法エールVol.149

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ご挨拶

5月14日に熊本県がまん延防止重点措置の適用を受けました。熊本県内の飲食店では、営業時間短縮となり、県内の施設は臨時休館するところがでております。私の知り合いの会社では、最近社員さんがコロナに感染したということで、感染予防の徹底を感じました。

そのような状況ではありますが、皆様にも影響する法改正がありましたのでお伝えします。それは、相続登記と住所変更登記の義務化です。

日本の大きな問題として、九州本土くらいの面積の土地が、所有者不明となっています。この原因はいろいろとあると思いますが、原因のひとつに相続登記や住所変更登記を行っていないということがあります。所有者不明の土地・建物は、近隣の方が迷惑を受けたり、公共事業等の足かせになったりします。私の事務所でも、隣の家が空き家になっており、白蟻が発生しているようで、大変困っているというご相談を受けたり、隣の土地が自分の名義かと思ったら全然知らない人の名義で、所有者と連絡も取れず、土地を売りたいが売れないとか、様々なご相談をお受けします。

今回の改正では、相続登記については、その取得を知った日から3年以内に相続登記をすることが義務付けられ、住所変更登記については、住所の変更日から2年以内に登記することが義務付けられます。登記費用の問題等もありますが、それに対しても登録免許税を軽減したりと負担感を減らす法改正を今後検討するということです。

本改正は、相続登記については、法律の公布日(令和3年4月28日)から3年以内、住所変更登記は、5年以内に施行されます。

今後、手続紹介のところで上記改正についてご説明しようと考えておりますが、お知りになりたい情報等がございましたら、お気軽にお近くの事務所にご相談ください。

 

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

債務整理について

前回、破産手続きと再生手続きについてご説明いたしました。今回は、任意整理手続きと特定調停手続きについてご説明します。

 

1. 任意整理手続き

任意整理手続きは、司法書士や弁護士が依頼を受け、債権者と交渉し、将来利息をカットし、元本のみを分割で支払うよう和解するものです。

過払いというのがありますが、これは出資法改正前(2010年)に借り入れをした分について、条件を満たせば発生するものです。利息制限法を超える金利(年利15~20%)を、出資法改正前は、貸金業規制法(現在は貸金業法)の要件を満たすことを条件にとることが可能でした。しかし、貸金業規制法の要件は非常に厳しく、実際はその要件を満たしていないことがほとんどでしたので、利息制限法を超える利息が過払いとして返還請求できたということです。

過払いは、2010年以前の借り入れについて発生する可能性があるものなので、それ以後の借り入れにつきましては、過払いは発生していません。

そのため、任意整理手続きでは、元本を減らすことはできず、現在払っている利息を無利息にし、長期分割で和解することしかできません。

 

2. 特定調停手続き

特定調停手続きは、任意整理手続きと同じような手続きですが、裁判所に申立をして、裁判所にて、債権者と債務者が分割返済の話をするというものです。話がつけば、裁判所が和解に関する調書を作成してくれますので、それに従って返済していきます。任意整理手続きとの違いは、裁判所が調書を作成しますので、もし返済が滞った場合で期限の利益を喪失した場合、債権者は強制執行の手続きをとることができます。

 

以上が、任意整理手続きと特定調停手続きに関してのご説明となります。次回、債務整理手続き全体についてのご説明を致します。

 

判例紹介

誠昇会北本共済病院事件

さいたま地判 平成16年09月24日

事案の概要

X(男性)はY病院に入社し、看護師資格の取得を目指し看護専門学校に通学しながら准看護師として勤務していた。同病院には男性准看護師5名が勤務しており、Aが一番上の先輩で、Xが一番下の後輩であった。男性准看護師の間では先輩の言動が絶対的とされ、AからXに対し、次のようないじめや嫌がらせがあった。そして、Xは、Aのこの言動が原因で自殺したものである。

