法エールVol.142

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ご挨拶

菅政権は、デジタル化を政策目標に掲げ、その一環として、行政庁の「はんこ」をなくす取り組みを始めました。民間におきましても、新型コロナウイルス感染拡大により、テレワークが普及しており、「はんこ」を押すために出社するのは非効率的であるとして、「はんこ」制度を廃止する企業が増えてきているようです。

「はんこ」は、古代メソポタミアや古代エジプトで使用されていたとされ、世界的に大昔から使用されていたものだということです。日本においては、最古の「はんこ」は、漢委奴国王の金印とのことで、その後、公的な場で印を押すようになったようです。民間では、江戸時代に「はんこ」を押すようになり、実印を登録する制度もこのときから作られたということです。

このように長い歴史を持つ「はんこ」ですが、脱「はんこ」の流れは加速しそうです。

司法書士は、法務局や裁判所へ提出する書類の作成や契約書等の法的文書の作成を行っておりますので、その文書には、原則「はんこ」を押さなければなりませんが、法務局にオンラインで登記の申請をする際には、申請情報に電子署名をすることとし、「はんこ」を押すことはありません。データで作成した契約書等でも当事者双方が電子署名を取得し、その契約書データに電子署名すると、その契約書等は真正に作成されたものとして扱われます(電子署名及び認証業務に関する法律第3条)。

現代は、「はんこ」から電子署名に移行する過渡期にあたるように思います。今後は、さまざまな書面がデジタル化され、電子署名で決済されていくのではないでしょうか。コストの面で、電子署名を導入することが障害となっているようなこともあるようですが、今後、よりデジタル化が進むことにより多くの個人・法人が電子署名を取得することが増えれば、より安いコストで電子署名を取得することができるようになるかもしれません。弊法人も電子署名を利用している者として、今後の脱「はんこ」の流れを注視していきたいと思います。

それでは、今月の法エールよろしくお願いいたします。

(代表社員 井上 勉)

 

動物愛護管理法について

現在、日本でペットとして飼われている犬や猫の数は1850万頭を超え、ペット産業は今や1兆5000億円の市場にまで巨大化しています。ペットは飼い主にとって「家族」と呼ぶべきかけがえのない存在となっています。その一方で、安易なペット購入や多頭飼育などにより、年間約3万8000頭が殺処分されており、また悪質なペットビジネス業者が存在することも問題となっています。

そのような中、令和元年6月に動物愛護に関する基本的な考え方や、動物の飼い主の責任などが定められた「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)が改正されました。

今回から、動物愛護管理法の概要についてご紹介いたします。

 

1. 基本原則

動物愛護管理法は、すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めています。

 

2.動物の飼い主等の責任

動物の飼い主は、動物の種類や習性等に応じて、動物の健康と安全を確保すること、及び動物が人の生命等に害を加えたり、迷惑を及ぼすことのないように努めなければなりません。また、みだりに繁殖することを防止するために不妊去勢手術等を行うこと、感染症の予防のために必要な注意を払うこと、動物が自分の所有であることを明らかにするための措置を講ずること等に努めなければなりません。

なお、令和元年6月に改正された動物愛護管理法において、販売される犬及び猫に対し、マイクロチップの装着、所有者情報の登録等が義務化され、この規定は令和4年6月までに施行されるとされています。

環境省のホームページにおいては、動物の飼い主向けに以下の内容が掲載され、注意喚起を行っています。

  1. 動物の習性等を正しく理解し、最後まで責任をもって飼うこと
  2. 人に危害を加えたり、近隣に迷惑をかけることのないようにすること
  3. むやみに繁殖させないようにすること
  4. 動物による感染症の知識を持つこと
  5. 盗難や迷子を防ぐため、所有者を明らかにすること(マイクロチップの装着等)

次回は、これから動物を飼おうとする人向けの注意喚起や、動物の飼養及び保管等に関するガイドラインなどにつきご紹介いたします。

 

