法エールVol.117

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ご挨拶

先般、機会があってエクスターンシップとして九州電力熊本支社に行ってきました。

事前に差入れた「誓約書」に抵触しない範囲で、公表されている内容を中心に私が感じたことをお伝えしていきます。

まず、日本のエネルギー自給率は、8%であることが驚きでした。

埋蔵資源として石油があと51年、石炭があと153年、天然ガスがあと53年、ウランがあと102年であるということで、節電の大切さが身に浸みました。

また、電力会社と言えば、今後の原子力発電所の安全性が気になるところです。

この点について、佐賀県にある玄海原子力発電所の見学の中で、担当者の方からの説明がありました。

「機械は故障し、人はミスを犯すもの」ということを念頭に、異常が起きた場合に、原子炉を「止める」しくみ、そして、「冷やし」、放射性物質を「閉じ込める」しくみで何重もの安全対策を採用しているという内容でした。

このような安全策を講じていながら、どうして福島原発では未曾有の大惨事となったのかと思ったのは、私だけではなかったと思いましたが、担当者の熱心な説明に聞き入り、誰もこの点については、質問をしませんでした。

私が特に印象に残っているのは、「ずっと先まで、明るくしたい」という九電グループの想いが、組織の隅々にまで浸透され、その結果、一人ひとりが使命感をもち仕事に携わっておられるということでした。

現場で起きていることを、いち早く責任者に伝える仕組みをつくっているのは、どこの企業も同じであると思いますが、熊本地震の時の対応の話を聴いたときに、「電気を届けたい」という現場の人の意識の高さが、責任者に伝達するまでの時間の速さに反映されているように思いました。

私達の法人も、これまで以上に身近な法律の専門家としての使命感を持ち、理念を浸透させ、いち早く情報の共有ができるように努めていきます。

貴重な体験をさせていただいたことに感謝したいと思います。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

遺産分割の基本について

前々回から基本的な遺産分割についてQ&A形式でお伝えしておりますが、最終回は寄与分がある場合の遺産分割についてお伝え致します。

【自営業を手伝っていた相続人は、財産を多く相続できる?(寄与分)】

Q: 私は父親と2人で家業を行ってきましたが、父親の死亡後、離れて暮らしていた弟が父親名義の財産はすべて均等に分割すると言ってきました。

私が働いて父親の財産を増やしたことは考慮されないのでしょうか。

 

A: あなたが父親の家業に従事し、その仕事ぶりが事業の継続・発展にとり大変重要な役割を果たした結果、父親の財産が増加し、他方であなたには仕事内容に比して十分な労務対価が支払われていないなどの場合には、財産の増加分だけ他の共同相続人より多く遺産を相続できます。

寄与分とは、共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者がある場合に、被相続人が相続開始において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、法定相続分又は指定相続分に寄与分を加えた額をもって、その者の相続分とすることにより、共同相続人間の実質的な公平を図ることを目的とする制度です。(民法904条の2)

寄与分が認められるためには、①特別の寄与行為であること、②寄与行為がなされた結果、被相続人の財産が増加し、または減少を免れたという因果関係が必要です。

特別の寄与行為とは、被相続人と相続人の人的関係に照らして通常期待される程度を超える貢献ですから、夫婦間や親族間での通常程度の扶養はこれには当たりません。(民法752条・877条1項)

寄与分は、共同相続人の協議で定めるのが原則ですが(民法904条の2第1項)、この協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、特別の寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定めます。(同条2項)

例えば、被相続人Aに配偶者B及び子C、Dがあり、相続財産の価額が5,000万円、Cの寄与分が2,000万円であった場合の各共同相続人の相続分は次のとおりです。

配偶者B (5,000万円 – 2,000万円)× 1/2 = 1,500万円
子C (5,000万円 – 2,000万円)× 1/4 + 2,000万円 = 2,750万円
子D (5,000万円 – 2,000万円)× 1/4 = 750万円

当法人でも、家庭裁判所に寄与分を定める処分の申立書類作成業務等を承っております。まずは、お気軽にご相談ください。

 

※参考文献:くらしのQ&A 身近なトラブル解決法 日本女性法律家協会

判例紹介

飼い猫の尻尾の一部を切断した事業者とトリマーの責任

東京地裁 平成24年7月26日 判決

事案の概要

Xら家族は、2001年12月に知人から購入した猫を、大切に育ててきた。

Xは、2011年4月20日、ペットの美容業やペット専用ホテル業等を主な事業とするY1の店舗を訪れ、猫のトリミングを依頼した。

担当したY2は、背中からバリカンをかけ始め、脇腹までかけた辺りで、ある程度の毛玉を切って視野を良くしようとハサミを入れていたところ、誤って猫の尻尾の一部約5cmを切断した。(猫は切断された当時9歳7ヶ月)

