法エールVol.147

PDF版

ご挨拶

先日、熊本市西区谷尾崎の梅林公園に梅の花を見に行きました。朝早かったので、見物の方は数人しかおらず、ゆっくりと観賞することができました。谷尾崎梅林公園には、梅の木が300本ほどあり、種類も20種類ほどあるとのことで、様々な梅を楽しむことができます。例年であれば、この時期は梅まつりが行われており、大変賑わうのですが、今年はコロナの関係でまつりが中止となり、少し寂しい状況です。

谷尾崎梅林公園の歴史は古く、加藤清正が戦のため常備する軍用梅を栽培するために、この地に梅を植えたということです。宮本武蔵もここで修行しており、宮本武蔵が座禅をしたとされる石もあります。宮本武蔵もこの梅を眺めていたと思うと、感慨深くなります。

コロナ禍の中、なかなか県外にいけない状況もありますが、身近に目を向けてみると、意外な観光スポットがあったりと、新たな発見があります。ストレスもたまりやすい状況だと思いますので、花見等で気分をリフレッシュしてみてはいかがでしょうか。

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

表題部所有者不明土地問題

本年1月号より、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地、いわゆる「所有者不明土地」が生じる要因の一つである「表題部所有者不明土地」の問題と、その問題を解消するための法律(表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律(以下、「法」といいます。)が施行されたことに伴い、その内容ついてご紹介しています。

3回目となる今回は、法により新しく創設された制度の一部について、ご説明致します。

 

1. 特定不能土地等管理者による管理

表題部所有者不明土地について、登記官や所有者等探索委員による表題部所有者の調査の結果、登記官は、(ア)表題部所有者として登記すべき者がいるときは、その者の氏名又は名称及び住所を、(イ)表題部所有者として登記すべき者がいないときは、その旨と理由を登記することは、前回ご説明しました。

このうち、表題部所有者として登記すべき者がいない土地(所有者等を特定することができなかった旨の登記がある土地)のことを「所有者等特定不能土地」といいます。この所有者等特定不能土地の取扱いについても新たな制度が創設されました。

所有者等特定不能土地について、裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、特定不能土地等管理者による管理を命ずる処分(以下、「特定不能土地等管理命令」といいます。)を行うことができます(法19条1項)。

特定不能土地管理者(以下、「管理者」といいます。)が選任された場合は、対象土地の管理及び処分をする権限は、管理者に専属します。管理者は、(1)保存行為(土地が不法に占拠されているときに明け渡しを求めることなど)及び(2)対象土地の性質を変えない範囲内において、利用または改良をする行為(土地を一時的に駐車場として貸すことなど)の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可が必要となります(法21条)。例えば、繁茂した草木の伐採を行う場合や、土地の買い取りに応じて売買契約を行う場合は、裁判所の許可が必要になります。なお、裁判所の許可を得て売却を行った場合、その売却代金は所有者のために供託されることになります。

 

2. 施行日について

登記官に対する所有者の探索のために必要となる調査権限の付与や、所有者等探索委員制度を創設などについては、令和元年11月22日から施行されており、裁判所の選任した管理者による管理を可能とする制度については、令和2年11月1日から施行されています。具体的にどの土地が調査の対象になっているか等は、各法務局又は各地方法務局のホームページにて公開されていますので、ご参考下さい。

(外部リンク)熊本地方法務局「表題部所有者不明土地に関するお知らせ」

 

今後、所有者不明土地問題の解消に向け、相続登記の義務化等、民法その他の法律の改正も検討されています。これからも引き続き、これらの法改正や情報について、お伝えしていきたいと思います。

 

判例紹介

推定相続人廃除申立却下審判に対する抗告事件

大阪高等裁判所 令和01年08月21日決定

事案の概要

B(昭和46年生)は、被相続人(昭和19年生)の長男であり、平成16年から、被相続人が経営する会社で働くようになった。Bは、平成19年5月頃、被相続人を殴打し、平成22年4月、被相続人を突き飛ばし転倒させた(肋骨骨折、入院)。さらに、Bは、平成22年7月、被相続人の顔面を殴打し、被相続人は鼻から出血する怪我を負った。