判例紹介

介護付有料老人ホームの通常使用について

東京地方裁判所 平成30年11月05日判決

事案の概要

A(入居当時80歳代)と介護付有料老人ホーム事業を運営するYは、2013年9月、介護付有料老人ホームに入居してYから介護サービスを受ける入居契約を締結した。その際、XはAの身元引受人および入居一時金残金の受取人になった。契約内容は、おおむね次のようである。①入居一時金を650万円とし、入居時に210万円を償却し、残金440万円を入居の翌日から1825日(60カ月)で均等償却する。②月額利用料(管理費、食費、家賃相当額等)を14万円とする。③契約終了時に、入居時償却分を控除した入居一時金残金440万円から、①の入居期間による償却および債務を控除した金員を、契約者または入居一時金残金の受取人に返還する。④入居者は目的施設および備品について、汚損、破損、もしくは滅失その他内装を変更した場合には、入居者の選択に従い、直ちに自己の費用により原状に復するか、または、Yが別に定める代価を支払うものとする。ただし、入居者の責めに基づかない場合は、この限りではない。

約3年間の入居後、Aは死亡した。Xはその4日後にAの荷物を搬出し、本件居室を明渡した。Yは、本件居室には、Aによるおむついじりや弄便(ろうべん)のため臭気および汚損等が残っており、通常使用による劣化を超えた毀損等が生じていると主張し、その原状回復のために、①「居室清掃代」約5万円②「壁紙貼り替え費用」約13万円の合計約18万円をXの負担とし、入居一時金からこの負担分を控除して、入居一時金残金として約183万円を支払った。これに対して、Xは、臭気および汚損は通常使用を超えるものには当たらない、もしこれを入居負担とする条項であるとすれば、消費者契約法10条により無効であると主張して、Yに対して、Yが控除した約18万円の支払いを求めて本件訴訟を提起した。

裁判所の判断

本件のような介護付有料老人ホームでは、おむついじりや弄便のため臭気および汚損は通常使用を超えるものには当たらない、仮に本件入居契約24条が、通常損耗についてまで入居者に対して原状回復義務を負わせる旨定めるものだとすると、民法上の賃貸借契約の終了に伴って賃借人が負担する原状回復義務の負担を超えるものであり、民法1条2項の規定に反して消費者の利益を一方的に害するから、消費者契約法10条により無効というべきである、として、Yに対し控除した約18万円の返還を命じた。

コメント

現在、65歳以上の人口が28%を超える超高齢社会において、介護付有料老人ホームは高齢者の方の最期の住処となることも多いかと思います。身体機能の低下や認知症の進行などに対応するためには、そのような施設にて生活する中で、おむついじりや弄便行為をしてしまう高齢者の方もいます。

それら行為による臭気や汚損等が通常使用を超えるものか否かが争われた裁判です。裁判所は、通常の使用を超えるものには当たらないと判断しました。介護付有料老人ホームにおいては、要介護認定を受けている高齢者の方が入居されることや、入居者の認知症の症状も進行することも予測されることから、妥当な判断かと思われます。

 

司法書士日記

最近はできるだけ昼食には手作り弁当を持参するようにしています。

凝ったお弁当は作れませんので、ご飯と野菜炒めと卵焼きなどの簡単なおかずで済ませています。

お弁当を持参するようになって、改めて玄米酵素ご飯にハマっています。

玄米酵素ご飯とは、玄米と小豆を一緒に炊いて、3日程炊飯器の中で寝かせたご飯のことをいうのですが、3日ほど寝かせると、粘り気もでてきて、見た目も赤飯のような色になってきます。

食感ももちもちで、個人的には白米よりも気に入っています。

玄米なので食物繊維も豊富ですし、酵素の働きにより、体の新陳代謝もアップするので、美肌効果も期待できるとのこと!

白米を炊くのとほとんど同じで、体にもいい効果があるので、ぜひお試しください。

健軍事務所 司法書士 山﨑 順子

 

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