法エールVol.131

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ご挨拶

11月9日に、弊法人と連携を図っているNPO法人身近な犯罪被害者を支援する会主催で、「犯罪被害者から学ぶより良い犯罪被害者等支援制度のために」と題するセミナーが開催されました。

このNPO法人は、身近に発生する犯罪行為の被害者及びその家族または遺族に対して、精神的支援その他の各種支援活動を行っている団体です。具体的には、犯罪行為の被害者やその家族等からご相談を受け、それに対して情報提供を行ったり、付き添い支援等を行い、犯罪被害者等に寄り添い、一日でも早く犯罪被害に遭う前の日常を取り戻し、ふたたび平穏な生活ができるための活動を行っています。弊法人も設立当初から、このNPO活動の支援を行っております。

今回のセミナーは、第1部で、2018年5月に、熊本市西区田崎で、当時熊本西高等学校3年生(17歳)であった長女の瑠菜さんを酒気帯び運転の車に後方から追突され亡くされた村上公朗様からのお話で、事故直後の状況や裁判を通しての加害者との接触、今回の事故を通して伝えたいことなどをお話いただきました。第2部は、パネルディスカッションで、犯罪被害者の支援について、村上様、警察、検察、弁護士、司法書士が、それぞれの立場でお話をされました。

村上様からは、事故当日のお話からしていただきました。事故当日、瑠菜さんは、いつも通り学校に行ったということでしたが、家を出て数時間後に電話があり、瑠菜さんが事故にあったと聞き、すぐに病院にご夫婦で向かったということでした。朝で渋滞の中、なかなか進まない車の中で、村上様はどのような思いだったのでしょうか。病院につき、血まみれの制服を見ました。瑠菜さんが必死に頑張って生きようとしている横で、村上様は必死に瑠菜さんに話しかけていたということでした。

瑠菜さんがお亡くなりになり、車を運転していた加害者はまだ20代の会社員でした。遅くまで仕事をし、その後に会社の同僚とお酒を飲んで、少し仮眠をとり、会社に向かったということです。事故後、警察の取り調べに、加害者はなかなか本当のことを話さず、反省の色が見えなかったということでした。

犯罪被害は、いつどこで起こるかわかりません。何事もなかった日常が、他人の犯罪行為により崩され、身体的にも精神的にも傷つけられます。このNPO法人は、このような被害にあった方々に寄り添う支援で、笑顔を取り戻せるような活動をしています。

来月からは、道路交通法が改正され、ながら運転の罰則が強化されます。忘年会等でお酒を飲む機会も多くなるのではないかと思いますが、飲酒運転等をしようとしている方を見かけたら、知らない人であっても運転しないよう伝える勇気を持ちたいと思います。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 井上 勉)

養子縁組について

前回に引き続き、養子についてご説明いたします。

特別養子縁組とは?

子どもの福祉の増進を図るために、養子となるお子さんの実親との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度です。

「特別養子縁組」は、養親になることを望むご夫婦の請求に対し、以下の要件を満たす場合に、家庭裁判所の決定を受けることで成立します。

  1. 養親は配偶者のある者で、夫婦ともに養親となること(民法817条の3)
  2. 養親は25歳以上であること(民法817条の4)
    →ただし、夫婦の一方が25歳以上の場合には、もう一方は20歳以上であれば足ります。
  3. 養子が特別養子縁組の請求時に6歳未満であること、または、養子が8歳未満であり6歳未満の時から養親となる者に監護されていること(民法817条の5)
    ※令和元年6月の民法改正で、特別養子の対象年齢が原則として15歳未満(審判申立時)に引き上げられました。(新民法817条の5第1項前段・第2項)
    →例外として、15歳に達する前から養親候補者が引き続き養育している場合や、やむを得ない事由により15歳までに申立ができなかった場合は、15歳以上でも認められる場合があります。(ただし、審判確定時に18歳に達している者は、縁組不可)
  4. 実父母の同意があること(民法817条の6)
    →ただし、父母が行方不明等で同意できない場合や父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は除きます。
    ※令和元年6月の民法改正で、従来、家庭裁判所の審判で縁組が成立するまで、実親はいつでも縁組の同意を撤回できたのを改め、審判を2段階に分け(実親による養育状況及び実親の同意の有無等を判断する審判と、養親子の相性を判断する審判)、第2段階では実親に関与させないようにしました。
  5. 父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があること
  6. 養親が養子となる者を6ヶ月以上の期間監護すること(民法817条の8)

