法エールVol.160

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ご挨拶

弊法人の司法書士3名は、民事信託士という民間の資格を有しております。民事信託士とは、全国の弁護士・司法書士の中で一定の試験に合格した者が取得できる資格で、民事信託の普及や研究等を行っています。

民事信託とは、簡単にいいますと、非営利目的で、ある方(委託者といいます。)の財産を、別の方(受託者といいます。)が管理運用して、契約や遺言により指定された方(受益者といいます。)に利益を受けさせるものです。

民事信託は、高齢者の方等が、将来、財産管理をすることが難しくなることに備えたり、共有物の管理のためや、遺言書の代替として幅広く利用されています。

私も民事信託を普及すべく業務の中で情報提供等を行っておりますが、悩ましい問題があります。それは、熊本においては、信託口(しんたくぐち)口座を開設できる金融機関がほとんどないのです。信託口口座とは、受託者個人の財産と分けて管理できる口座で、受託者個人に差押え等があっても信託口口座であれば、信託で管理されている口座ということで差押えを回避したり、差押えされても容易に差押えを取り消すことができます。しかし、信託口口座ではなく受託者個人名の口座で管理する場合は、差押えされて、裁判の中で信託で預かった金銭であることを立証し、執行されないようにしなければなりません。

信託口口座は、関東の金融機関では、契約書の内容次第ではつくれるところもあるそうです。熊本でも、信託口口座をつくれる金融機関がでてくると、市民の皆様がもっと安心して民事信託を利用することが可能ではないかと思います。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

~民法等一部改正について~

令和3年4月21日に「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立し、同月28日に公布されました。本紙154号から156号で、その中の一部である、相隣関係等についてご説明させていただきました。

今回は、不動産登記の相続に関する改正点と相続土地国庫帰属制度についてご説明します。

 

第1.不動産登記法の改正

1.相続登記の申請の義務化

所有者不明土地(※)が発生する原因として、相続登記がされないことがあります。相続登記がされない原因としては、都市部への人口移動や人口減少・高齢化の進展等により、地方を中心に、土地の所有意識が希薄化・土地を利用したいというニーズも低下している、遺産分割をしないまま相続が繰り返されると、土地共有者がねずみ算式に増加していて相続手続きをするに際して費用がかさむこと等があげられます。

所有者不明土地は、その土地が管理されず放置されることが多く、共有者が多数の場合や一部所在不明の場合、土地の管理・利用のために必要な合意形成が困難となる場合があるため、公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まず、民間取引に支障が出るなど、土地の利活用を阻害している要因となっています。

そのため、令和6年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を取得した相続人は、その取得を知ってから3年以内に相続登記を申請しなければ、10万円以下の過料に処せられることになりました(正当な事由がある場合は除きます。)。令和6年4月1日以前に相続が発生していた場合は、令和6年4月1日か相続による所有権の取得を知った日の遅い方の日から3年以内で相続登記を申請しなければなりません。

※所有者不明土地とは・・・①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地、及び②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地のことをいいます。所有者不明土地のうち、相続登記の未了が66%、住所変更登記の未了が34%を占めています。日本における所有者不明土地の割合(H29国交省調査)は22%となっており、高齢化の進展による死亡者数の増加等により、今後ますます深刻化するおそれがあると言われています。

 

2.相続人申告登記

前述のとおり、相続人は原則として不動産の取得を知ってから3年内に相続登記を申請しなければならないのですが、相続人が多くて遺産分割協議が難航している場合など、相続登記がすぐにはできない場合もあります。その場合、相続登記申告登記を3年以内にすることで、相続登記の申請義務を履行することができます。

相続人申告登記の申出は、相続人の一人から、①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、②自らがその相続人である旨を、登記を管轄する法務局の登記官に対して行います。申出を受けた登記官は、所要の審査をした上で、申出をした相続人の氏名・住所等を職権で登記に付記します。そうすると、登記簿を見ることで相続人の氏名・住所を容易に把握することが可能になりますので、所有者不明土地の解消につながります。

 

3.死亡情報についての符号の表示

法務局の登記官が他の公的機関(住基ネットなど)から取得した死亡情報に基づいて不動産登記に死亡の事実を符号によって表示する制度を新設しました。

そうすると、登記を見ればその不動産の所有権の登記名義人の死亡の事実を確認することが可能となります。

なお、この制度の施行は公布後5年以内となっております。

 

