法エールVol.127

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ご挨拶

7月7日に司法書士試験が行われました。司法書士試験は、年に1回行われておりまして、択一11科目と書式2科目を1日で行います。合格率は、3%ちょっとです。

弊法人からは、7名の社員が受験しました。1年間頑張った成果が出ることを期待しております。

司法書士試験は、年々受験者が減少しています。平成22年の出願者が33,166人で、合格者が948人だったのに対して、平成30年の出願者は17,668人で、合格者621人となっています。今年は、出願者が16,811人です。平成22年からすると出願者は半減です。原因としては、平成20年頃は、多重債務の事件が多く、司法書士事務所も忙しいところが多かったのですが、多重債務問題もある程度解決し、司法書士の仕事が減ったというのが1つあると思います。また、好景気で大手企業に勤めたいという若者が増えて資格に魅力を感じないということもあると思います。あと、最近では、AI(人工知能)により、司法書士業務の78%は代替されるという研究結果がでておりまして、司法書士業界の将来を不安視していることもあるのではないかと思います。

司法書士試験の合格者が減少していくと、司法書士の数自体も徐々にではありますが、減少していくことになります。司法書士は、身近な法律専門家として、市民の皆様の法的問題に関して支援させていただいておりますが、そのサービスが低下しないようにしていかなければなりません。

弊法人におきましては、司法書士試験を目指す社員のために、社内研修等を取り入れ、一人でも多くの合格者を輩出すべく日々勉強しております。早く幣法人の社員の中から合格者がでることを願うとともに、業務の質を高めていき、質の高い法的サービスを皆様に提供できるように精進してまいります。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 井上 勉)

遺言Q&A

これまで、自筆証書遺言(手書きの遺言書)を作成する際は、遺言書の全てを手書きしなければなりませんでしたが、本年1月13日より、自筆証書遺言を作成する場合、例外的に相続財産の全部又は一部の目録(財産目録)については、パソコンでの作成したり、不動産の登記事項証明書を財産目録として添付することが認められています。また、令和2年7月10日からは法務局における自筆証書遺言の保管制度が始まります。

遺言に関する制度が変更されるとともに、遺言書の利便性が向上し、遺言に対する関心はますます高まっているように思われます。そこで、今回から3回にわたり、遺言Q&Aとして、いくつかの事例をご紹介したいと思います。

Q1 被相続人Aは生前のうちに、相続人となる二人の子らが揉めないように、遺産のうち、複数ある登記済不動産の全てを長男Bに、その余の一切の動産類を二男Cに相続させる旨の遺言書を作成していました。このような遺言書で相続人らが揉める可能性はありませんか。
A 遺産の中に遺言書に記載されていない不動産や預貯金等がある場合、「その余の一切の動産類」に含まれないものとして、これらの財産について遺産分割協議を行う必要が出てくる可能性があります。例えば、未登記建物は動産ではありませんし、預貯金が動産類の「類」に含まれるとの解釈は通常はなされないものと思われます。したがって、遺言書の作成にあたっては、財産の漏れや解釈に疑義を残すことがないように注意を払うことが大切です。
Q2 被相続人である父Aには長男B、次男C、長女Dがいますが、Aは生前にB、Cにそれなりの生前贈与をしていたので、B及びCは、Aと同居していたDにAの遺産を全てを相続させたいと思っています。しかし、Dが遠慮しているのか、遺産分割協議に同意しません。B及びCは相続放棄申述申立てを行うことを検討していますが、相続人の数が減り、相続税の基礎控除が受けられなくなり、相続税が高額になることを心配しています。B及びCは相続放棄をしない方が良いのでしょうか。
A 相続放棄申述申立てが受理されても、相続税の基礎控除の計算には何ら影響を及ぼしません。したがって、B及びCは相続放棄申述申立てを行い、その受理証明書をDに渡すと良いでしょう。

(参考『実務家が陥りやすい相続・遺言の落とし穴』(新日本法規平成30年)

