法エールVol.136

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ご挨拶

新型コロナウイルスの感染が一向に収束しない状況で、一部の業種では店舗を閉めたり、家賃の減額交渉をしたりと、苦しい経営状況となっております。当法人にも、コロナに関する法律相談がありますが、状況を聞くと事の重大さを感じます。

私は、ある団体が主催している経営研究会に所属しているのですが、普段は経営に関する勉強を経営者仲間たちと行っているところ、コロナの関係で1か月ほど活動がありませんでした。

しかし、このままではいけないと、テレビ会議システムを利用した勉強会を開催することになりました。少しでも経営に役立つ情報を集め、お互いにアドバイス等をしあうことで会社経営にプラスになればと思います。この経営研究会は中小企業の経営者の集まりなので、今回の件では、売上減少等で悩んでいる会社もあれば、将来への不安を感じている会社もあります。しかし、今回の出来事をプラスにとらえるべく、行動を起こしている会社が多く、当法人もそれを参考にできることをやっていこうと思います。

先が見えない状況ですが、お互いに助け合い、支えあって、この困難に立ち向かえれたらと思います。問題・課題を一人で抱え込まず、何か法的な問題でお困りなことがございましたら、当法人までお気軽にご相談ください。

それでは、今月の法エールよろしくお願いいたします。

(代表社員 井上 勉)

 

会社法にまつわる諸手続き

会社法とは、株式会社や合同会社等の持分会社の設立、組織、運営、管理等を定めた法律です。会社を経営するうえでは、知っておいた方がよい法律です。

最近、コロナウイルスの関係で、会社に関する様々な相談をお受けしております。内容は、取締役の役員を変更したい、定款を一部変更したい(目的変更、株式等)、契約書を見直したい等多岐に渡ります。融資や助成金についてのご相談もありますが、税理士や社会保険労務士をご紹介して対応に当たっております。このような大変な状況の中、経営者の方は自社をより良く改善したいとご相談に来られます。

今回はコロナウイルスの問題とは関係ありませんが、会社法の中において実務でよくでるところをご説明したいと思います。

 

1. 役員変更

株式会社では取締役、監査役、代表取締役、合同会社では有限責任社員、業務執行社員、代表社員等、法人によって役員の名称は異なり、責任等も異なります。

役員は登記事項ですので、役員を変更した場合には登記手続きが必要となります。また、会社によっては役員に任期が定められていることがあり、任期が満了すると役員は退任となります。

任期については、以下のような規定があります。

 

(株式会社)

取締役 – 原則
選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで。
取締役 – 例外
株式の譲渡による取得につき会社の承認を要する定款の規定がある会社(公開会社ではない会社)は、定款で定めることで10年まで伸長可。
監査役 – 原則
選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで。
監査役 – 例外
公開会社ではない会社は、定款で定めることで10年まで伸長可。

 

(一般社団法人・一般財団法人)

理事 – 原則
選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで。
理事 – 例外
定款または社員総会により短縮可能。
監査役 – 原則
選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで。
監査役 – 例外
選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで短縮可能。

 

なお、特例有限会社や合同会社には法律上、任期の規定はありません。

 

上記のように会社・法人の種類によって、任期は異なります。

株式会社の取締役は、原則2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までですが、公開会社ではない会社(非公開会社)については定款で10年まで伸長することができます。そのため、最近設立する会社は定款で取締役の任期を10年と規定している会社が多いように思います。

 

それでは、役員の任期が満了した会社が、役員変更登記をするのを忘れていた場合、どうなるでしょうか。

商業登記は、変更が生じたときから2週間以内に法務局に登記申請を行う必要があり、その登記期間内に申請を怠りその後に申請する場合は、過料の制裁に処せられるとなっています。実際には、多少期間を経過しても過料にはならないようですが、過料となる場合は、裁判所から代表者に通知が届きますので、ご注意ください。

 

役員に関しては、任期以外にも、責任の問題や組織の問題等、いろいろと考える必要があるところです。ブログや過去の法エールでも情報提供をしておりますので、ご参照ください。

 

