法エールVol.132

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ご挨拶

先日、毎月購読している雑誌を読んでいましたら、「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」の特集があっていました。恥ずかしながら、初めて聞いた単語だったのですが、これは、「持続可能な開発目標」の略称だそうです。2015年9月の国連サミットで採択され、2016年から2030年までに達成するために掲げた目標だとのことです。

目標は17個ありまして、例えば、「貧困をなくそう」、「飢餓をゼロに」、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、「働きがいも経済成長も」等の目標を設定しています。さらに、その目標に関して169のターゲットを定めています。

この目標は、世界の国々が人権や環境問題に目を向け、持続可能な世界となるべく、ひとつの方向性を示しています。熊本市も、国の定めるSDGs未来都市に選定され、熊本地震の経験と教訓をいかした災害に強い持続可能なまちづくりを目標に掲げて取り組んでいます。

このようにSDGsは、社会の中で少しずつ認知度を上げているのですが、ある調査によるとSDGsをよく知らないと答えた中小企業は84%あったということです。SDGsは、経営において、とても大切な要素となりえます。世界の共通課題であるSDGsの解決を図ることで新しいビジネスモデルがうまれてくると思います。実際、SDGs関連で、世界では12兆ドルもの市場があるといわれています。

幣法人でもSDGsの取り組みは何かできると思いますので、これを法人内で議論することで、仕事の価値ややりがいなど新しい気づきが生まれるのではないかと期待しております。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 井上 勉)

養子縁組について

養子についての最終回は、離縁についてお伝えいたします。

普通養子縁組の離縁

養父母との間で協議離縁の合意ができ、離縁届が市町村長の役場に受理されれば離縁となります。協議が調わないときには、家庭裁判所に離縁の調停申立てをし、当事者間に合意ができて調停離縁が成立すると、離縁の判決が確定したのと同じ効果があります。

養子が15歳未満の場合、養親との離縁後に法定代理人となるべき者(実父母など)がその養子に代わって協議します(民法811条2項)。養子が成年の場合は、共同縁組がなされていても単独で離縁の協議ができますが、養子が未成年の場合には養親の夫婦が共同して離縁しなければなりません(民法811条の2)。

調停で離縁の合意ができなかった場合には、家庭裁判所に離縁の訴えを提起することができます。裁判上の離縁が認められるための離縁原因は民法814条1項に1.他の一方から悪意で遺棄されたとき、2.他の一方の生死が3年以上明らかでないとき、3.その他縁組を継続しがたい重大な事由があるときと定められています。ただし、1.または2.に当たるときでも、裁判所の裁量により縁組の継続を相当と認めるときには離縁請求が棄却されることもあります。

特別養子縁組の離縁

特別養子縁組の場合には、養親子間に実親子と同様な安定かつ強固な関係を築くものですから、原則として離縁は認められません。仮に養親のどちらかが亡くなったり、重い病気になった場合も同様です。特別養子は特に保護されなければならない為、このように決められています。

特別養子縁組において、離縁が認められるのは、以下の3つの条件がすべて満たされていると家庭裁判所が判断した場合のみです。

  1. 養親による虐待、悪意の遺棄、その他養子の利益を著しく害する事由があること(民法817条の10第1項1号)
  2. 実父母が相当の監護をすることができること(同項2号)
  3. 養子の利益のための離縁の必要性(同項)

なお、特別養子縁組の離縁の請求ができる者は、養子、実父母、検察官からであり、養親からの請求は許されません。

当法人でも、家庭裁判所に提出する書類作成業務を承っております。お気軽にご相談ください。

判例紹介

ホテル内に出店するマッサージ店の施術の過誤に関する会社法9条の類推適用に基づくホテル運営会社の責任

大阪高等裁判所 平成28年10月13日判決

事案の概要

ホテル内で営業しているマッサージ店でマッサージの施術を受けた宿泊客が同施術の過誤に起因して後遺障害を負うに至ったという場合に同ホテルを経営する会社に対して会社法9条の規定の類推適用に基づく損害賠償を求めた請求を認容した第1審判決が控訴審において是認された事例

裁判所の判断

ホテル内で営業しているマッサージ店でマッサージの施術を受けた宿泊客が同施術の過誤に起因した後遺障害を負うに至ったという場合に同ホテルを経営する会社に対して会社法9条の規定の類推適用に基づく損害賠償を求めた請求を認容した第1審判決は、同マッサージ店の営業主体が同ホテルを経営する会社であると誤認する外観があって、その外観の作出を同社が黙認していただけでなく、宿泊客も同社が同店の営業主体であると誤認していた原判示および本判示の事実関係の下においては、これを是認することができる。

コメント

皆様の中にも、ホテル宿泊時にマッサージを頼まれる方もおられると思いますが、本判決は、ホテル内で営業しているマッサージ店でマッサージの施術を受けた宿泊客が同施術の過誤に起因して後遺障害を負うに至ったという場合に同ホテルを経営する会社に対して会社法9条の規定の類推適用に基づく損害賠償を求めた請求を認容した第1審判決を是認した控訴審の裁判例です。同条の趣旨は、商号使用を許諾することによって、虚偽の外観を作出した会社に責任を負わせ、外観を信頼した第三者を保護する点にあるところ、本件においては、会社はその商号の使用の許諾をしていません。そこで、営業主体を誤認させたとして、外観を誤認して取引に入った宿泊客を保護するために類推適用したものです。ただ、本人の近親者には、自ら誤認した者ではないとして、その責任を認めませんでした。この点については、本件を契機に議論が予想されるところです。

 

参考条文(自己の商号の使用を他人に許諾した会社の責任)
会社法第9条自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社が当該事業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。

(参考 判例タイムズ等)

コラム

~東海道五十三次~

少し前になりますが、両親と熊本県立美術館へ浮世絵の第一人者である歌川広重の展覧会へ行ってきました!

そこには「東海道五十三次」などの傑作が相当数展示してありました。

1800年代中盤の作品ですが、当時の人々の暮らしぶりがよく分かり、江戸の日本橋の賑わいや雪山の厳しさが伝わってきて深く感じさせるものがあり、また色使いもフェルメールブルーならぬヒロシゲブルーなどの繊細なブルーの具合や細かい人物表現、建物や山などがそこにある現実のものと変わらない正確な描写、そういったものに圧倒されました! !

一緒に鑑賞した父も母も同様に感動したようで、帰りの車内は一段と賑やかな雰囲気になりました。

龍田事務所 伊藤 峰治

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