法エールVol.148

PDF版

ご挨拶

2021年のプロ野球が開幕しました。去年は、開幕が3カ月遅れ、無観客試合があったり、試合数が減少したりと異例ずくめでした。今年は、観客数を減らし、延長なしと例年とは異なりますが、3月に開幕できたことは大変喜ばしいことではないかと思います。

さて、話は変わりまして、最近債務整理のご相談が増えております。コロナにより収入が減ったり、会社の売上げが減少したりして、借入が増加したことが一因となっています。そして、相談を受けていて気になることがありました。相談者の中に、数名ですが、東京・大阪等の県外の弁護士・司法書士に相談していた方がいらったのです。地元の弁護士・司法書士に相談すると、周りの人に知られてしまうかもしれないという不安があったようです。しかし、相談者の方は、県外の弁護士等に依頼しようとしたものの報酬が高かったり、債務整理の方針に納得できなかったりして、弊法人にご相談に来られました。実際、弁護士・司法書士の報酬額を聞くと非常に高く、債務整理の方針も、返済できないのに任意整理(月々支払う手続き)を選択していたりと、2次被害になりかねない状況でした。

県外の弁護士・司法書士がすべてこのような手続きを行っているとは思いませんが、県外の弁護士・司法書士に相談するのであれば、地元の弁護士・司法書士にも合わせて相談をされてみてはどうかと思います。弁護士会、司法書士会、法テラスでは親切に相談の流れ等を説明してくれますし、紹介もあると思います。地元の方がこのような被害に遭われていることが大変に悲しく、遺憾に思います。周りの方でお困りの方がいらっしゃいましたら、まずは地元の専門家に相談したらとアドバイスしていただければ幸いです。

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

債務整理について

最近、債務整理のご相談が増えております。コロナ禍における経済状況の悪化が原因ではないかと思われます。債務整理とは、破産、再生、任意整理、特定調停等の手続きの総称であり、借入金の返済等が難しい方がとるものです。今回は、債務整理手続のご説明をさせていただきます。

 

1. 破産

破産手続きは、今後の返済が困難な状況の個人または会社が、裁判所に申立をして、債務を払わなくてよくする手続きです。財産があれば、金銭に換価して、債権者へ配当します。

破産手続きは、マイナスなイメージがあり、相談をお受けしていると、少しでも払っていきたいので破産はしたくないという方がいらっしゃいますが、債務整理手続きは、生活の再建が第一の目的でありますので、返済が難しい場合は、破産手続きを取った方がいいと思います。

個人の自己破産手続きをとりますと、警備員や保険外交員等一定の職業に就くことが、免責手続きが確定するまでできません(手続が終了すればその職業に就くことができます。)。また、信用情報(ブラックリスト)へ登録されますので、今後一定期間の借入が難しくなります(これは債務整理手続きのどの手続きを選択しても同じです。)。あと、官報に個人情報が記載されます。

個人の自己破産手続きは、破産管財人が選任されるかによって、裁判所に納める予納金が変わってきます。破産管財人が選任される場合、予納金は23万円からになります。

会社の破産手続きの場合は、破産管財人が必ず選任されます。予納金は、50万円からになります。

なお、予納金の額は熊本地方裁判所の取扱いであり、各地方裁判所によって異なります。

 

2. 個人の民事再生手続き

民事再生手続きには、法人を対象とする通常の民事再生手続きと、個人の方を対象とする個人債務者の民事再生手続きがあります。今回は、個人の民事再生手続きについてご説明します。

個人の民事再生手続きは、債務を一部免除してもらうことで元本を減らして、その金額を原則3年で分割して支払っていくというものです。債務の額が、100万円以上から500万円未満の場合は100万円を、債務の額が500万円以上1,500万円以下の場合は、その債務の5分の1を3年間で支払うことになります(ただし、所有の財産の価格がその額以上の場合はその金額を支払うことになります。また、給与所得者等再生手続きという手続きをとる場合は、可処分所得の2年分以上である必要があります。)

