法エールVol.137

PDF版

ご挨拶

コロナウイルス感染に伴う緊急事態宣言が解除され、感染前の日常に少しずつ戻ってきておりますが、これを機に働き方を変えようとされている会社様があります。例えば、自宅で仕事をするテレワークは、国も推奨しており、導入を検討されている会社様もあるのではないかと思います。

先日、中小企業の経営者の集まりで、テレワークの勉強会を開催しました。実際にテレワークを導入している経営者の方に講師をしていただきました。勉強会はテレビ会議を利用し、40名ほどの参加でしたが、違和感なく講義を聞くことができました。私は事務所のパソコンから参加したのですが、移動時間がないので街中の会議室に行くよりも往復で1時間くらいの時間短縮になりました。

今回講師をして頂いた経営者の方は、コロナ以前からテレワークを導入していたということで、付け焼刃ではない本格的なテレワークでした。テレワークといっても、自宅にいて会社にいるのと同じような環境整備をされており、仕事としては何も問題はないということでした。この会社は岡山県に本社のある中小企業なのですが、岡山県の就職したい会社のランキングで4位になったとのことです。上位3社が地銀や新聞社ということで、なぜこの会社に就職したいのかに大変興味を持ちました。講師いわく、その理由として、テレワークの導入により、女性が出産等あっても働き続けることができる環境にあるというのが大きいのではないかということでした。テレワーク導入による副産物だったということです。

これから大変厳しい社会情勢になることが予想されますが、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えて、改善できるところは改善し、よりよい社会となるように、弊法人も微力ながら皆さまのお役に立てるよう、精進してまいります。

弊法人におきましては、会社や個人の破産手続きに関するご相談を受け付けております。借金で命を落とす事のないよう、周りの方でお困りの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談いただきますようお願いいたします

それでは、今月の法エールよろしくお願いいたします。

(代表社員 井上 勉)

 

会社法にまつわる諸手続き

今回は、会社法の手続きの2回目です。1回目は役員変更についてご説明させていただきましたが、今回は、種類株式についてご説明したいと思います。法エールでも以前ご説明させていただきましたが、最近、種類株式の相談が増えておりまして、改めて種類株式についてご説明したいと思います。

種類株式については、会社に出資をしてもらうにあたり、議決権のない株式や配当優先株式を発行することで、銀行等金融機関からの融資に代わる資金調達方法として相談をいただいたり、事業承継に関しては、属人的な株式にしたいというご相談を受けたりします。

種類株式は、平成18年5月に会社法が施行された際に、新たにその発行が認められるようになりました。施行から14年経過し、少しずつですが、種類株式を設定する場面が増えてきています。便利な制度ですので、検討されてもいいのではないかと思います。

 

【種類株式の内容について】

1. 剰余金配当優先株式等
剰余金の配当について優先または劣後する株式。
2. 残余財産分配優先株式等
残余財産の分配を優先又は劣後する株式。
3. 議決権制限株式
議決権を制限する株式。
4. 譲渡制限株式
株式の全部又は一部の譲渡を制限する株式。
5. 取得請求権付株式
株式が会社に対して自分の株式を取得するように請求できる株式。
6. 取得条項付株式
会社が、株主の同意なしに一定の事由が生じたことを条件として、株主の有している株式を取得することができる株式。
7. 全部取得条項付株式
2つ以上の種類の株式を発行する会社において、そのうちの1つの種類の株式の全部を株主総会の特別決議をもって、会社が取得することができる旨の定款の定めがある株式。
8. 拒否権付株式
ある事項について、拒否権付株式の株主の承認を要するとする旨を定めることができる株式。
9. 役員選解任権付株式
役員選解任権付株式の株主の総会(=種類株主総会)の決議で取締役や監査役を選任することができる株式。

例えば、上記の1.と3.の種類株式を組み合わせて、株主総会で議決権の行使はできないものの、その代わりに他の株式(普通株式)よりも配当の割合が高い株式を発行させることもできますし、計画的な事業承継を行う中で、完全に経営者の交代(例えば、社長の長男が次期社長に就任するなど)が完了するまでは、社長が8.の拒否権付株式を有しておき、会社の重要な経営判断の際には、その拒否権を行使して、次期社長の判断に歯止めを効かせることが可能になります。

それぞれ株式には特徴がありますので、ご相談の中でその会社様に合わせた株式の設計ができればと思います。

 

