法エールVol.128

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ご挨拶

先日、とある人材育成の会社主催で、目標実現アンバサダー全国大会が開催されました。幣法人からは、有志数名で参加しました。

目標実現アンバサダーとは、目標達成のために、前向きに肯定的に物事に取り組み、周りの模範となる人のことです。今回は、地区予選を勝ち抜いた7名の方が、これまでにどのような目標を掲げ、どのような成果が出たのかをプレゼンテーションしました。

7名の方は、それぞれ半年から1年で達成したい目標を設定し、その目標達成に向けどのような取り組みをしたのかを発表されました。発表者の一人は、塾講師をしている方で、生徒の成績を上げることを目標に掲げました。目標達成のために、生徒とたくさんのコミュニケーションを意識的にとり、お盆休みも返上して、生徒に寄り添ったということでした。その結果、去年よりも格段に成績が上がり、その影響か、塾を辞める生徒がほとんどおらず、他の先生の意識も高まり、塾全体にプラスの影響を与えたということでした。一人の社員さんが、熱意をもって取り組んだことで素晴らしい影響を周りに与えた事例発表でした。

一人一人が目標実現アンバサダーとなり、自己実現を果たすことで、会社もよくなり、個人も充実感のある人生を送ることができます。今一度自分の生活や考え方を見直し、よりよい状況となれるように努力しなければなりません。参加した幣法人の社員さんも刺激を受けたようで、お互いに切磋琢磨しながら、今以上に社会に有用とされる法人とならなければと感じることのできた研修会でした。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 井上 勉)

遺言Q&A

前回より、遺言Q&Aと題し、遺言に関する事例をご紹介しています。今回も引き続き、遺言に関するいくつかの事例をご紹介したいと思います。

Q3 ハワイにある不動産を長男に相続させようと日本で公正証書遺言を作成しようと考えています。しかし、いざ相続が発生した後に登記という段階になって手続きが進まないことがあると聞きました。どのようなことに注意したら良いでしょうか。
A 日本において適法な遺言書を作成していたとしても、在外資産について実際に遺言書の内容を実現することができるかは、その遺産のある国の手続きが必要な場合があります。例えば、ハワイ州ではハワイに所在するすべての財産についてprobate(裁判所が関与する遺言書の検認手続き)が必要になります。この場合、日本で作成した遺言書をもって財産の引渡しや名義書き換えを直接に求めてもうまくいかないことも予想されます。このような場合に備えて、在外資産については現地の弁護士等に依頼し、現地での遺言書を作成しておくなどの方法を採ることが安全と言えるでしょう。
Q4 父Aが亡くなり、相続人としては母B、長男C、長女Dがいます。長男Cは、不動産については母Bが住んでいるのでBが相続し、それ以外の財産を家業を継ぐ自分が相続したいと言っています。長女Dとしては、将来、母Bの相続が生じたときに不動産を取得することができるのであれば、今回のCの提案に応じても良いと考えています。このような約束は、母Bの相続の際に考慮されますか。
A 今回の父Aの相続と、将来の母Bの相続は、あくまでも別の相続として扱われるので、このような約束をしても、法律上効力はないとして話し合いがまとまらない可能性もあります。そこで、父Aの遺産分割協議の際の約束を母Bの相続の際に実現するためには、以下の方法が考えられます。

  1. 父Aの遺産分割協議書の中に、将来発生する母Bの相続の際に不動産については長女Dが相続することを条件としていることを明文化しておいて、もし、その約束が果たされない場合は、父Aの遺産分割協議を解除する(又は錯誤無効とする(※))余地を残しておく。
    ※錯誤無効は2020年の民法改正において「取り消すことができる」となります。
  2. 母Bに、不動産は長女Dに相続させる旨の遺言を作成してもらう。

もっとも、母が遺言書を作成したとしても、その後遺言が撤回された際は、約束が実現されない可能性もあります。したがって、今回のQ4のような約束が実現されることを安易に期待すべきではないでしょう。

(参考『実務家が陥りやすい相続・遺言の落とし穴』(新日本法規平成30年)

