法エールVol.162

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ご挨拶

最近、持続化給付金詐欺のニュースをよく耳にします。持続化給付金の不正受給に関しては、国は自主返納するように呼び掛けており、6月2日時点で自主返納額は166億円に上るということです。そうすると、不正受給の総額は相当なものになるのではないかと思います。

先日、ある雑誌に、某大学野球部監督のインタビュー記事がありました。その監督は、野球とは技術だけでは駄目で、人間学を学ぶことによって天真が発揮されるとおっしゃっていました。その野球部では、人間学の勉強を部員全員で取り組み、その甲斐あって、全国大会で優勝するまでになりました。それぞれの部員が他の部員を思いやり、技術を高め合いながら、プラス思考で取り組んだ結果だということです。

持続化給付金は、コロナ禍で売上が一定額より下がった企業や個人事業者に対して支援されるものです。国は困っている企業等を早急に救済する必要があると、審査を簡易にして支給を早めました。それを逆手に取り税金を詐取する行為は、とても残念に思います。

日本は、給与水準が上がらない中での物価上昇、景気低迷等で、市民の生活は危機的状況に陥る一歩手前と評する学者もいます。このようなときこそ、日本国民は一致団結して物事に取り組まなければならないのですが、持続化給付金の詐欺事件を見てもわかるとおり、自分のことのみを考えて、犯罪に走る国民が少なからずいることを恥ずかしく思います。某大学の野球部が人間学の勉強をして成果をあげたように、人間学を日本人一人一人が学べば、よりよい成果が生まれ、日本も危機的な状況から脱出できるのではないかと感じます。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

~相続土地国庫帰属制度について~

土地利用ニーズの低下等により、土地を相続したものの、土地を手放したいと考える人が増加しています。また、相続を契機として、土地を望まず取得した所有者の負担感が増しており、管理の不全化を招いています。

このような状況の中、所有者不明土地の発生を抑制するため、相続又は遺贈により土地の所有権を取得した相続人が、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度を創設する必要が生じ、相続土地国庫帰属法が制定されました。これは、令和5年4月27日に施行されます。

 

1.相続土地国庫帰属法とは

相続等により土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度。

 

2.要件

①申請権者

相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により土地の所有権又は共有持分を取得した者等。

共有持分を相続等により取得した場合でも、土地全体について申請することができます。

②土地の要件

通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地に該当しないこと。そのため、以下の土地は申請することができません。

ア 建物の存する土地
イ 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
ウ 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
エ 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
オ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

また、以下の土地の場合は、法務大臣は承認してはいけません。

ア 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
イ 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
ウ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
エ 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
オ 上記のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

上記の要件を満たすと、法務大臣より承認され、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金(地目、面積、周辺環境等の実情に応じて対応すべく、詳細は政令で規定)を納付すれば、国庫に帰属されることになります。

(参考)現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)は、粗放的な管理で足りる原野約20万円、市街地の宅地(200㎡)約80万円となっています。

 

以上が、相続土地国庫帰属制度についてのご説明となります。土地の承認要件は、今後運用されることを通して具体的になってくるものと思われます。

 

判例紹介

共同保証人は分別の利益を有することを知らずにした保証債務の弁済が、債権者の不当利得を構成するとされた事例

札幌地方裁判所 令和3年5月13日判決

事案の概要

(1)訴外Aは、平成9年6月頃に、Y(旧日本育英会)から、奨学金として100万8000円を年利2%、合計132回の月賦で返還する旨(以下、「本件奨学金1」という)で借り受けた。本件奨学金1につき、平成11年3月31日、訴外B(Aの父)がYに対して連帯保証し、同日、X1(元高校教師でAは教え子)がAから委託を受けて、Yに対して単純保証した(以下、「本件保証契約1」という)。平成24年10月10日、Yは本件保証契約1に基づき、X1に対し93万6427円の支払いを請求し、X1は平成31年までの間に68万800円を弁済した。(その後、YはX1に2万5800円を返還している。)

(2)訴外Cは、平成20年2月までの間に、Yから240万円を年利1.75625%、合計180回の月賦で返還する旨(以下、「本件奨学金2」という)で借り受けた。本件奨学金2につき、平成20年3月31日、訴外D(Cの父)がYに対して連帯保証し、同日、訴外E(Cの叔父)がCから委託を受けてYに対して単純保証した(以下、「本件保証契約2」という)。本件保証契約2は、Eから家のこと全般に包括委任を受けたという妻X2が代理人として締結した事情もあり、平成21年2月24日、X2がEの代理人として242万2613円をYに支払った。

(3)X1及びX2は、Yにより各自の保証債務額を超える金額の支払いを余儀なくされたとして、不当利得の返還(X1につき17万6787円、X2につき121万1306円)と、不法行為に基づき慰謝料の支払いとを、それぞれYに対し求めた。

 

裁判所の判断

保証人が、分別の利益を有していることを知らずに、自己の負担を超える部分を自己の保証債務と誤信して債権者に対して弁済した場合には、この超過部分に対する返済は、保証債務を負っていないのに、錯誤に基づき自己の保証債務の履行として弁済をしたものと言えるから「債務者でない者が錯誤にとって債務の弁済をした場合」(民法707条)、すなわち非債弁済に他ならない。そのため、保証人による自己の負担を超える弁済は無効であって、保証人は、債権者に対し、当該超過部分相当額の不当利得返還請求権を有するというべきである、として、Xらの不当利得返還請求を認めた。ただし、YにはXらに対する分別の利益に係る説明義務はなかったとして、不法行為に基づく損害賠償請求は棄却した。

 

コメント

可分な主たる債務の共同保証人は債権者に対して平等の割合で保証債務を負担するのが原則で、これを「分別の利益」といいます。(これに対し、「連帯」保証人は、この分別の利益がなく、債権者に対し、債務全額を返済する義務があります。)

今回の判決において、単純保証人は分別の利益を超える返済をしたとして、日本学生支援機構に対する不当利得返還請求を認めました。

なお、日本学生支援機構はこの判決を受け、「札幌高等裁判所判決を踏まえた今後の保証人への対応について」とホームページ上で掲載しており、保証人に対して順次対応していく旨が公表されています。

(独立行政法人日本学生支援機構ホームページ)https://www.jasso.go.jp/news/1201755_1579.html

 

司法書士日記

日頃から車で移動することが多いのですが、移動中にビジネス書や小説などをプロの声優が朗読した音声を聴いています。

最近聴いた中で印象的だった内容が、人間誰しも幸せな人生を送りたいと願っていますが、「幸せになりたい」と思うのではなく、「今、私は幸せである」と自分の脳を勘違いさせることが大切だ、ということでした。

「幸せになりたい」と思うことは、「(自分は今幸せではないから)幸せになりたい」と、幸せでない自分を無意識に想像し、幸せでない自分を作り出してしまうそうです。

したがって、なりたい自分を想像し、なりたい自分になっていると勘違いすることで、理想の状況を早く作り出していくことができる、とのことでした。

自分にとって理想の状況、望ましい状況が叶っていると想像することは少しハードルが高いかもしれませんが、自分の脳を勘違いさせるべく、今日も一日楽しく実践していこうと誓うのでした。

健軍事務所 司法書士 山﨑 順子

 

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