猫は、本件事故直後に病院に運ばれ、診察を受けたが、その時、尻尾の切断部分は尾骨が露出しており、出血していた。

担当の獣医師は、尾の皮膚を切開し、骨を露出させ、関節1個分の骨を切断し、皮膚を縫合する手術を施した。

猫が2011年6月10日まで通院治療を受けたところ、傷はふさがり、後遺症は見られない。

Xらは、猫に対する所有権を侵害したとして、Y1に対しては民法715条(使用者責任)、Y2に対しては同法709条(不法行為)に基づき、以下(1)~(3)の内容の損害賠償請求をした。

(1)Xら全員の損害として、猫の未払治療費520円(それ以外の治療費は賠償済)、猫の通院等についての損害((a)通院交通費合計8,400円、(b)猫が食欲がなくなり痩せて体調を崩したため行われた猫の健康診断の費用1万500円、(c)本件通院期間中の経過報告書の作成費用3,150円)、猫自体の財産的損害5万円(容姿を損なっただけでなく、以前のように軽快に走ったり、動き回ったりすることがなくなり、人や物音を異常に警戒するようになった)

(2)X家族の母特有の損害として、精神的に大きなショックを受け、猫の通院や介護のために肉体的、精神的に疲労し、体調不良に見舞われ、通院を余儀なくされたことによる治療費および薬代合計6,540円、社交ダンスの講師をしている母が体調不良によりレッスンの中止を余儀なくされた休業損害合計12万6,000円。

(3)X家族4人に各自に10万円の慰謝料。

裁判所の判断

裁判所は、未払治療費、猫の通院にかかる交通費、健康診断料、経過報告書の作成費については認めたものの、猫自体の財産的損害、X家族の母の体調不良による治療費や、そのために休業した損害は認めず、慰謝料の算定の中において考慮するのが相当として、以下のとおり判断した。

ペットは法的には「物」として処理されることになるが、生命のない動産とは異なり、生命を持ちながら自らの意思を持って行動し、飼い主との間には種々の行動やコミュニケーションを通じて互いに愛情を持ち合い、それを育む関係が生まれるのであるから、その意味では人と人との関係に近い関係が期待されるものである。

ただし、猫の傷害は尻尾の一部(約5cm)を切断したにとどまり、現在は傷も癒えている。猫との間でXらが本件事故前と同じような関係を回復することは容易でないとしても、再び以前と同じような良好な関係を築けないとは断定できないこと、猫は本件事故当時、9歳7ヶ月と高齢であり、平均余命からみると、今後さほど長い期間生命を維持することは一般的に困難とみられること等を総合考慮すれば、Xら全員分(4人)として10万円であると認められる。母の精神的・肉体的苦痛はより大きかったことなどから、母の慰謝料額は4万円、その余のXらは各2万円であると認めるのが相当である。

コメント

現在の法律では、ペットは『物(動産)』という扱いです。基本的には『物』が毀損された場合は、精神的苦痛による損害賠償が認められることは少ないのですが、ペットも家族の一員であるという考えから、上記のような判断がなされたのではないかと思われます。ペットが事故などで死亡した際の損害賠償で認められる額は少しずつ上昇傾向にあるようです。

司法書士日記

9月は、我が家にとってイベントの多い月です。

まず、9月16日(日)は、福岡サンパレスで山下達郎コンサートに行き、9月22日からの3連休は、東京の孫に会いに行ってきます。

いずれも、旅のお供はかみさんです。

いつまで一緒に旅ができるか心配な年齢になってきましたので、思い切って行くことにしました。

司法書士は、24時間365日心休まる時はないのですが、家族との小さな思い出を積み重ねて豊かな人生にできたらと思っております。

ところで、山下達郎のコンサートでは、入場の際、写真付の公的証明で本人確認をします。

当日も一人ひとり丁寧に行われていました。

本人確認が必須の業務である司法書士として、改めて本人確認の重要性を認識させられました。

(清水事務所 司法書士 福永 一郎)

コラム

~サーモン~

先日、小学生の甥、姪達と一緒に食事に行った時の事です。

常日頃お肉大好きの子供達が競って注文したのが、『サーモンのお刺身』。

魚嫌いの子供達もサーモンは別物らしく、大好物なのです。

サーモンをお刺身やお寿司などで、生で食べるのは少し抵抗のあった私でしたが、義妹の「お姉さん、サーモンはスーパーアンチエイジングフードなんですよ」という言葉に速攻迷わず一口!

(ちなみに統計によると30代以降の方が幼少期に生でサーモンを食べる機会はなかなか無かったみたいです)

綺麗な色の見た目の華やかさと同様、クセが無く脂がのった上品なお味でした。

なるほど最近のサーモン大人気の理由が分かりました。

これからは固定概念にとらわれず、もっと美味しいものを楽しみたいと思う出来事でした。

健軍事務所 春本 祐子

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