ご挨拶
今年は危険な暑さが続いていますが、皆さんお変わりありませんでしょうか?
さて、このような暑さの中、先般奇跡的な体験をしましたので、これをご紹介したいと思います。
ある地域で法律相談が行われることになり、私もこれに参加することになっていました。
少し早く着いたので、近くの建物内で資料の読み込みをしていました。
そこで、偶然にも以前から知り合いの司法書士の奥様と出会い、挨拶を交わした後、奥様の方から「ぜひ主人の事務所に立ち寄って欲しい。」ということでしたので、資料の読み込みが終わり次第伺うことにしました。
その資料の読み込みが一段落し、事務所に伺う準備のため資料を片付けていたところ、1枚の資料が床に落ちました。
座ったままの姿勢で勢いよく取ろうとしたために、何とズボンの右足内側太腿付近が大きく破れてしまいました。誰が見てもわかる程度の破け方で、応急的に持っていたダブルクリップで挟んで、その事務所へ向かいました。
さて、どうしたものか歩きながら、先ほど出会った奥様に縫物をお願いしようか、しかし、ズボンを脱ぐのも恥ずかしいなと思案にくれながら、その司法書士に電話をかけ、今向かっている旨伝え、補正の話をした瞬間、何気なく右方向を見たら、何と「服・ズボンの補正します」の看板が掲げてある店があったのです。
すぐに電話を切り、その店に飛び込み事情を話して、すぐに破けたズボンの補正をしてもらいました。
約15分程度、店内の玄関付近でズボンを脱いだままの姿は情けなさを感じましたが、素早く対応したもらいました。
まさに、知らない土地で体験した、偶然かつ奇跡的な出来事でした。
補正後、知り合いの事務所に行き、これまでのいきさつを話しました。(その知人は、補正と聞いたので申請書の補正のことだと思ったようでした。)
その後、法律相談や懇親会も無事終了し、安心して楽しいひと時を過ごすことができました。
今振り返っても不思議な体験です。
そして、今でも、その時に頂いた領収書を大切に保管しています。人生には、このようなこともあるのですね。
機会あれば皆さんの奇跡的な体験聞かせてください。
それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。
(代表社員 大島 隆広)
遺産分割の基本について
前回から基本的な遺産分割協議についてQ&A形式にてお伝えしておりますが、今回は相続人に特別受益(婚姻や養子縁組、生計の資本として受けた贈与)がある場合の遺産分割協議についてお伝え致します。
【過去に事業資金を出してもらっているときの遺産分割(特別受益)】
Q: 父は預金2,000万円を遺して亡くなりました。相続人は私と兄の二人です。兄は、生前に父から飲食店の運営資金として1,000万円貰っています。公平な遺産分けをどのようにするのでしょうか。
A: 兄が生前に父から貰った運営資金1,000万円を相続開始時の相続財産2,000万円に加算して合計3,000万円をみなし相続財産とし、これに相続分を掛け合わせて各相続人の取得すべき相続分を算出し、兄については取得すべき相続分から贈与を受けた1,000万円を差し引きます。
共同相続人間で遺産を分割する場合、通常は相続財産に各相続人の法定相続分を掛ければ各相続人が取得すべき遺産の額が算出されます。しかし、共同相続人の一部に被相続人から生前に利益を受けている者がいる場合には、それを遺産分割の際に考慮しなければ不公平になります。
そこで民法903条は、共同相続人中に被相続人から遺言により贈与を受け、または生前に婚姻もしくは養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けた者がある場合には、その受益額を相続開始時の相続財産に持ち戻した(加算した)ものを相続財産とみなし、これに相続分を乗じて各相続人の取得すべき相続分を算出し、受益者については取得すべき相続分から受益額を控除して具体的な相続分を算出することにより、共同相続人間の実質的な公平を図ることを目的とする制度が定められています。
持ち戻しの対象となるのは、遺言による贈与であればその目的を問わず全て対象となりますが、生前贈与であれば婚姻や養子縁組、あるいは生計の資本としての贈与に限られます。
今回のケースでは、兄の生計の資本として事業の運営資金に充てるため贈与され、かつ相当高額であることから特別受益に当たると思われます。
よって、具体的な相続分としては、相続人が2人ですので1人の取得分が3,000万円(みなし相続財産)× 1/2 = 1,500万円ですから、遺産の預金2,000万円のうち、兄が1,500万円 – 1,000万円で500万円、あなたが1,500万円を取得します。
