法エールVol.120

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ご挨拶

弊法人が、この法エールを発刊してから早10年がたち、本号を持ちまして120号になりました。

発刊に関しては、各自の負担を考慮し、毎月ではなく、四半期毎の発行も検討されました。

しかし、4ヶ月の期間をあけたのでは、発行する度毎に、4ヶ月前の発行要領を確認しなければならず、却って効率が悪くなるので、これを習慣化するためにも、毎月発行することにした、という経緯が思い出されます。

情報が溢れ、多忙となった現代において、少しでも自己が関わる負担を軽くしたいと思うのは人情であると思いますが、それでは、大切な法的サービスを迅速に提供できないばかりが、継続発行が危ぶまれるのではないかとの懸念もありました。

法人の永続性のための課題を克服していくためにも、この法エールの発行を継続させ、そのために毎月の発行を実現し、この発行要領を習慣化させるための取組みを優先させようとしたのですが、結果的には、この判断で良かったと思います。

「一以て之を貫く(いつもってこれをつらぬく)」とは、論語の一節であり、恩師の亡伊與田覺先生が特に重要な人生の指針であるとして、ご教授いただきた章句ですが、この法エールの継続発行を貫いたことで、法人の永続性への寄与ができているだでなく、多くの方々とのご縁をいただいたようにも思います。

継続実践することの大切さを再考するとともに、一定の成果が出せたことは、本当に有難いことだと思います。

また、本号を持ちまして、私が寄稿する代表挨拶は最後となります。

来年からは、私と共に弊司法書士法人の共同代表となる井上勉司法書士が、この代表挨拶を担当します。

引退するのは早いのではないかとの声も聞こえるところですが、次のステージに上がっていくための、「発展的引退」であると考えています。

拙い内容であったかと思いますが、お付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございました。

そして、まだまだ未熟な若い代表でありますが、井上勉司法書士にも、皆さまからの倍旧のご愛顧と共にご指導ご鞭撻を賜りますよう切にお願い申し上げます。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

民法(相続法)の改正について

前々回、前回と、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律に関する内容をお伝えしてきました。今回も改正の内容についてご紹介します。

1. 相続された預貯金債権の仮払い制度

現行制度においては、複数の相続人がいる場合、遺産分割が終了するまでは、相続人単独では預貯金債権の払い戻しはできません。

相続人の生活費や、被相続人の葬儀費用、相続債務(最後の入院費など)の支払いなどがある場合であっても、原則として、遺産分割が終わるまでは被相続人が残した預貯金から支払うことができないのです。

そこで、改正法においては、遺産分割の調停(又は審判)の申立てがあった場合、家庭裁判所は必要があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り預貯金債権の全部または一部の仮払いを認めることとしました。

加えて、家庭裁判所の判断を経なくても、以下の金額につき、相続人単独で預貯金の払い戻しができることになります。

但し、金融機関ごとに150万円が上限となります。

預貯金債権の額(口座基準)× 1/3 × 法定相続分 = 単独で払戻しをすることができる額

※この規定は2019年7月1日より施行されます。

 

2. 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策(特別の寄与)

現行制度においては、例えば、被相続人である義父に、長男(既に死亡)と二男、長女がいて、義父と長男の妻が同居し、長男の妻が献身的に義父の介護を尽くしている場合に、長男の妻は相続人ではない以上、遺言書がない限り、義父の死亡後に相続財産を受け取ることはできません。

このように長男の妻と他の相続人との間の不公平な事態が生じることを避けるため、被相続人の相続人以外の親族で、被相続人の療養看護等を行った場合、相続人に対して金銭の支払いを請求することができるとの規定が新たに設けられました。

この金額(特別寄与料)は協議により決めることができますが、協議が調わない場合は、家庭裁判所が、その寄与の時期、方法、程度、相続財産の額等の事情を考慮して、金額を決めることになります。

※この規定は2020年7月1日から施行されます。

 

その他にも遺産分割前に相続人の一部が遺産に属する財産を処分した場合の処理や、相続させる旨の遺言等により承継された財産につき、法定相続分を超える権利の承継については対抗要件(登記など)を備えなければ第三者に対抗することができない、などといった規定が設けられることに
なりました。