被相続人は平成23年3月29日、公正証書遺言において、Bが、被相続人に虐待を繰り返し、また、重大な侮辱を加えたとして、Bを被相続人の推定相続人から廃除するとの意思表示をした。

本件は、被相続人の遺言執行者であるAが、遺言に基づき、Bを推定相続人から廃除することを求めた事案である。原審判が申立てを却下したため、Aが抗告した。

※廃除・・・推定相続人が被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えた場合、又は推定相続人にその他の著しい非行があった場合、それらが相続的共同関係を破壊する程度に重大であったときに、推定相続人の相続権をはく奪する制度(民法893条(※))。

裁判所の判断

推定相続人の行った言動が廃除事由に当たるといえるためには、被相続人の意向や推定相続人による言動の外形だけではなく、そのような言動がされるに至った原因や背景を考慮した上で、推定相続人からその相続権をはく奪するのが社会通念上相当と認められることが必要と解すべきであり、Bの被相続人に対する一連の暴行は、虐待又は著しい非行に当たり、社会通念上、Bから相続権をはく奪することとなったとしても、やむを得ないものと言うべきである。よって、原審判の決定を棄却し、Aの抗告を認容した。

コメント

廃除は、被相続人の恣意によってなされるのを防止するため、裁判所が関与する仕組みになっています(民法893条)。裁判所は廃除請求には慎重な態度を示す傾向にあります。原審においても、Bの暴行の背景には、被相続人の言動がその暴行を誘発した可能性を否定できないとして、廃除請求を却下しています。家族に関する事情は、外部からは窺い知れないものがあるため、今回のBの暴行の原因や背景を考慮するにしても、正確に捉えるには限界があります。仮に被相続人の言動にBを暴行に走らせる原因があるにしても、当時60歳を超えていた被相続人に暴力を振るうことをもって対応することが許されないことはいうまでもありません。年々、暴力に対する法的・社会的評価は厳しくなっていることから、本件の裁判所の判断は、近年の社会的評価に即した妥当な判断だと言えるでしょう。

※(遺言による推定相続人の廃除)
第893条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

 

コラム

~料理レシピ~

実家の母は、「これといって財産はないけどこれが財産たい」と言い、一年前から料理レシピを作成しています。

普段は目分量で料理をしている母ですが、このレシピを作る際にはきちんと調味料を測って入れているそうです。

また、そのレシピには、熊本弁で一言「誰も作らんどばってん」や「こらぁうまかけん、作ったが良かよ」など、自由なコメントが書いてあります。

私の娘たちもおばあちゃんの料理が大好きです。

娘たちにもおばあちゃんの料理をたくさん受け継ぐことができるよう、これからも美味しい料理のレシピと楽しい熊本弁コメントで、ノートがいっぱいになることを願っています。

清水事務所 大島 文恵

 

お知らせ

寄り添う支援で笑顔ふたたび

当法人は、「NPO法人身近な犯罪被害者を支援する会」との連携を図っています。
ご質問、ご相談等ございましたら、当法人もしくは下記までご連絡ください。
TEL 096-341-8222 FAX 096-341-8333

命の絆・大切に、輝く命・永遠に

当法人は、「一般社団法人命の尊厳を考える会」との連携を図っています。
ご質問、ご相談等ございましたら、当法人もしくは下記までご連絡ください。
TEL 096-337-1251 FAX 096-337-3355

司法書士法人ヒューマン・サポート法律支援センター

当法人では、継続的な相談にも対応できるよう、顧問契約の締結を行っています。
会社・個人問いません。詳しくはお近くの事務所までお気軽にお問い合わせください。

PDF版