判例紹介

ショッピングセンターでの転倒事故と運営会社の不法行為責任

岡山地方裁判所 平成25年3月14日判決

事案の概要

2009年10月31日午後8時10分ごろ、Yの運営するショッピングセンター(以下、本件店舗という)の1階アイスクリーム売場前通路において、X(71歳女性)がショッピングカートを押して歩行中、アイスクリームが床に落ちており、これに左足を滑らせて転倒した。当日はアイスクリームが値引き販売され、またハロウィーンでもあったことから、売場の前には多数の客が行列を作っていた。

Xが履いていた靴は特に滑りやすい状態にあったわけではなく、売場は店舗の1階中央付近に位置し、中央出入口と生鮮食品売場とを結ぶ主要な通路沿いにあった。

Xは転倒により右大腿骨顆上骨折及び第二腰椎圧迫骨折の傷害を負い、92日間の入院治療、85日間の通院治療を受け、一部の関節の機能に著しい障害を残して固定した。

XはYに対し、店舗の安全管理を怠ったことについて民放709条の不法行為責任を、また、床が滑りやすい状態にあるのに、これを放置したことにつき土地工作物責任(民法717条1項)に基づいて損害賠償を請求した。

裁判所の判断

ショッピングセンターは、年齢、性別等が異なる不特定多数の顧客に店舗側の用意した場所を提供し、その場所で顧客に商品を選択、購入させて利益を上げることを目的としているので、不特定多数の人を呼び寄せて社会的接触に入った当事者間の信義則上の義務として、不特定多数の人の通常考えられ得る履物、行動党を前提として、その安全を図る義務がある。

本件売場でアイスクリームを購入した顧客が売場付近の通路上でこれを食べ歩くなどし、床上にアイスクリームの一部を落とし、これにより床が滑りやすくなるのは容易に予想される。さらに、当日はアイスクリームの値引販売が実施されており、Yとしては少なくとも多数の顧客が売場を訪れることは予想されるので、売場付近に飲食スペースを設け誘導したり、外部の清掃業者への清掃委託を閉店時間まで延長したりするなどして、本件内場付近の通路の床にアイスクリームが落下した状況が生じないようにすべき義務を負っていた。

ただ、Xとしても売場前の通路にアイスクリームの一部が落下して滑りやすくなっていることを予測でき、歩行の際足元への注意を払うべき義務を怠った過失があるが、Xはショッピングカートを押して歩行しており、前方床面が見にくい状況であったため、Xの過失割合は20%にとどめるのが相当である。

コメント

過去の裁判例においても、スーパーやコンビニなどの店舗においては、様々な顧客が利用することを想定し、不特定多数の者の日常ありうべき服装、履物、行動等を前提として、その安全を図る義務があるとして、店舗側に民法709条の不法行為責任や、717条1項による土地工作物責任を認めてるものがあります。しかし、ほとんどの場合、それら店舗を利用する顧客側も注意すべき義務があるとして過失相殺がなされており、双方において注意すべき義務があることは当然のこととして、安全に買い物ができるように注意していきたいですね。

コラム

~動物図鑑とスマホ~

先日、我が家の本箱を整理していて、古い動物図鑑が出てきました。今年還暦を迎えた私ですが、小学3年生のときに、両親から買ってもらったものでした。

懐かしい思いでページをめくると、その頃の記憶が鮮やかに蘇ってきました。書店に並んでいた動物図鑑が欲しいと両親に懇願しましたが、裕福な家庭ではありませんでしたので、簡単に首をたてに振ってはくれません。しかし、ある朝、目を覚ますと枕元にそっと図鑑が置いてありました。私は飛び上がらんばかりに喜んで、夢中で本を開きました。悠然と歩くライオン、鋭い牙を見せ雄叫びをあげる虎の姿に心躍らせ、ジャングルら聞こえる野鳥の声を想像し、幸せに浸り、両親に感謝しました。

今は、珍しい動物でも、鳴き声やその姿を瞬時にスマホで検索し、しかも動画で見ることができます。便利な時代ですが、あの日のような心ときめく感動を味わうことはできなくなり少し寂しい気もします。とはいえ、遠くに住んでいる孫の成長をスマホの動画で見て目尻を下げている私です。これからもスマホに頼り過ぎず、上手く活用していきたいと思います。

健軍事務所 上野 庸祐

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