  1. 勤務時間終了後も、Aらの遊びに無理矢理付き合わされたり、Xの学校試験前に朝まで飲み会に付き合わされた。
  2. Aの肩もみ、家の掃除、車の洗車などの雑用を一方的に命じられた。
  3. Aの個人的な用事のため車の送迎等を命じられた。
  4. 職員旅行において、AがXに一気飲みを強い、急性アルコール中毒となった。
  5. 忘年会においてAらがXに対し職員旅行におけるアルコール中毒を話題にして「あのとき死んじゃったら良かったんだよ、馬鹿」「うるせえよ、死ねよ」等と発言した。その後もXに対し何かあると「死ねよ」と告げたり、「殺す」などの文言を含んだ電子メールを送信した。
  6. 自殺直前、Xはからになった血液検査を誤って出したところ、Aにしつこく叱責された。同日のY病院外来会議で、Xの様子がおかしいことが話題になったところ、Aはその席で、Xにやる気がない、覚える気がないなどとXを非難した。

Xが自殺したことにより、遺族(両親)がAおよびY病院に対し、いじめによってXが自殺に追い込まれたとし、民事損害賠償請求を提起した。

裁判所の判断

1.A個人の損害賠償責任と損害賠償額

Aは、Xに対し、冷かし・からかい、嘲笑・悪口、他人の前で恥辱・屈辱を与える、たたくなどの暴力等の違法な本件いじめを行ったものと認められるから、民法709条に基づき、Xが被った損害を賠償する不法行為責任がある。Aは、Xが自殺を図るかもしれないことを予見することは可能であったと認めるのが相当である、として、Aに対し慰謝料として1,000万円の損害賠償額を遺族に支払うように命じた。

2.Y病院の債務不履行責任

Y病院は、Xに対し、職場の上司及び同僚からのいじめ行為を防止して、Xの生命及び身体を危険から保護する安全配慮義務を負担していたと認められる。したがって、Y病院は、民法415条に基づき、上記安全配慮義務違反の債務不履行によってXが被った損害を賠償する責任がある。

ただし、Y病院がAらの行った本件いじめの内容やその深刻さを具体的に認識していたとは認められないし、いじめと自殺との関係から、Y病院は、Xが自殺するかもしれないことについてまで予見可能であったとまでは認めがたい、とし、Xが本件いじめによって被った精神的苦痛に対する慰謝料のうち500万円の限りにおいて、Aと連帯して損害賠償責任を負うよう命じた。

コメント

本判決は、会社が労働者に対して負う安全配慮義務の中に、職場の上司及び同僚からのいじめ行為を防止して、労働者の生命及び身体を危険から保護する義務が含まれることを示しました。会社及び管理者たる上司は、職場内における先輩・同僚間のいじめの存在を軽視・無視することは許されず、上司等が労働者間の違法ないじめ行為を現認していた場合はもちろん、本件のように職員旅行や外来会議などでのやり取りを基に違法ないじめが認識可能とされた場合も、会社側に法的責任が生じうる点に注意が必要です。したがって、会社や上司等は、職場におけるいじめを軽視せず、いじめ等の兆候があれば、早めに相談に応じるなどして、いじめ防止に取り組むなどの対応を講じていく必要があります。

 

コラム

~熊本から聖火リレー開始~

楽しみにしていた5月のゴールデンウィークは、コロナの感染者数が増えてきているため、自宅で過ごしていました。

毎年この時期は、司法書士試験の勉強をしていて、今年の試験が予定通りに実施されれば7月4日にあります。

あれもこれも勉強しなければ!と、気持ちがソワソワと落ち着きません。

そんな大型連休最終日の5日に、東京オリンピックの聖火リレーが熊本からスタートしました。

豪雨で被災した八代市を出発し、翌日の6日は熊本地震で甚大な被害のあった益城や阿蘇など各地を巡ります。

沿道での応援などはコロナ感染症対策のためできませんが、ニュースで流れるランナーのみなさんの笑顔に元気をもらいました。

健軍事務所 荒木 知恵

 

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