法エールVol.150

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ご挨拶

先月号で相続登記の義務化について説明させていただきましたが、何件かお問い合わせがありました。いつから始まるのかというお問い合わせが多かったのですが、施工日は、法律の公布日(令和3年4月28日)から3年以内となっていますので、まだ先になります。相続登記を義務化するにあたり、登録免許税の軽減等がこれから検討される予定です。詳細が決まりましたら情報提供させていただきます。

法改正でもう少しご説明させていただきますと、共有に関するものがあります。数人で不動産を共有していますと平時は問題ないのですが、その不動産の処分行為を行うときに問題が生じます。例えば、私道を数人で共有していたが、市に寄附したいと共有者の一部の方が思ったとしても、共有者の一人でも連絡が取れない場合、その私道を寄附することはできません。そのような場合は、その連絡が取れない方を探し出すか、行方不明の場合は利害関係人から不在者財産管理人という財産管理を行う人を家庭裁判所で選任してもらうかして手続きを進めなければなりません。しかし、今回の法改正で、裁判所の関与の下で、行方不明の共有者の持分の価額に相当する額の金銭を供託することにより、行方不明の共有者持分を取得することができるようになりました。これは公布から2年以内に施行されることになります。

今回の改正で、所有者不明の不動産に関する問題が解決することを願います。相続したくない不動産もあると思いますが、それに関する改正も行われておりますので、相続手続きでお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

債務整理について

これまで2回にわたって、債務整理手続きのご説明をさせていただきました。今回は、具体的な債務整理手続きのご説明をさせていただきます。

事例を基に説明いたします。

 

事例1

相談者(30歳)は、消費者金融や銀行等7社から総額300万円を借り入れています。一人暮らしで、手取りの給料が20万円、生活費が毎月16万円かかります。財産としては、登録から10年ほど経った軽自動車を所有しています。退職金はでません。保険は自動車保険のみに加入しています。

この場合、給料から生活費を差し引くと4万円となり、個人再生や任意整理手続きを利用した分割での支払いが可能ではないかとも思えます。しかし、実際は今後の生活環境の変化や突発的な支払い等が生じることも予想されることから、実際に返済に充てられるのは、1~2万円程度と考えます。したがって、本件は、個人再生や任意整理手続きを選択するのは難しく、自己破産を検討することになります。

 

事例2

相談者(40歳)は、消費者金融や銀行から総額400万円と住宅ローン3000万円を借り入れています。妻と10歳、7歳の二人の子供がいます。収入は、相談者の給与手取り25万円と妻の給与手取り15万円です。生活費と住宅ローンを引いたら、6万円ほど残ります。財産は、登録から8年ほど経った普通自動車、生命保険の解約返戻金10万円、退職金はなしです。住宅はオーバーローンで住宅ローンの方が不動産の価値よりも高いため財産価値はありません。

この場合、個人の民事再生手続きをとると、400万円の債務が100万円に免除され、3年間で月の支払が約3万円で済みます。住宅ローンもそのまま支払えるので、家も残せます。

 

まとめ

手続きを検討するにあたっては、生活の再建を第一に考えていただければと思います。債務整理手続きを取りますと、どの手続きでも信用情報に掲載されますので、今後数年間は借り入れができません。手続きを取られる方でよく聞くのが、債務整理をすると生活が楽になると思ったら、意外とお金が余らないというものです。借り入れができたときは、給与だけでなく、借入金も生活費の一部に充てていたのが、債務整理をすると借り入れができなくなるため、収入も減ってしまい、そのように思われるようです。手続きを選択する際に、家計収支等を作り、ご自分の生活費を見つめ直して、いくら払えるのかを慎重に検討する必要があります。

個人、会社を問わず、まずは速めに専門家に相談することをお勧めします。手続きを取らないにしても、どのような手続きがあり、何に注意すべきかを知ることで次の行動に移すことができます。当法人でもご相談をお受けいたしますので、お気軽にご相談ください。

 

