法エールVol.145

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ご挨拶

新年明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、弊法人では、毎年、年度方針発表大会を行っております。法人と個人で今年は何を行うのか目標を設定し、発表を行います。弊法人の今年の年度方針は、「立志照隅自己の美徳を輝かせ問題課題を克服することで社会を明るく照らす」としました。今年は、コロナ禍の中、社会がどのように変容するのか不透明な部分がございますが、社員一人一人が自分自身の美徳(強み)を再認識して、その美徳をより輝かせ、法人全体が成長していき、最終的には、社会を明るく照らしていけるようになろうというものです。多様なご相談に対応できるだけの知識と人間力を高め、より魅力的な人間となれるように社員一同精進してまいります。

法エールは、今年で12年目を迎えます。毎回、法エールをお読みいただきましてありがとうございます。少しでも有益な法的情報を提供すべく今年も取り組んで参りますので、何卒宜しくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

 

表題部所有者不明土地問題

昨今の報道などにおいて、我が国では、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地、いわゆる「所有者不明土地」が全国的に増えていることが取り上げられています。所有者不明土地が生じる要因としては、長期間相続登記手続きがなされていなかったり、所有者が長期間海外在住でその後の所在が分からなくなったり、また、そもそも、登記事項証明書(登記簿謄本)の記載が正確でなかったために手続きができないなどが挙げられます。

そこで今回から、その要因の一つである「表題部所有者不明土地」の問題と、その問題を解消するための法律(表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の概要)についてご紹介いたします。

 

1. 表題部所有者不明土地とは

法務省のホームページによると、旧土地台帳制度下における所有者欄の氏名・住所の変則的な記載が、昭和35年以降の土地台帳と不動産登記簿との一元化作業後も引き継がれたことにより、表題部所有者(所有権の登記(権利部)がない不動産について、登記記録の表題部に記録される所有者)欄の氏名・住所が正常に記録されていない登記となっている土地となり、それがそのまま解消されていない土地が全国に多数存在しているとされています。その割合としては、約1%存在しているとの調査結果です。

なお、変則的な記録の例としては、以下のような記録が挙げられます。

  • 住所の記載がなく、氏名のみ
  • 住所が途中まで(大字〇〇)の記載となっており、地番の記載がない
  • 共有者の名前が記載されていない(A外〇名)

 

2.表題部所有者不明土地の問題点

表題部所有者不明土地は、いわゆる所有者不明土地の中でも、氏名や住所の記録が無いため、戸籍や住民票等による所有者調査の手掛かりがなく、所有者の発見が特に困難となっています。このため、自治体における用地取得や民間取引において相手方が全く分からず、これらの手続きの大きな阻害要因となっています。

また、表題部所有者不明土地を解消するためには、歴史的な文献(例えば、お寺の過去帳や地域に関する歴史書等)を調査したり、その土地の経緯を知る近隣住民からの聞き取りを行うなどにより所有者を特定する必要があります。しかし、今後歴史的資料の散逸や過疎化等地域コミュニティの衰退により、所有者の特定がますます困難となるおそれがあります。

 

「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」の成立

そこで、そのような土地に対応するため、令和元年5月17日に「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」が成立し、同年5月24日に公布されました。

この法律は、権利関係の明確化と適正な利用を促進するという観点から、以下の制度が創設されました。

  1. 表題部所有者不明土地について所有者の探索の制度(令和元年11月22日施行)
  2. 探索の結果を登記簿に反映させるための特例(令和元年11月22日施行)
  3. 所有者等を特定することができなかった土地の管理制度(令和2年11月1日施行)

 

次回からは、これらの制度についてご説明いたします。

 

判例紹介

保有個人情報開示請求事件

最高裁判所第一小法廷 平成31年03月18日判決

事案の概要

Aは、平成15年8月29日、B(銀行)に普通預金口座を開設し、その際、Bに印鑑届書を提出した。

Aは、平成16年1月28日に死亡した。その法定相続人はAの子であるCほか3名であった。

Aの平成15年8月29日付けの遺言書による遺言は、本件預金口座の預金のうち1億円をCに相続させるというものであった。

Cは、他の共同相続人とのAの遺産をめぐる紛争に関して、Aの印鑑届出書の開示を受ける必要があるとし、当該印鑑届書の情報は、個人情報の保護に関する法律(以下、「法」という。)法2条7項に規定する保有個人データに該当すると主張して、法28条1項に基づき、Bに対して当該印鑑届書の写しの交付を求めた。

原審は、本件印鑑届書の情報は、Aの相続人等として上記預金契約上の地位を取得したCに関するものとして「個人に関する情報」に当たると判示した。

これに対して、Bが上告したのが本件である。

事案の争点

ある情報が、保有個人データに該当するというためには、少なくとも開示請求者に関するものとして法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たることが必要であるところ、本件では、本件印鑑届書の情報がCに関するものとして、上記「個人に関する情報」に当たるか否かが争われている。

裁判所の判断

破棄自判(Bの勝訴)。

ある情報が特定の個人に関するものとして法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるか否かは、当該情報の内容と当該個人との関係を個別に検討して判断すべきである。

したがって、相続財産についての情報が被相続人に関するものとして生前に法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるものであったとしても、そのことから直ちに、当該情報が当該相続財産を取得した相続人等に関するものとして「個人に関する情報」に当たるということはできない。

本件印鑑届書にある銀行印の印影は、AがBとの銀行取引において使用するものとして届け出られたものであって、CがAの相続人等として本件預金口座に係る預金契約上の地位を取得したからといって、上記印影は、CとBとの銀行取引において使用されることとなるものではない。

コメント

Cとしては、Aの預金口座に関する権利を相続した以上、その預金口座についての情報は、全てCの個人情報になると考えていたと思われますが、最高裁判所は、CがAから相続した預金口座についての情報であっても、その情報が、Cと金融機関との間の取引で使用される等の事情が無ければ、それはあくまでAの個人情報であって、Cの個人情報ではないと考えたのです。

当法人では、相続登記や遺産承継業務なども承っております。詳しくは、お近くの事務所までお問い合わせください。

<個人情報の保護に関する法律>

この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

(以下、略)
第28条1項本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データの開示を請求することができる。
(以下、略)

 

司法書士日記

現在、我が家では将棋ブームが到来しており、4 歳6 歳の息子と毎日将棋で遊んでおります。

私は今まで将棋の駒の動かし方すら知らなかったため、一からルールを覚えているところです。

駒を何とか動かせるようになっても、先の手を読むということがとても難しく、一向に強くなりません。

しかし、いくら初心者とはいえ、幼児に負けるわけにはいきません。

息子達に闘いを挑まれては、親の威厳を保つべく、四苦八苦している毎日です。

龍田事務所 司法書士 野口 芽久美

 

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