法エールVol.125

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ご挨拶

先日、知り合いの会社様がセミナーを主催され、参加してきました。講師はシリコンバレーで長年日本企業のビジネス支援をされてきた方で、シリコンバレーの現状等のお話を聞くことができました。シリコンバレーには、先進的な企業が数多くありますが、どの企業もすぐに大きくなったのではなく、年数をかけて努力した成果が現在の状況となっているということで、ウサギとカメに例えて話されました。シリコンバレーだけの話ではありませんが、カメのように少しずつでも進んでいくと、それが数年先につながっていくということでした。また、アメリカと中国の比較をされ、中国は、国家戦略としてAI(人工知能)等の技術力を高めており、アメリカに近づいているか同等の力を持っているということでした。日本は、AI等の技術で、すぐにアメリカ、中国に追いつくのは難しいが、まずは現状を認識し、危機感をもって愚直に行動していかなければならないということでした。

AI等の先進技術が人間の仕事を奪っていくという情報を聞くにつけ、不安になることもありますが、そのセミナーに参加された方々は、それであれば何か新しいことに取り組むチャンスだと考え、いろいろな意見が出ていて、大変力強く思え、弊法人も新しいことにどんどんチャレンジしていかなければと感じました。

その一環として、前回もお知らせしておりますが、弊法人では、相続法の改正セミナーをご要望される企業様にお伺いして行っております。相続は誰しもが経験することではありますが、意外と知らないことが多くあります。配偶者居住権や、自筆証書遺言の保管制度の創設、相続人以外の親族に対しての金銭請求等、今回の改正では、皆様に関係のある改正が多くあります。朝礼の10分でもお時間をいただけましたら、弊法人の司法書士がお伺いいたしますので、お気軽にお申し込みください。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 井上 勉)

従業員持株会・役員持株会

従業員持株会という制度をご存知でしょうか。上場企業にお勤めの方はご存知の方も多いかもしれません。とはいえ従業員持株会は中小企業でも使える制度です。今月は、この「従業員持株会」についてお伝えします。

従業員持株会とは社員さん(従業員)が自分の勤めている会社の株式を購入し、その社員さんの中長期的な資産形成を支援する制度です。

従業員持ち株制度を導入することで社員さんの勤労意欲向上により、生産性も上がり、更に経営への参加意識も向上することにもなりえます。また、社員さんの福利厚生の増進を図り、安定雇用につなげることもできます。

次に持株会について経営者側からの視点と従業員側からの視点のメリット・デメリットを記載します。

<経営者側からの視点>

メリット

  • 社員の勤労意欲・忠誠心などの向上になる。
  • 株主が安定することで、TOBなど敵対的買収などに対抗できる。
  • 事業承継問題への一助になりえる。

デメリット

  • 従業員持株会の管理負担。
  • 従業員持株会の費用負担。

 

<従業員側からの視点>

メリット

  • 自社の利益が上がれば、資産が向上する。

デメリット

  • 積み立てた持株を売却したい場合に、制限がかかる可能性がある。
  • 自身の資産について自社への依存度が高くなる。

役員持株会については、役員のみが持株会の構成員になること以外は同じです。持株会の制度をご検討されてみてはいかがでしょうか。

判例紹介

出会い系サイト事業者による「訴訟詐欺」

東京高等裁判所 平成17年3月22日判決

事案の概要

Xはいわゆる出会い系サイト、(以下、本件サイト)を運営する事業者と称している者、Yは22歳の男性である。

YはXより、本件サイトに登録したとして、登録料・事務手数料・調査費用合計約26万円の支払いを求める督促状等を受け取った。書面には「連日報道されている架空請求と勘違いして放置されている方もいらっしゃるかもしれませんが、…貴殿の当サイト利用に基づくものです」「悪質な踏み倒しとみなす」「さらなる調査を請求する」「法的措置を取る」「延滞手数料を加算する」「給料差押えなど強制執行に入る」「刑事告訴に入る」「詐欺罪での訴訟をする」といった記載が並んでいた。