判例紹介

別居中の父母間における監護者指定と姉妹分離の可否

東京高等裁判所 令和2年02月18日

事案の概要

X(夫)とY(妻)は平成20年に婚姻し、長女A(平成20年生)・二女B(平成23年生)・三女C(平成26年生)がいる。Yはパート勤務をしながら子供たちの監護を主に担い、会社員として働くXは、保育園への送迎等をしていた。

Yは、平成29年7月頃より、中学の同級生D男と連絡を取るようになり、時には子供たちを連れてD男と交遊することもあった。YはD男との関係でXともめるようになり夫婦関係は悪化、平成30年3月、X不在時に、子供たちを連れて別居を開始した。しかし、その翌日Aは自らの意思でX宅へもどり、以後Xと生活している。なお、X・Y別居後もXとB・C、YとAがそれぞれ面会する機会はもたれており、子の誕生日等には5人での交流もある。

XはYに対し、子供たちの監護者をXとし、B・Cの引渡しを求め(第1事件)、一方、YはXに対して、子供たちの監護者をYとし、Aの引渡しを求めた(第2事件)。原審は、第1事件につき、子供たちの監護者をXと定め、B・CをXに引き渡すようYに命じ、第2事件につき、Yの申立てを却下した。Yは即時抗告。

裁判所の判断

原審判変更。Aの監護者をX、B・Cの監護者をYと定め、X・Yのその余の申立てをいずれも却下した。

コメント

裁判所は、以下の事情を含め、父母・子双方の視点から「子の利益」に関する諸事情を総合的に判断した結果、AとB・Cの監護者を異にする判断を行いました。

  1. Aは、別居後、自らの意思でX宅に戻り、その後Xの監護下にあること、Yの異性関係や生活態度に不信を抱き、Yとの同居を拒否していること、Xの監護体制に具体的問題がないこと。
  2. B・Cは、同居中からYが主に監護を担当し、別居後もYと同居しており、監護状況に問題がなく、Yとの関係も良好で健やかに成長していること。
  3. AとB・C間の交流が頻繁におこなわれていること。

子の監護紛争において、これまでは、兄弟姉妹の関係も子の利益の判断基準に1つと捉え、兄弟姉妹の不分離が「原則」とも言われてきました。本決定でも、一般論としては、兄弟姉妹の不分離が望ましいとしながらも、具体的事案においては、子の福祉の観点から個別に子の監護者を指定する必要性を述べています。この兄弟姉妹の分離の決定は、その兄弟姉妹の関係が「子の利益」判断基準の考慮事項であることを再確認しつつも、未成年者ごとの具体的事情を精査し、子の健やかな成長発達・人格形成につき配慮したものと評価できます。

 

コラム

~散歩の楽しみ~

新型コロナウイルス禍により、外出が制限され、私達の行動範囲も縮小せざるを得ない状況が続いています。

そんな中、私は自宅周辺の散歩に最近、新たな楽しみを発見して喜んでいます。

帰宅後、ほんの30分程度でもと思い立ち、運動不足の解消のため、昨年秋から週末に時々歩き始めました。

ふだん何気なく車で通過している身近な場所でも、ゆっくりと歩き「こんにちは」の挨拶を交わすとき、何かしらほっと温かい気持ちになります。

日頃は気付かない、ちょっとした景色の変化に触れることで、季節の移ろいを感じたり、気分がリフレッシュできます。

なかなか名案が浮かばない課題を抱えているとき、歩みを進めながら、いいアイデアが生まれることも散歩の醍醐味です。

梅雨の季節も、今までだったら出かけるのが億劫でしたが、鮮やかな紫色のラベンダーは心地よい香りを漂わせ、明るい黄色のマリーゴールドには生命力を感じます。

優雅な風情のハナショウブ、様々な色に変化していく紫陽花、と楽しみは広がります。

これからも、好奇心をもって新鮮な視点で健康維持のためにも散歩を楽しんでいきたいと思っています。

行政書士法人ヒューマン・サポート 行政書士 上野 庸祐

 

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