※改正法は2020年4月1日から施行されます。

 

特別養子縁の効果

特別養子となった場合、養子縁組の一般の効果のほか、実父母及びその血族との親族関係は終了します(民法817条の9)。したがって、実親との間に相続分も有しないことになります。

戸籍の記載も、「養子」や「養父母」といった用語は用いず、「長男」や「父母」といった用語を用います。

当法人でも家庭裁判所に提出する書類作成等支援業務を行っておりますので、詳しくは当事務所までお問い合わせください。

判例紹介

東名高速あおり運転事件第1審判決

横浜地方裁判所 平成30年12月14日判決

事案の概要

被告人が、パーキングエリアにおいてCから駐車方法を非難されたことに憤慨し、高速道路上でCを含む4名が乗車する普通乗用自動車を停止させようと企て、同車の通行を妨害する目的で自車を減速させて著しく接近させるなどのいわゆるあおり運転を4度にわたり繰り返し、直前で自車を停止して同車を追越車線上に停止させたところ、大型貨物自動車が同車に追突し、2名を死亡させ、2名に傷害を負わせた事案

裁判所の判断

被告人の4度の妨害運転は危険運転致死傷罪の実行行為に該当するものの、直前停止行為は同罪の実行行為には該当しないとした上で、Cらの死傷結果は、被告人が妨害運転に及んだことによって生じた事故発生の危険性が現実化したにすぎず、被告人の妨害運転とCらの死傷結果との間の因果関係が認められるとして、危険運転致死罪の成立を認め、被告人を懲役18年に処した(裁判員裁判)。

コメント

被告人が、高速道路上で、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条4号所定の被害者運転車両の通行を妨害する目的で危険運転行為をし、さらに、走行する同車の直前に自車を停止させた行為自体は、同号所定の「重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」とは認められないが、同車に後続する大型車両が衝突したのは、先行する被告人の前記危険運転行為及びこれと密接に関連した前記直前停止行為、被告人の衝突現場付近における被害者のうち1名に対する暴行等に誘発されて生じたものであるから、被告人の前記危険運転行為と被害者らの死傷結果には因果関係が認められるとして、被告人に対して危険運転致死傷罪の成立を認めました。この因果関係は、妨害運転行為から停止行為までが「被害者運転車両を停止させてCらに文句を言いたいとの一貫した意思」で行われたのであれば、妨害運転開始時から停止行為が行われることは予定されていたといえます。そして、妨害行為が、停止行為を経て、追突事故を生じさせる危険を創出させたとして、因果関係の相当性が認められたものと思われます。

この地裁の判決に対して、被告人は控訴しており、12月になれば、この事案に対して、控訴審の方で判断されます。裁判員裁判の判断にどのような影響を及ぼすのか。控訴審の判断に注目をしたいと思います。

(参考 裁判所ウェブサイト等)

司法書士日記

たまたまかもしれませんが、最近、テレビなどで「カフェ」ではなく、「喫茶店」が多く取り上げられているような気がしています。

かくいう私も最近、喫茶店に行くことがたびたびあります。

パソコンを持ち込んで原稿を書いたり、音楽を聴きながら本を読んだりしています。

コーヒーだけの時もあれば、サンドイッチを一緒に注文したりして、そのボリュームに驚くこともしばしば。

お店の中にいる他のお客さんを見渡してみると、コーヒー片手に新聞を読んでいる男性や、子供連れの女性の方、試験前なのか一緒に勉強している女子大生? などの姿があります。

良い香りが漂う中、それぞれの時間を過ごす喫茶店という空間はとても落ち着いてお気に入りの場所です。

健軍事務所 司法書士 山﨑 順子

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