくなっていて驚きました。

例えば「ラブブラッド」という献血アプリができて、事前予約できたり、アプリで血液検査結果が2~5日くらいで分かるようになっていたり。

採決前検査が肘辺りからの採血ではなく、指先からの採血になっていたり。

そして今回初めて知ったのが年間可能な総献血量が(200mL献血と400mL献血をあわせて)男性は1,200mL、女性は800mL以内ということ。

つまり、400mL献血の場合、男性は年3回、女性は年2回しか献血出来ませんから、血液不足になりやすいことに納得しました。

成分献血はもっとできる回数が多いので、今後も気負わずできる人助けとして献血と共に継続していきたいと思っています。

薄場事務所 永井 友美子

 

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