法エールVol.121

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ご挨拶

新年明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年もよろしくお願い申し上げます。

私は、本年度から、幣司法書士法人の共同代表をさせていただきます、井上勉と申します。若輩者ではございますが、市民の皆様方へ様々な法的サービスをご提供できるように精一杯努力して参りますので、これまで同様にご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。

さて、幣司法書士法人では、毎年、1年間を通しての行動指針として年度方針を掲げておりまして、今年は「自己変革情熱を持ち続けやり抜く力で輝く未来を拓く」としました。なかなか外部環境が見通せない状況ではありますが、司法書士、社員一人ひとりが自己をより成長させることで、どのような外部環境であっても、成長し続ける法人となれるよう、この1年間行動していこうと思います。

話は変わりますが、今年から来年にかけて、民法の相続法の改正が順次施行されます。去年の手続紹介でご説明させていただきましたが、早速1月13日から、自筆証書遺言の方式が緩和され、財産目録については、自書する必要がなくなりました。自筆証書遺言につきましては、来年も大きな改正が施行となりますので、来年の改正以降は、自筆証書遺言を作成する事案が増えてくるのではないかと思います。

本年も、皆様に少しでも法律の情報をご提供させていただき、お役に立つことができれば、これ以上の喜びはございません。何卒、よろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)

民事信託について

はじめに

最近、民事信託のご相談を、いろいろなところから受けるようになりました。

民事信託を使う事例は様々ですが、相続、事業承継、後見等のご相談を受ける中で、信託を使ったほうがいい事案があり、そのような場合は信託をご提案させていただいております。

信託は、他の制度では達成できないかずかずの隙間を埋めてくれる制度であるといえます。

民事信託については、これまでも何度かご説明させていただいておりますが、最近のご相談の増加に伴い、再度ご紹介させていただきます。

民事信託について

信託の構造は、財産をお持ちの方(委託者)が、信頼する方(受託者)に財産の管理や売却を託し、受託者がその管理等する財産の利益を、委託者の指定する者(受益者)に与えるというものです。

例えば、本人名義のマンションがあり、本人がマンションの管理をするには負担が大きく、誰かに任せたい場合に、例えば長男にこのマンションの管理をまかせ、マンションの収益は本人に帰属させるという信託契約を締結することができます。

この場合、委託者と受益者は本人、受託者は長男となります。

信託では、財産管理をすることはできますが、介護サービス契約の締結などの身上監護に関しての権限はありません。また、年金等は信託することはできませんので、信託を使う場合は、遺言や任意後見契約も併用すると安心です。

民事信託で、預ける財産のことを信託財産といいますが、信託財産は、委託者のものではなくなり、受託者名義となります。

そのため、委託者が仮に破産することになっても、信託財産は、委託者の財産ではありませんので、破産手続きに影響を受けることはありません。

その一方で、信託財産は、受託者の固有の財産でもありません。

そのため、信託財産は受託者名義であっても、受託者に対する差押の対象とはなりません。

信託財産は、よく誰のものでもない財産といわれますが、この部分は理解が難しいところです。

 

次回から、信託の事例をいくつかご紹介いたします。

判例紹介

土地の所有権放棄が権利濫用等に当たると判断された事例

広島高裁松江支部 平成28年12月21日 判決

事案の概要

本件土地(境界未確定の山林)は、Xの曾祖母であるAが所有していた。Xの父親Bは、相続によって所有権を取得し、相続登記を行った。

Xは、本件土地を将来的に相続する可能性が高くなったと考え、よく分からない土地を将来的に延々と保有し続けることについて釈然としないものを感じ、「今のうちに自分の責任で財産放棄したいので、本件土地を贈与してもらいたい」とBに申し出て、その了解を得てBからXへ本件土地を贈与による所有権移転登記を完了した。

その上で、「本件各土地の所有権を放棄する旨の単独の意思表示をしたことにより、その所有権を喪失し、本件各土地は所有者のない不動産となった結果、民法239条2項(※1)により、国が本件各土地の所有権を取得した」と主張して、国に対し、土地の放棄を原因とするXから国への所有権移転登記手続をすることを求めた。