相続は誰にでも訪れる問題です。今回の改正は、一部を除き、来年(2019年)より施行される制度なので、注意が必要です。

民法(相続法)改正等に関することについては、お近くの司法書士、弁護士事務所、又は当法人にお問い合わせ下さい。

判例紹介

遺言者よりも先に「相続させる」旨指定された相続人が死亡した場
合の遺言の効力

最高裁判所 平成23年2月22日 判決

事案の概要

平成4年7月7日、夫Bが死亡した。Bの相続人は、妻A、子X女及びC男である。

遺産分割未了のため、法定相続分によりAが1/2 、C・Xが各1/4の共有状態にあった。

翌年2月17日、Aは、司法書士及びその補助者の2名を証人として、「相
続人として承継した不動産(以下「本件不動産」という。) を含む、遺言者の所有又は権利に帰属する財産の全部を、遺言者の長男Cに相続させる」旨の公正証書遺言を作成した。

Cは平成18年6月21日死亡した。Cの相続人は、妻Y1、子Y2、Y3、Y4である。

遺言者Aは、C死亡後の同年9月23日に死亡した。

X女は、Aの遺言は、包括遺贈だから、受遺者が遺言者より先に死亡した場合には民法994条1項(受遺者の死亡による遺言の失効)が適用され、遺贈は効力を失う旨主張して、本件不動産の1/2の共有持分の確認を求める訴えを起こした。

Y1らは、これに対して、「相続させる」旨の遺言は、遺産分割方法の指定(遺産分割協議を経ずに直接当該相続人に権利を承継させる内容)であり、遺贈と解すべきではなく東京高判平成18年6月29判決を引用し、Cの子3人(Y2・Y3・Y4)が代襲相続したから、X女には共有持分権は承継されないと反論した。

裁判所の判断

第1審 X女の敗訴
本件遺言の趣旨を遺産分割方法の指定と捉え、特定の相続人が先に死亡した場合、原則として代襲相続すると考えるのが相当である。

第2審 X女の勝訴
一般論として、被相続人死亡時に相続人が存在する必要があるとし、本件遺言にその効力を代襲相続人に効力を及ぼすと読み取れる記載がない。本件遺言は、Cの死亡により失効した。

最高裁 X女の勝訴(Y1らの上告棄却)
「相続させる」旨の遺言の場合も「通常、遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される」から『当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言作成当時の事情及び遺言者の置かれた状況などから、遺言者が、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である』とした。

コメント

2019年1月13日から自筆証書遺言の要件緩和条項が施行され、2020年7月10日からは、法務局における自筆証書遺言保管制度が開始されます。

こうした中、遺言に関する判例をご紹介しました。

この判例は、公正証書遺言という法律のプロが関与した遺言でも、補充条項(相続させるとした相続人が遺言者より先に死亡した場合に代襲相続人又は受遺者を定める等の条項)がなかったことから遺言が無効になっ
てしまった案件です。

遺言者の意思を正しく相続に反映させるため、司法書士として的確なアドバイスができるよう日々勉強が必要であると痛感させられる判例でもあります。

司法書士日記

温かい秋が続いていましたが、ようやく本格的な冬の季節になりました。

朝の通勤時は薄暗い空の中、少しでもテンションを上げるため、好きな音楽をそれなり?のボリュームで聴きながら車を運転しています。

いわゆる「実力派女性歌手」が好きな私は、朝から声量豊かな歌声を聴き、時に一緒に歌いながら、朝はアップテンポの曲を、夜は心落ち着かせるため、バラードなどのゆっくりした曲を聴いています。

信号停止している際に、隣の車からチラッと見たれたりすると、恥
ずかしい思いをすることもしばしば・・・。

身近には趣味として歌や楽器を楽しんでいる方もいて、来年は仕事の幅だけでなく、教養として歌や音楽の知識も広げていけたらいいな~と思います。

(健軍事務所 司法書士 山﨑 順子)

コラム

~私のイヤイヤ先生~

昨年入社し、法エールには初めて出させていただきます。宜しくお願い致します。

私は今年9月に出産し、二児の子育てに奮闘しております。

妹が産まれた頃から長男が生まれ持った性格か? それとも私の声かけのせいか… ずいぶんとナイーブな男の子になりました。

それが気になって読んだ本では子どもへの声かけの基本は自分が言われたくない言い方を避け、言われたい言い方に置き換える、とシンプルに書かれていました。

息子と言えども一個人… 心地よいコミュニケーションを取って大好きなママでいたいのはもちろん、社会に出ても同じことだと思います。

さらに息子というイヤイヤ先生に特訓を受け、心地のよい人になれるよう努力したいと思います。

薄場事務所 井上 史織

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