Yは身に覚えがなかったため、すぐに警察や消費生活センターに相談し「無視しておくのがよい」とのアドバイスを受け、放置していたが、Xが少額訴訟を提起し、登録料3万円、メールアドレスおよび電話番号を無断で変更したことによる違約金5万円、Yに連絡するための調査会社への依頼費用6万3,000円、計14万3,000円の支払いを求めた(本訴)。

Yは驚いて消費生活センターや弁護士会の法律相談に出向き「放っておくと敗訴になってしまう」とのアドバイスを受けて答弁書を裁判所に提出し、そのうえで、Xによるプライバシー情報の不正入手、架空請求や提訴による精神的苦痛を理由に、慰謝料100万円および弁護士費用10万円の支払いを求めた(反訴)。

第一回口頭弁論には、XはA(従業員と思われる者)を許可代理人として出頭させたが、Yに多数の訴訟代理人が就任し、本件が地方裁判所に移送される決定がなされた途端、本件訴訟を取り下げようとした。しかし、Yの同意がなかったため取り下げは成立しなかった。

Xは第二回口頭弁論期日以降、一度も審理に出頭しなかった。

裁判所の判断

裁判所は、Yの登録を前提としたXの請求には理由がないとして本訴を棄却したうえで、反訴について次のように判断した。

Xの行為は、Yを畏怖(いふ)させ、金員を支払わせるための恐喝行為に当たるものといえ、さらにいえば、Xの行為は詐欺行為とも評価し得る。実際に提訴に及んでいることについては、いわゆる架空請求について、一般的に「相手にしないで放置するべき」と報道されていることに便乗し、提訴後も応訴することなく弁論期日に欠席させることで勝訴判決を取得できるとの計算のもとで提訴に及んでいるのではないか、あえて少額訴訟を選んだのはYが応訴してきた場合でも第一回期日での終結を押し切ろうとしたのではないか、との推認もでき、極めて悪質ないわゆる訴訟詐欺に該当する可能性が高いものといわざるを得ない、として、Yの慰謝料額として30万円を認めた。

コメント

身に覚えのない架空請求は無視する、という対応をすることはよくあることです。ただし、万が一、悪質な業者が提訴してきた場合、その手続きを「無視」してしまうと、業者の主張を認めた(自白した)とみなされることがあります(民事訴訟法159条)。その結果、業者の言い分どおりの判決となり、消費者が不利益を被ってしまうことになります。本件はYが適切な対応を取ったため、大事には至りませんでしたが、不安を覚えたり、不当な請求を受けるようなことがあれば、早めのご相談をお勧めします。

コラム

~農村地帯のコミュニティ作りに役立つ区役~

私の住む地区は田園地帯であるため、年3回の「区役」を実施しています。沿革的には「公役」といわれ、公の意識が旺盛であった時代の奉仕活動の名残りであり、区民による共同活動です。

都市では上下水道、地下排水路、道路が整備されていますが、農地(田畑)、水路、河川、農道で囲まれた私の住む地区では、水路等の資源を維持管理しないと、用水・排水障害や病害虫・害獣が発生してしまいます。

この立地環境から、地域ぐるみで取組む生活環境保全活動は不可欠であり、この活動が区役です。農道や河川の法面の草刈りや藻上げ、水路の泥上げなど活動範囲は広きに及びます。

区役当日は区民一人ひとりが草刈機や鎌を持ち寄り、共に汗を流し、休憩時間には近所の情報交換や区への要望などを語り合い、親睦を深め、コミュニティの一体感が生まれます。

また、農家の方々だけでなく、非農家の方々の参加も活発で、今回は2名の新しい参加者を迎えることができました。4月の2日間の参加者は延べ90名。

今後も、自分の住む地域の生活環境は自分達で守るとの理念に基づき、区役への参加者が益々増えていけば最高です。

行政書士法人ヒューマン・サポート 行政書士 藤田 賢司
(司法書士法人ヒューマン・サポート法律支援センター連携行政書士)

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