判例紹介

看板設置と権利の濫用

最高裁判所第三小法廷 平成25年04月09日判決

事案の概要

繁華街に位置する建物の地下1階部分を賃借して店舗を営む者が建物の所有者の承諾の下に1階部分の外壁等に看板等を設置していた場合において、建物全部の譲受人が賃借人に対して当該看板等の撤去を求めたものである。

控訴審では、建物の賃借権には当該看板等の設置権原は含まれていないとし、看板等の撤去請求が権利の濫用に当たるような事情は見受けられないとしていた。

裁判所の判断

当該看板等の撤去を求めることは、次の1~4など判示の事情の下においては、権利の濫用に当たるとして、当該看板等の撤去を求める請求を棄却した。

  1. 上記看板等は、上記店舗の営業の用に供されており、建物の地下1階部分と社会通念上一体のものとして利用されてきた。
  2. 賃借人において、上記看板等を撤去せざるを得ないこととなると、建物周辺の通行人らに対し建物の地下1階部分で上記店舗を営業していることを示す手段はほぼ失われ、その営業の継続は著しく困難となる。
  3. 上記看板等の設置が、建物の所有者の承諾を得たものであることは、譲受人において十分知り得たものである。
  4. 譲受人に、上記看板等の設置箇所の利用について特に具体的な目的があることも、上記看板等が存在することにより譲受人の建物の所有に具体的な支障が生じていることもうかがわれない。

 

(田原裁判官の補足意見)
多数のテナントが入っているビル等において、例えば1階にテナント名を表示した看板が掲げられていたり、共用部分にテナント名を表示したり、外部看板が設置されテナントは別途の負担なくその看板にテナント名を表示することができる場合や、また共用の廊下や階段に特別の負担なく各店舗の看板が設置されているような場合には、それら看板への表示は、当該建物賃貸借契約書に明示されていなくても、同賃貸借契約の内容をなしているものということができる。

コメント

雑居ビル全体の所有者となった者が、自己所有の不動産であることを理由に、賃貸借契約の目的となっていない事項について、賃借人に対し、自己の権利について主張できるというわけではなく、雑居ビルだからこそ、各テナントが快適にビルを活用できるようにしなければならないと感じさせ
る判例です。

テナント側からも、以前の所有者(前賃貸人)の承諾を得たうえで設置した経緯などについて新しいビルの所有者に伝えるなどして、看板等の設置がビルの所有者に支障が生じることがないようにコミュニケーションを図っていくことも、トラブルの回避となるでしょう。

何気なく見ている看板も、各テナントの経済活動のために重要な役割を果たしているものなので、賃貸人、賃借人双方にとって、利益となるように活用できるといいですね。

 

司法書士日記

先日、「こども六法」という本が出版されていると知り、早速買ってみました。こども向けとはいえ、しっかりと法律の条文を解説してあり、読み応えのある内容でした。4歳と6 歳になった息子たちに読み聞かせをしてみたところ、前のめりで聞き入ってくれました(もちろん条文の解説を読んでもまだ理解できないので、かみ砕けるだけかみ砕き、脚色しながらの読み聞かせでしたが。どうやら動物の絵が面白いらしいです。)。

法律に関する仕事をしている身としては、子どもが法律に興味を持ってくれ、嬉しい気持ちになりました。ただ、次男は「こども六法」という単語を記憶することができないようで、「ママ~ ショーロンポー読んで~ 」と言いながら、笑顔で本を持ってきます。ほっこりする瞬間です。

龍田事務所 司法書士 野口 芽久美

 

お知らせ

寄り添う支援で笑顔ふたたび

当法人は、「NPO法人身近な犯罪被害者を支援する会」との連携を図っています。
ご質問、ご相談等ございましたら、当法人もしくは下記までご連絡ください。
TEL 096-341-8222 FAX 096-341-8333

命の絆・大切に、輝く命・永遠に

当法人は、「一般社団法人命の尊厳を考える会」との連携を図っています。
ご質問、ご相談等ございましたら、当法人もしくは下記までご連絡ください。
TEL 096-337-1251 FAX 096-337-3355

司法書士法人ヒューマン・サポート法律支援センター

当法人では、継続的な相談にも対応できるよう、顧問契約の締結を行っています。
会社・個人問いません。詳しくはお近くの事務所までお気軽にお問い合わせください。

PDF版