判例紹介

除霊サービスと不法行為責任

東京地方裁判所 平成26年3月26日判決

事案の概要

Xは、当時30歳代半ばの会社員の女性で同い年の夫がいる。Xは、親族が難病であること、子どもができないこと、知人男性と親密な関係になり罪悪感や自己嫌悪を抱くようになったこと、実父が病気で亡くなったことなどから、精神的に不安定となり、スピリチュアルカウンセラーを自称するY(サロンの主宰者)の電話占いを受けるようになった。

Yは電話占いだけではなく、サロンでの面談も行うようになった。電話占いでは、Xが親密になった知人男性には「色情霊」が憑いているとして除霊を勧め、2009年9月にサロンにおいて「対面交霊コース」(25,000円)を行った。

サロンにはYとA(実際に除霊を行っていた者)がおり、Yは「透視」「リーディング」(霊視)、「チャネリング」(霊との交信)を、Aは「除霊」を担当していた。

その後も、Yは「夫の状態が非常に悪いので早急に対処すべきである」ともとれる旨のメールをXに送った。そのため、Xは、除霊をすぐに受けなければならないと考え、夫とともに同月にサロンに出向いた。X夫婦は、Yから除霊費用を半額にするなどと説得され、650万円を「非常に安い金額である」として提示されたので、除霊を受けることにした。除霊費用の支払いについてはマンシヨンを売却して支払う話も出たが、最終的に夫の母から不妊治療費として700万円を借りて支払った。

なお、Xらは各面談が行われる前には、効果を保証するものではないことや、魔法のような効果を期待している人は受けられない、などの免責条項が記載された書面に署名をしていた。

Xは、2012年にYに対して違法な勧誘により損害が生じたとして、不法行為に基づく損害賠償を求め、Yが応じなかったので提訴した。

裁判所の判断

Yらによる説明の内容が科学的に証明できないものであることの1点のみを理由に、直ちにその勧誘行為が違法であると評価すべきではないが、精神的に不安定であったX(ないしX夫妻)の不安を助長し、そうした心理状態につけ込んで除霊の勧誘がなされたとみることができる。そして、650万円という金額は、それ自体高額であるうえ、支払原資の調達方法に鑑みてもX夫妻にとって高額である。これらの諸事情に鑑みれば、Yらの除霊の勧誘行為は、社会的に考えて一般的に相当と認められる範囲を著しく逸脱するものであり、違法なものといわざるを得ない。

クレームを受け付けないとの特約についてYは、X夫妻が、免責条項が記載された契約書に署名していること、除霊後にXから感謝のメールがあったこと、Xは除霊後も長時間相談を継続し、除霊費用の返還を求めるようになったのも3年近く経ってからであることを指摘する。

しかし、かかる諸点については、不安定な精神状態のX(ないしX夫妻)の不安を助長し、そうした心理状態につけ込んでの除霊勧誘であったという事柄の性質上、格別上記の認定に反するものではない。

コメント

宗教団体に対して行った献金についての裁判では、献金勧誘行為が社会的にみて正当な目的に基づくものであり、その方法や結果が社会通念に照らして相当である限り、献金を勧誘する行為は違法ではないとしています。反対に、これに反する不当な目的による場合は、違法であるとの評価がなされます。今回の事例も、X夫妻の不安を助長し、そうした心理状態につけ込んだ勧誘がなされたことや、支払金額が高額であることが違法と評価されたポイントとなったようです。

司法書士日記

先日、とある会合において「STEAM(スティーム)教育」という言葉を耳にしました。

「STEAM」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(ものづくり)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字を組み合わせた造語で、これら5つの領域を重視して行われる教育方針を指しているとのことです。

もともとは、科学技術の分野で競争力を高めるためにアメリカが推進してきた考え方のようですが、近年、日本でもこのSTEAM教育が注目されています。

日本においても、国は「持続可能な社会の創り手」を確実に育成し、人間としての強みを伸ばしながら、人生や社会を見据えて学びあう場が必要と考えているようです。

人としての長所を生かし、互いに補完しあいながら、成長し合える職場を創りたいと改めて感じる話でした。

健軍事務所 司法書士 山﨑 順子

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