法エールVol.151

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ご挨拶

最近、相続や財産管理に関するご相談を受けていると、家族信託という言葉が、ご相談者の方から出てきます。家族信託につきましては、法エールの121~123号の手続紹介でご説明させていただきておりますので、そちらをご参照いただければと思うのですが、数年前まで家族信託は全く認知されていなかったので、大変驚きます。私自身、家族信託を勉強し始めたのは7、8年ほど前です。当時は独学で勉強していたのですが、なかなか実務と結びつかず、4年ほど前から、民事信託士という民間の資格を取得し、全国の弁護士、司法書士と信託について学んでいます。民事信託士とは、弁護士、司法書士資格を有する者が信託法に関する試験に合格すれば取得できる資格です。熊本では、弊法人の司法書士3名と、弁護士1名が民事信託士の資格を取得し、業務を行っております。家族信託は、終活セミナー等のテーマによく取り上げられるようで、セミナーに参加して家族信託に興味を持ったという方が、弊法人に家族信託したいとお越しになられます。ただ、家族信託は万能であると誤解されてくる方が少なからずいらっしゃいますが、家族信託にはメリットもあれば、デメリットもありますので、契約する際は注意が必要です。

これから更なる高齢化社会を向かえるにあたり、国会では相続に関連する法律等の改正が行われております。自分自身の大切な財産を次世代に承継するにあたっては、家族信託や遺言等を活用しながら、円満に手続きが完了するように、弊法人も微力ながらお手伝いさせていただいております。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

医療法人の登記について

今月から3回に渡り各種法人の登記手続きについてご説明していきます。法人の種類によって多少手続きが違いますので、その点もお伝えできればと思います。

 

今月は、医療法人の登記手続きについてです。
まず、医療法人の設立には、登記手続きの前に主務官庁における設立の認可が必要です。認可が下り、認可証の交付を受けることで、医療法人の設立の登記を申請することができます。この設立の登記申請には、交付を受けた認可証を添付する必要があります。

次に、設立後に必要となる登記手続きについて説明します。
まず、毎年必要とされる登記手続きとして、資産の総額の変更登記があります。医療法人の設立時には登記されませんが、医療法人の純資産額は登記事項となっています(登記事項証明書に記載されいているということです)。そこで、毎年の決算で純資産額が増減した場合には登記手続きが必要になります。手続きの時期としては、毎年の決算の承認を得られた後に遅滞なくということになります。

次に、定期的に必要とされる登記手続きとして、2年ごとの理事長の就任登記があります。医療法上、医療法人の役員の任期は2年となっています。これまでと同じ人が理事長に選任された場合、実質は理事長の変更はありませんが、登記手続き上、この理事長の再任の登記が必要となります(登記事項証明書には重任と記載されます)。

上記2つの登記については、忘れずに行っていかなければなりません。もちろん理事長が任期途中で変更となった場合には、2年を待たずに変更の登記手続きを行う必要があります。

他にも、定款に記載されている内容のうち、登記事項証明書に登記されている内容を変更する場合には法務局における登記申請が必要となります。例えば、法人の名称を変更したとき、クリニックの所在地を変更したとき、または、法人自体の主たる事務所(所在地)を変更したときなどが挙げられます。これらの手続きは、主務官庁の認可や主務官庁に対する登記完了後の報告が必要なことが多いので、注意が必要です。反対に、定款に記載されていたとしても登記事項証明書に登記されていない内容については、法務局での登記手続きは必要ありません。例えば、社員・評議員や代表権のない理事や監事、決算時期などは登記事項ではなく、これらの事項を変更したとしても登記手続きは必要ありません。しかしながら、登記事項でなくとも、主務官庁の認可や、変更後に主務官庁に対する報告が必要な場合がありますので、忘れることのないようご注意下さい。

 

これら認可申請や報告書作成などについては行政書士においてお手伝いが可能です。当法人は、行政書士としても活動している司法書士も在籍していますので、登記手続きのみならず、行政への許認可手続き等についても、お気軽にご相談下さい。

 

判例紹介

嫡出性の有無による法定相続分差別

最高裁判所 平成25年09月04日 大法廷決定

事案の概要

平成13年7月に死亡したAの遺産につき、Aの嫡出である子Yらが、Aの嫡出でない子であるXらに対し、遺産分割の審判を申し立てたところ、原審は、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする民法900条第4号ただし書の規定(「本件規定」という)は憲法第14条第1項に反せず、これに従ってAの遺産の分割をすべきものとしたので、Xらが特別抗告した。

裁判所の判断

原決定破棄、差戻し。

決定要旨

<民法900条第4号ただし書の憲法第14条1項適合性について>
昭和22年民法改正以降の社会の動向、我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢及び我が国が批准した条約の内容、嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化等を総合的に考察すれば、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。そして、法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、上記のような認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。

以上を総合すれば、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべきである。

ただし、平成13年7月(Aの死亡時)から本決定までの間に開始された他の相続につき、本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。

コメント

本件規定は平成25年に改正されていますが、本件規定が、憲法第14条第1項の「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」に違反するのではないかが争われました。

最高裁は、決定の理由として、父母が婚姻関係になかったという子にとって自ら選択ないし修正する余地のない事柄(憲法第14条の「社会的身分」に類似する解釈)等を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されないこと、個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考え方が確立されてきたことなどを挙げています。

本件以外にも、私達の社会においては、夫婦同姓婚、ジェンダー、ヘイトスピーチ等、私達の社会は「法の下の平等」に関わる多くの問題を抱えています。

 

司法書士日記

~高校球児~

私の甥は高校球児です。いよいよ高校最後の大会が始まりました。

多くのスポーツ大会や文化行事が新型コロナウイルス感染症の影響により中止や延期される中、試合が開催され、グラウンドに立つことができることに家族としても感謝の気持ちでいっぱいです。

ちなみに、その妹である小学5年生の姪も兄を見習ってなのか、野球部に所属しており、男子生徒と一緒に練習をしています。今は男性女性関係なく、一緒のチームメイトとしてスポーツを行うことも珍しくないようです。

真っ黒に日焼けした姪っ子を見て、好きなことを伸び伸びとして、元気に成長してほしいと願うばかりです。

健軍事務所 司法書士 山﨑 順子

 

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