法エールVol.118

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ご挨拶

先般、連休を利用して、社員旅行に行ってきました。

一泊二日で、小川島・呼子・宝当神社・ハウステンボス・軍艦島に、バスを中心として移動しました。

皆さんの中には、小川島という場所をご存じない方もおられると思いますが、「鯨墓」が建立されている島です。

「鯨墓」というのは、読んで字の如く鯨の墓のことですが、これを何故建立したのでしょうか?

私が読んだ雑誌によると、鯨への感謝と弔意を示すためだそうです。

ご存知のとおり、日本捕鯨は残虐な行為として非難中傷されることがありますが、鯨油さえ採取すれば、鯨体そのものは海中に投げ棄てて平然たる他国とは異なり、鯨に対する接し方について、日本人は、刺身や湯引き、揚げ物、ステーキなど、多彩なレシピが江戸時代から紹介し、鯨がもたらす恵みをあますところなく受容することこそ、鯨に対する礼儀と見る文化を育ててきた経緯があるということでした。

また、鯨を殺生して人間が恵みを受けることに、日本人は実に真摯で、地域によっては、過去帳に鯨の戒名を載せ位牌も作っていたと紹介されていました(致知6月号)。

このような記事内容を見て、機会があれば現地に行ってみたいと関心をもっていたのです。

そこで、数年前からイカソーメンを食べたいと要望していた社員の願いを叶えつつ、呼子ルートで船に乗り、小川島まで行ったのでした。

実際行ってみると、静かな島の海が見える場所にひっそりと建立されていました。

人間が生きるために殺傷した生き物に対する感謝の想いを感じることができました。

他の場所でもいい思い出ができ、今年もいい社員旅行となったことに感謝いたします。

来年もこのような体験ができるよう頑張っていきます。

また、先月6日に、胆振地方中東部を震源とするM6.7の地震が発生し、北海道厚真町では、震度7が観測されました。

地震による被災を体験したものとして、驚きを隠せませんでしたが、今回の震災によりお亡くなりになった方のご冥福と被災された方へお見舞い申し上げると共に、一日も早い復興を祈念します。

私達も、熊本地震の際には、多くの方からたくさんの支援を頂きました。少しでも、恩返しが出来ればと思います。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

民法(相続法)の改正について

平成30年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立しました。民法のうち相続法の分野は、昭和55年以来、約40年ぶりの大幅な見直しとなります。

今回の相続法の見直しは、相続により残された配偶者の居住の権利を保護するための方策等や、自筆証書遺言の方式の緩和など、多岐に渡っています。

そこで、今回から3回に分けて、この相続法改正のポイントについてご紹介します。

1. 配偶者短期居住権の新設

これまでの判例法理によると、配偶者が被相続人(例えば、夫)の建物に居住していた場合は、原則として、被相続人と相続人(妻)との間で使用貸借契約(タダで貸す契約)が成立していたと推認するとしていました。

しかし、この場合、もし、夫が第三者に建物を遺贈した場合や、夫が生前に、あるいは遺言等で反対の意思を表示した場合には、使用貸借が推認されず、妻の居住が保護されないことが生じる結果となっていました。

そこで、配偶者が相続開始時に被相続人の居住建物に無償で住んでいた場合には、以下の期間、居住建物を無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を取得することとしました。

 

  1. 配偶者が居住建物の遺産分割に関与するときは、居住建物の帰属が確定するまでの間(但し、最低6ヶ月間は保障)
  2. 居住建物が第三者に遺贈された場合や、配偶者が相続放棄をした場合には居住建物の所有者から消滅請求を受けてから6ヶ月

※この規定は公布の日(平成30年7月13日)から2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。

 

2. 配偶者居住権の新設

現行制度では、相続により配偶者が居住建物を取得する場合、他の財産を受け取れなくなってしまうことが生ずることがありました。

例えば、相続人は妻及び子ひとり、被相続人(夫)の遺産が自宅(2,000万円)及び預貯金(3,000万円)の場合、妻及び子の法定相続分は2分の1であることから、妻が自宅を取得した場合、預貯金としては500万円しか受け取ることができず、老後における生活費に不安が生じるという事態が考えられます。

そこで、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする権利(配偶者居住権)を新設することになりました。これにより、相続人間における遺産分割の選択肢の一つとして、又は被相続人の遺贈によって、配偶者に配偶者居住権を取得させることができます。

例えば、先の例では、遺産分割協議により、妻が配偶者居住権を取得し、子がその負担のついた不動産を取得することで、妻がより多くの預貯金を取得できるようになります。

なお、配偶者居住権の負担がついた不動産(負担付所有権)の価値は、建物の耐用年数、築年数、法定利率等を考慮して計算されることになります。

※この規定は公布の日(平成30年7月13日)から2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。

 