判例紹介

SNSを用いた送達場所の調査

京都地方裁判所 平成31年02月05日判決 判例タイムズ1464号175頁

事案の概要

(1)申立人は、相手方A及び同人が代表取締役を務める株式会社B(以下「B社」という。)に対する訴状等の送達につき、公示送達の方法で行うよう申し立てたところ、本件申立てを却下する処分がされたことから、これを不服として、異議を申し立てた。

(2)本件申立てにおいて、申立代理人は、以下のとおり、相手方A及びB社の所在調査を行った。

申立代理人は、B社の登記簿上の本店所在地であるビルを訪ねたが、表札にB社の名前はなく、すべての階のテナントが別の会社で埋まっていた。また、周辺に入居する会社にB社についての聞き取りを行ったが、B社の転居先は明らかにならなかった。

また、申立代理人は、同ビルの管理会社に対しB社の転居先等を電話で問い合わせたが、管理会社は、転居先は把握していないと回答した。

申立代理人は、Aの住民票上の住所を訪れたところ、同室には別人が居住しており、Aは、退去していることが判明した。

申立代理人は、Facebook上に、「A’」名のアカウントが存在し、その職歴欄には、B社の代表取締役会長である旨の記載があることを見つけ、裁判所に対し、この「A’」がB社の代表取締役であるAと同一である可能性が極めて高い旨を上申した。

申立人は、Facebook Japan株式会社に対し、アカウントに関連付けられた電話番号又はメールアドレスの調査嘱託を申し立て、当裁判所は、申立てを採用し、同社に対し調査を嘱託した。

これに対し、同社は、自らにはFacebookの利用者記録へのアクセスを及びその内容に関する措置を取る権限を有せず、対応する立場にない、その権限はアメリカ合衆国にある別法人のFacebook Inc.にあり、さらなる問い合わせは同社に直接送付されたいとの回答がなされた。

裁判所の判断

公示送達を実施するには、「当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合」(民事訴訟法110条1項1号)である必要があるが、同号にいう「知れない」とは、単に申立人が主観的にこれを知らないだけではなく、通常の調査方法を講じて十分検索したが判明しないという客観的なものであることを要する。

Facebookのアカウントを有する者であれば、誰でも他人のFacebookのアカウントに対しメッセージを送信することができる機能があるから、申立人は、自ら又は代理人、調査会社等を用いてメッセージを送信することができ、Aに接触を試みることが可能である。しかし、申立人は、メッセー
ジを送信することによる調査は行っていない。

したがって、現時点では、Aについて、通常の調査方法を講じて十分検索したが送達場所が判明しなかったとは認定できず、公示送達の要件は充足しているとはいえない。そして、法人の場所は受送達者である代表者の住所等も送達場所となるから(民事訴訟法37条、102条1項、103条1項)、B社についても公示送達の要件を充足していないとして、申立てを却下した。

コメント

SNSなどが普及している現代ならではの事例だと思います。

IT化が進んでいく中で、裁判手続においても、1.e提出(e-Filing)、2.e法廷(e-Court)、3.e事件管理(e-Case Management)という「3つのe」の実現を目指すという観点から、内閣官房、法務省、最高裁判所が中心となって検討・準備が進められています。

今後は、情報セキュリティ対策(本人確認、改ざん・漏洩防止等)などが問題になってくると思われます。

 

コラム

~ひそかな計画~

春になり暖かくなってきました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、外出自粛の要請で不便な生活が続いています。

その中でも、自宅で過ごす時間に、「コロナが収束したら、○○○したい」という、ひそかな計画を立てることが一つの楽しみになりました。

コロナが収束したら、旅行に行きたい、美味しいものが食べたい、いつも会えない友達に会いたい、家族とゆっくり過ごしたい・・・など、考え始めたら止まらない程です(笑)。

熊本地震の被災後も、もしかすると、ずっとこのまま不便な生活のままなのではないかという不安がありましたが、地震直後からたくさんの方々に支えられて、想像を上回る早さで復旧していったことを覚えています。

元のように過ごせる日が来ると信じて、立てている計画をこれからひとつずつ叶えられるように、今はじっと自宅で過ごす時間を楽しみたいと思います。

健軍事務所 荒木 知恵

 

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