法エールVol.156

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ご挨拶

今年もあとわずかとなりましたが、皆様はどのような一年でしたでしょうか。コロナ禍の2年目を迎え、コロナとの共生がテーマとなったこの一年は、ワクチン接種や緊急事態宣言の発令等で、コロナ感染を抑えながら生活できるコロナ禍前の状態になったのではないかと感じます。

また今年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、日本はメダルラッシュに沸きました。たくさんの若い選手がメダルを獲得し、幼少期からの英才教育が実を結んでいると感じました。

そして、政界においては、菅首相が辞任し、岸田総理が誕生しました。総裁選では、コロナ対策のみならず、外交、防衛、財政等に関しても深い議論が展開されました。菅元首相が、首相演説の中で防衛大綱の見直しを宣言し、その流れの中で岸田現首相も安全保障問題について、一歩踏み込んだ政策をとれるか、その中で憲法改正の議論がなされるか、注目したいところです。これからの日本について、より真剣な議論がなされるのではないかと期待しています。

また、コロナ禍において進んだのがデジタル化です。会議が対面からテレビ会議に変わり、紙の書類が電子書面になり、印鑑が電子署名へと変化していきました。これまで日本はAI等の技術で世界に後れを取っていると言われていますが、これを機に国全体で新しい社会へ変化していくチャンスとして欲しいと思います。

今の時代を、明治維新並みの変革期ととらえる方もいます。今年のNHKの大河ドラマは明治維新を駆け抜けた渋沢栄一翁が主人公でした。日本全体が混迷を極めた中で、国民のためにと死の直前まで奮闘された渋沢栄一翁は素晴らしいと思います。私自身は、なかなか時流をとらえることができておりませんが、新しい法制度を紹介することなどで、少しでも社会にお役に立てるように頑張って参ります。

 

最後になりましたが、本年も皆様には大変お世話になりました。心より感謝申し上げます。

来年も本年同様よろしくお願いいたします。

よいお年をお迎えください。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

相隣関係について

10月号より、民法等改正に関する相隣関係(隣地使用権、ライフラインの設備の設置・使用権、越境した竹木の枝の切取り)についてご説明しています。

今月は、越境した竹木の枝の切取りについてご説明いたします。

 

第3回(越境した竹木の枝の切取り)

現行民法では、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる旨を規定するのみであり、切除を要求したにもかかわらず、これに応じない場合についての対応に関して、何らの定めもありませんでした。そのため、枝を越境された土地の所有者は、竹木所有者の所在を探索し、当該所有者に対する枝の切除請求訴訟を提起して請求認容判決を得た上で、これを債務名義として強制執行により切除させる方法によらなければならないため、相当な時間と労力を要し、土地の円滑な管理の妨げとなっていました。

そこで、民法が以下のように改正されることになりました。

 

(改正民法第233条)

  1. 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
  2. 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
  3. 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
    1. 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
    2. 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
    3. 急迫の事情があるとき。
  4. 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

 

このように改正されたことで、一定の要件の下で裁判手続きを経ずに、土地所有者が越境した枝を切り取ることができるようになり、裁判費用や時間・労力の面で枝の越境を甘受せざるを得ない状況は、減少していくと考えられます。

なお、竹木の切除にかかる費用については、竹木所有者の不法行為を原因とする損害賠償請求権として請求することになります。

今回、3回にわたって民法等改正に関する相隣関係についてご説明いたしました。これらの改正は2023年(令和5年)4月1日より施行されます。

今回の改正により、新たに設けられた制度も多く、制度の解釈については今後も専門的な議論が重ねられていくと思います。実際に今回ご紹介した相隣関係の規定のご利用をご検討される場合には、当法人までご相談ください。

 

判例紹介

ビル型納骨壇使用契約解除による永代使用料等の返還

大阪地方裁判所 平成31年(ワ)第3629号

事案の概要

宗教法人Aは、ビル型納骨壇(以下、「納骨壇」という。)を所有しており、その使用権の販売及び運営を株式会社Bに委託していた。

原告であるCは、自身と妻の将来のためにと考え、2012年に納骨壇の使用を申し込み、「永代使用料と永代供養料」として、一括で140万円を支払った(本件契約)。しかし、夫婦とも健在で、納骨壇の鍵を鍵を受け取ることもなく、全く使用しないまま6年が経過した。

その後、2018年突然C株式会社の社長が脱税容疑で逮捕され(のちに有罪確定)、反社会的組織とのつながりについて、マスコミによって大きく報じられた。

Cは上記の報道から、将来の納骨壇維持管理の安定性に大きな不安を覚え、本件契約を解約し、未使用を理由に、支払い済みの永代使用料と永代供養料合計140万円(内訳は明確には区分されていない)全額の返還を求めて提訴した。

裁判所の判断

本件契約は、AがCのために遺骨又は遺品を保管することを約し、その寄託の報酬としてCがAに対し永代使用料を支払うという内容の諾成的有償契約に、AがCのために永代供養という役務を行うことを約する内容の準委任契約が付随した混合契約である。

AとCの契約には、支払った「永代使用料及び永代供養料は本件契約を解約した場合であっても返還しない」旨の特約が付されていたが、この特約は、損害賠償の予定又は違約金を定める条項に該当し、消費者契約法9条1号により無効である。

しかし、永代使用料及び永代供養料として支払われた金員のうちには、本件納骨壇を使用し、供養をうけることができる地位を付与され、これによって宗教的感情を満足させる効果が生じたことに対する対価としての性質を有する部分があるとみることが相当であり、その部分については返還義務を生じない。この対価としては、140万円のうち3割とみるのが相当である。

 

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
消費者契約法第9条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。

一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの当該超える部分

 

コメント

今回の裁判例は、ビル型納骨堂を申し込んだものの、全く使用することが無く解約した場合に、支払った費用に関する返還について判断がなされたものです。今回のようなビル型納骨壇の永代使用や永代供養を約した契約についての法的性質について明確に論じた判例はありませんでした。なお、今回、「宗教的感情満足効果」として支払った一部については返還義務がないものと判断されましたが、この点については未だ一般的な解釈とは言えず、今後さらなる裁判例の集積が必要になってくると思われます。また、故人を供養する形は多様化しており、今後も新たな裁判例が登場してくることが予想されます。今後、このような契約を検討される際は、契約書や管理規約等を十分に確認し、後々のトラブルになることが無いように事前に専門家に相談することも大切です。

コラム

~勉強道具の救世主~

日々の勉強の中、教材や六法の大事な箇所や間違えやすい箇所等に線を引き、頭の中に記憶させるために、蛍光ペン(キャップ付き)を使っています。

大事な箇所は「黄色」、場合分けの箇所は「緑」、「ここは暗記だ」という箇所は「ピンク」。

あと、もうちょっと細かく分けて覚えようとするときは「赤」「青」「紫」「オレンジ」、色分けしすぎてちょっとごちゃごちゃになることもありますが(笑)。

こうやって机の上にたくさん蛍光ペンを並べて、しかもキャップを外したまま使っていると、ペン先が乾いてきて色が付きにくくなることがあります。

また「使って直す」「使って直す」としている作業も、なかなか面倒・・・。

何かいい方法はないかと模索していたら、「ノック式」の蛍光ペンを発見しました!

このノック式であれば、必要な時にノックして使えるのでペン先が乾きません。

これでペン先の乾きや、キャップの開け閉めの動作のストレスもなくなりました。

後は・・・勉強の結果を出すのみです。

行政書士法人ヒューマン・サポート 行政書士 中村 享子
(司法書士法人ヒューマン・サポート法律支援センター連携行政書士)

 

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