第1審判決は、「財産的価値の乏しい本件土地について、その管理に係る多額の経済的負担を余儀なくされることとなるものであることを併せ考慮すれば、本件土地の負担ないし責任を国に押し付けようとするものに他ならず、不動産の所有者に認められる権利の本来の目的を逸脱し、社会の倫理観念に反する不当な結果をもたらすものであると評価せざるを得ないのであって、Bが所有権の放棄を原因として国に所有権移転登記手続きを求めることは権利濫用に当たり許されない」「Xによる本件所有権放棄は権利濫用にあたり無効であり、国は本件土地の所有権を取得していないから、Xの請求は理由がない」として、Xの請求を棄却した。

そこでXが控訴した。

裁判所の判断

国が本件各土地の所有権を取得した場合、国において、直ちに隣地との境界を確定させ、本件各土地の範囲を明らかにする必要があるから、そのために測量費用の支出を余儀なくされるものと認められる。

また、その他本件土地にかかる管理費用等も、土地の「良好な状態での維持及び保存」のために必要であることは明らかであるから、そのための費用の支出も国有財産法9条の5(※2)の規定から直ちに要請されるといわざるを得ない。

以上によれば、不動産について所有権放棄が一般論として認められるとしても、Xの本件所有権放棄は権利濫用(又は公序良俗)に当たり無効であり、国は本件土地の所有権を取得していないから、Xの請求はいずれも理由がない。

これらを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却する。

※1 民法239条2項・・・所有者のない不動産は、国庫に帰属する。
※2 国有財産法9条の5・・・各省各庁の長は、その所管に属する国有財産について、良好な状態での維持及び保存、用途又は目的に応じた効率的な運用その他の適正な方法による管理及び処分を行わなければならない。

コメント

相続登記の依頼を受ける我々の現場においても、価値のない不動産について「どうしたら自分の名義にせずに済むのか」「自分の名義にしない方法はないのか」といった話題が挙がることが多くなりました。

近年、不動産につき価値が認められず、その管理が行われていない、いわゆる「負動産」が社会問題となっています。空き家問題なども含めて、不動産に関する問題は、その相続人や利害関係人などが多数になることもあり、当事者間において解決することも困難を極めることもあります。

相続登記の義務化など、権利関係を正確に登記に反映させる仕組みなども検討されており、法律の改正等、今後の動向が注目されます。

司法書士日記

今年の正月は、孫(男の子、2歳)を連れて、娘夫婦が帰ってきて、それは大騒ぎでした。

ジイジとバアバは、体力が付いていかず、孫が帰った日は寂しさとほっとした気持ちが交錯していました。

話は、変わりますが、先日、年金の請求書を年金事務所に提出してきました。

今後の人生は、マラソンで言えば残り10Kmでしょうか。

私の体験ではゴールのためには根性しかありません。

沿道で応援して下さる皆様に感謝しながら、悔いのないゴールを目指して、一日一日を大切に楽しく積み重ねていきたいと思います。

(清水事務所 司法書士 福永 一郎)

コラム

~足立美術館~

島根県安来市のちょっと山手の方にある美術館です。

数多くの横山大観の日本画が展示してあります。

美術館の創設者である足立全康氏が情熱を傾けて集めた作品群で、その他の所蔵品も北大路魯山人の陶芸作品など素晴らしい作品ばかりですが、、、実はこちらの美術館には日本画と肩を並べるほど美しいものがあります。

それは日本庭園です! !

この庭園は、横山大観の作品の一つをイメージしていて、アメリカの日本庭園専門誌で16年連続日本一に選ばれています。

毎日丁寧に整備されており、塵一つ落ちていないとのことです。

最初は敷地内の庭だけだったそうですが、裏に見える山も館内から見えるため、見える景色は全て美しくないといけない! と裏山も全て購入したそうです。

そこまで徹底されていると見事というほかありませんね。

日々変わりゆく四季折々の景色が見える最高の庭園美術館です。

皆さまも一度お出掛けになってみては!

龍田事務所 伊藤 峰治

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