3. 長期間婚姻している夫婦間で行った居住用不動産の贈与等を保護

現在、例えば夫(配偶者)名義の自宅(居住用不動産)を、生前に妻に贈与したとしても、夫が死亡したときは、その贈与は遺産の先渡しをしたとして取り扱われることになります。

具体的には、夫が生前に妻に自宅(2,000万円)を贈与した後に死亡し、相続時の財産が預金6,000万円だった場合、残った遺産6,000万円に2,000万円を加えた8,000万円を遺産とみなし、妻は法定相続分2分の1である4,000万円を受け取ることになります。

しかし、妻は生前に既に2,000万円の自宅を贈与で受け取っていることから、実際は2,000万円の預金を相続することになります。生前の贈与等は、配偶者の長年にわたる貢献に報いるとともに、老後の生活を保障することを目的としてなされることが多いことから、改正により、居住用不動産の贈与、遺贈については、原則として遺産の計算をするにあたり、遺産の先渡しを受けたものとして取り扱わなくてよい(持ち戻しの免除)とされることとなりました。

※この規定は公布の日(平成30年7月13日)から2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。

 

(次号へつづく)

判例紹介

遺留分減殺請求事件

最高裁判所第二小法廷 平成30年10月19日 判決

事案の概要

(1)亡Aは、亡Bの妻であり、上告人・被上告人及びCは、いずれも亡Bと亡Aとの間の子である。Dは、亡B及び亡Aの養子である。

(2)亡Bは、平成20年12月に死亡し、その法定相続人は、亡A・上告人・被上告人・C及びDである。

(3)亡A及びDは、亡Bの遺産についての遺産分割調停手続において、被上告人に対し、各自の相続分を譲渡し、同手続から脱退した。

(4)亡Aは、平成22年8月、全財産を被上告人に相続させる旨の公正証書遺言をした。

(5)亡Bの遺産につき、上告人・被上告人及びCの間において、平成22年12月、遺産分割調停が成立した。

(6)亡Aは、平成26年7月に死亡し、その法定相続人は、上告人・被上告人・C及びDである。

(7)亡Aは、その相続開始時において、約35万円の預金債権を有していたほか、約36万円の未払介護施設利用料債務を負っていた。

(8)上告人は、平成26年11月、被上告人に対し、亡Aの相続に関して遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をした。

裁判所の判断 破棄差戻

共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは、・・・従前から有していた相続分と上記譲渡に係る相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割手続等に加わり、当該遺産分割手続等において、他の共同相続人に対し、従前から有していた相続分と上記譲渡に係る相
続分との合計に相当する価額の相続財産の分配を求めることができることとなる。

このように、相続分の譲渡は、・・・譲渡人から譲受人に対し経済的利益を合意によって移転するものということができる。

したがって、共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する「贈与」に当たる。

コメント

本件は、相続分の譲渡が、亡Aの相続において、その価額を遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与(民法1044条903条1項)に当たると判断しました。

遺留分額の算定は、実務においては基礎になる財産の判定が難しい場合がありますが、今後は、相続分の無償による譲渡の場合は、当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、遺留分算定の基礎財産に含まれることになりますので、注意しておく必要があります。

司法書士日記

寒くなってきましたね。

どんなに寒かろうと一番に目覚め、部屋を暖める係は、母親の私の役目です。

寒いと起きるのが辛いという感情をすこしでも緩和するために、実践していることがあります。

それは、ものすごく厚着して眠ることです。

ヒートテックに厚手のパーカーを着て、その上にダウンコートにも負けず劣らずの厚手のガウンを羽織り、厚手の靴下まで履きフル装備です。

体温調節機能をマヒさせそうなので、健康にはあまりよくないかもしれませんが、朝起きるのが辛い方には、おすすめです☆

(龍田事務所 司法書士 野口 芽久美)

コラム

~妻の弁当~

今から3年前、県外に勤務していた長男が熊本に転勤となり、自宅から通勤することになりました。

高校時代、バスケ部に所属していた長男のために、妻が毎日弁当を作っていましたが、卒業後は、朝の早起きから開放されていました。

ところが、久しぶりに弁当作り再開となったのです。

それまで私の昼食は、コンビニの惣菜やパンでしたが、幸運にも職場に妻の手作り弁当を持参できることになりました。

卵焼き、天ぷら、鶏のから揚げ、ハンバーグなど長男の好物が中心ですが、以前と違うのは、27歳の長男と59歳の私の健康面を考え、カロリー、塩分、糖分を控え、肉は湯通しをする等、手間をかけてくれています。

ケチャップでメッセージを書くなんてことはありませんし、見た目も地味ですが、ひとつひとつ丁寧におかずを詰めてくれます。

毎日食べても飽きない素朴で懐かしい味です。

子供が幼い頃、公園で風呂敷を広げ、おにぎりを頬張った事を時々思い出します。

朝5時に起きて台所に立っている妻に、「それ、弁当のおかずだからつまみ食いしないで! 」と叱られながらも、今日も心から感謝です

健軍事務所 上野 庸祐

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