以上が、不動産登記の相続に関する改正点についてのご説明となります。次回は、不動産登記の改正点の続きをご説明致します。

 

判例紹介

高齢者に対する次々版売について消費者契約法による過量販売に該当するとして取消しを認めた事例

東京地方裁判所 令和2年6月30日

事案の概要

X(70歳代)は、2014年当時、年金収入が合計で約500万円あり、同居していた母親(当時、90歳代)も年金を受給していた。Xは2018年8月当時、約3000万円の預貯金を有していた。

Xの自宅は2015年頃から荷物で山積みとなり、部屋を片付けられない状態となったことから、Xは、家族の勧めにより、2016年10月上旬に脳神経外科の物忘れ外来を受診した。その後、Xは、家庭裁判所による保佐開始の審判を受け、2018年9月上旬に保佐人として、Xの弟であるCおよび弁護士であるAが選任された。

Xは、2014年からYの営業するサロンに度々訪れており、そこで販売されている宝飾品を購入していた。Xの取引履歴は、2014年5月下旬から2018年2月中旬まで少なくとも合計32回であり、支払金額にして合計約4800万円に及んでいる。XはYに対し、2014年から2018年までの取引全体が公序良俗に反し無効であり、同販売が不法行為を構成するとして、不当利得返還及び損害賠償を求めた。また、改正後の消費者契約法施行日(2017年6月3日)以降に締結した一部の取引につき、同法4条4項の過量販売に該当するとして取消し、不当利得返還を求めた事案である。

 

裁判所の判断

裁判所は、Xの判断能力の低下は認められるものの、自由に判断する能力は失われておらず、資産があり支払いを延滞したこともないなどの理由により、Yによる公序良俗違反や不法行為責任については否定した。

その上で、改正消費者契約法施行日より前の取引は、回数にして合計29回、支払額は合計約4700万円であり、取引当時のXの年齢、収入といった生活状況や、100万円を超える売買取引がそのうち合計18回にも上ることなどにも照らすと、同取引の商品の分量、回数、期間は、既に、Xにとって通常想定される分量を著しく超えた過大な取引であったと認められる。そして、同日以後の取引は、同日より前のものと同種の契約であることは明らかであり、Yにおいて、勧誘の際にXの購入履歴を認識していたことも認められる。したがって、Yとの取引は過量販売に該当するとし、(一連の取引のうち、改正消費者契約法施行後の)3件の取引について消費者契約法4条4項に基づき取消しを認め、不当利得返還請求を認めた。

(消費者契約法第4条第4項)

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量、回数又は期間(以下この項において「分量等」という。)が当該消費者にとっての通常の分量等(消費者契約の目的となるものの内容及び取引条件並びに事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及びこれについての当該消費者の認識に照らして当該消費者契約の目的となるものの分量等として通常想定される分量等をいう。以下この項において同じ。)を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。(後段省略)

 

コメント

「過量販売」とは、事業者が必要以上の量の商品・サービスの契約を勧誘し、結果として高額な契約をさせる商法を言います。特に、判断力の弱まった高齢者に対して布団などを日常生活で必要とする量をはるかに超えて売りつけるような商法が問題となっていました。この判断は過量販売を認めた初めての裁判例であり、高齢者等を狙った次々販売に関する事案の参考となるケースと言われています。

 

司法書士日記

私は昨年引っ越しをしたのですが、自宅で何か新しいことはできないかと思い、ベランダでハーブを育てることにしました。

と言っても、育てるにあたり特に知識がある訳でもなく、とりあえず、近くのホームセンターで小さなプランターを購入し、ハーブ専用の土を入れ、買ってきた苗を植えてみました。

ハーブは他の花や野菜など他の植物に比べ、育てるのに手間がかからないようで、初心者の私にはもってこいの植物です。

また、鑑賞だけではなく、ハーブティにしたり、料理に使うこともでき、一石二鳥!

現在育てているのが、アップルミント、モヒートミント、バジル、コモンセージの4種類。

毎日の小さな変化に癒されています。

夏にはミントティやモヒート、カプレーゼを味わうことができるように、大切に育てたいと思います。

健軍事務所 司法書士 山﨑 順子

 

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