個人の民事再生手続きは、住宅ローンをお持ちの場合に、住宅を手放さずにそのまま住宅ローンを支払うことができるので、破産であれば住宅を手放す必要が生じる場合でも、再生であれば手放さなくて済むことがあります。

 

今回は、破産と再生についてご説明いたしました。次回は、任意整理手続きと特定調停についてご説明します。

 

判例紹介

国公有地の使用料免除等と政教分離

最高裁判所大法廷 令和03年02月24日判決

事案の概要

那覇市(以下「市」)の管理する公園内に、儒教の祖である孔子等を祀った久米至聖廟(以下「本件施設」)を設置することを市が許可した上で、その敷地の使用料(公園使用料)の全額を免除した市長の行為が政教分離原則(憲法20条3項)に違反し、無効であるかどうかが争われた。

裁判所の判断

公園使用料の免除が、本件施設の性格や当該免除をすることとした経緯等の諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えて、政教分離規定に違反するか否かを判断するに当たっては、本件施設の性格、当該免除をすることとした経緯、当該免除に伴う国公有地の無償提供の態様、これらに対する一般人の評価等、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すべきものと解する。

本件施設の大成殿は、本件施設の本殿と位置付けられており、その内部には孔子像等が配置され多くの人々による参拝を受けており、その外観等に照らして、神体又は本尊に対する参拝を受け入れる社寺との類似性があるということができる。本件施設については,一体としてその宗教性を肯定することができることはもとより、その程度も軽微とはいえない。

本件施設の観光資源等としての意義や歴史的価値を考慮しても、当該免除は、一般人の目から見て、市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し、これを援助していると評価されてもやむを得ないものといえる。

以上のような事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すると、当該免除は、市と宗教との関わり合いが、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとして、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に該当すると解するのが相当である。

憲法第20条3項
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

コメント

今回の判決は、那覇市の孔子廟を個別に検討した末に違憲判断を導いており、施設に宗教的性格があっても、同時に歴史的・文化財的な建造物として保護の対象であったり、観光資源や国際親善などの意義があったりすれば、「公有地の使用料が免除される場合もあり得る」と指摘されている点からしても、今回の判決の影響は限定的とみられます。

 

司法書士日記

~72歳の司法書士~

司法書士として40年を超えました。69歳で、一時司法書士を廃業しました。

公務員を経て、司法書士試験に合格し、司法書士会の役員、家庭裁判所の調停委員・参与員、学校法人の役員、社団法人の評議員等に就任、お役に立てればと思いそれぞれ務めました。

家庭では、子供3人の誕生により、世代を繋ぐことができ、子供らが成人して責任を負うことがなくなり、その後社会人になって安堵しました。

70歳で、司法書士法人である弊社の社員になりました。

71歳で、新たな土地に家を建て、現在その地に居住しております。この地に約3坪程度の庭を造り、草木を植え、野菜を育て、ときに小さいトマトやらキュウリが食卓に載るようになりました。

お話を聞く時間も、心の余裕もできました。

弊社には、5人の司法書士と事務員7人がいて、何時でも業務ができます。

相談にも常時お答えすることができるように、体制が整えてあります。

一人で悩むことはありません。解決方法はあるものです。話をしてみてはいかがでしょう。

お力になれればと思っております。

清水事務所 司法書士 小山 愼一郎

 

お知らせ

寄り添う支援で笑顔ふたたび

当法人は、「NPO法人身近な犯罪被害者を支援する会」との連携を図っています。
ご質問、ご相談等ございましたら、当法人もしくは下記までご連絡ください。
TEL 096-341-8222 FAX 096-341-8333

命の絆・大切に、輝く命・永遠に

当法人は、「一般社団法人命の尊厳を考える会」との連携を図っています。
ご質問、ご相談等ございましたら、当法人もしくは下記までご連絡ください。
TEL 096-337-1251 FAX 096-337-3355

司法書士法人ヒューマン・サポート法律支援センター

当法人では、継続的な相談にも対応できるよう、顧問契約の締結を行っています。
会社・個人問いません。詳しくはお近くの事務所までお気軽にお問い合わせください。

PDF版