詳しくは、当法人にお気軽にご相談ください。
次回は、寄与分がある場合の遺産分割についてご紹介致します。
※参考文献:くらしのQ&A 身近なトラブル解決法 日本女性法律家協会
判例紹介
抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受けた場合における抵当権自体の消滅時効
平成29年(受)第468号建物根抵当権設定仮登記抹消登記手続請求事件に係る最高裁第二小法廷 平成30年2月23日 判決
事案の概要
1. 今回ご紹介する判例は、免責許可決定の効力を受けた債権を被担保債権とする抵当権について、債務者が消滅時効に基づく抵当権抹消登記手続を求めたのに対し、高裁は、民法396条を根拠に消滅時効にはかからないと判示しましたが、最高裁は、この場合民法396条は適用されず、民法167条2項所定の20年で消滅時効にかかると解するのが相当とした事案です。
2. 以下、事案を根抵当権設定仮登記から抵当権設定に置き換えて説明します。
(1)原告X及び被告Yは、平成13年にYのXに対する貸金債権300万円を被担保債権とする抵当権を設定しました。
(2)原告Xは、平成17年破産手続開始・破産手続廃止の決定、平成18年免責許可決定を受け確定しました。
(3)原告Xは、被告Yに対し、本貸金債権につき消滅時効が完成し、本件抵当権も消滅したと主張して、抵当権設定登記の抹消登記手続を求めた事案です。
3. 原審(福岡高裁)は、⑴本件貸金債権は、免責許可の決定の効力を受ける債権であるから、消滅時効の進行を観念することができない(被担保債権は、免責許可の効力によって、訴訟・強制執行の方法で強制的に回収することができない債権となっています。
つまり、債権者はその権利を行使できません。
消滅時効は権利の行使が可能になった時から進行するとされていますので、免責債権は消滅時効の進行が観念できないと解されています。(最高裁第三小法廷平成11年11月9日判決)
(2)民法396条により、抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対してはその担保する債権と同時でなければ時効によって消滅しないから(同条は、債務者や抵当権設定者について、被担保債権が残っているのに、抵当権だけが消えてしまう不合理を避けるための規定と解されています。)、上告人(原告X)の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。として、原告Xの控訴を棄却しました。
4. 最高裁は、原審の(1)の判断は是認できるとしつつ、(2)の判断は是認できないとしました。
その理由は、(2)民法396条は、被担保債権が時効により消滅する余地(可能性)があることを前提としているものと解するのが相当である。そう解さないと(免責された被担保債権の場合など)いかに長期間権利が行使されない状態が継続しても消滅しない抵当権を認めることになる。
これは、法に規定のない消滅時効の制度を創設することになる。とまで言っています。
そして、抵当権は、民法167条2項の「債権又は所有権以外の財産権」に当たり、当該抵当権自体が20年の消滅時効にかかると解するのが相当としています。
したがって、抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合には、民法396条は適用されず、債権者及び抵当権設定者に対する関係においても、当該抵当権自体が、同法167条2項所定の20年の消滅時効にかかると解するのが相当である。と判示しました。
しかし、結論においては、抵当権を行使することができる時から20年経過していないことは明らかとして、上告を棄却しました。
コメント
破産法は「破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者」の権利については「破産手続によらないで行使することができる」旨規定しており、これを別除権と言います。
したがって、破産手続開始決定や免責許可決定がされても、抵当権については何ら影響はないと解されています。(ただし、「不足額責任主義」により、抵当権で回収できなかった債権残額だけが破産配当の対象となります。)
なお、この場合の別除権付債務は、破産手続によらずに担保権の実行により回収することが可能な債務であるにすぎず、免責により自然債務となるものと解されています。
抵当権の設定のある被担保債務者が破産申立をした場合、通常、債権者は債権回収のため抵当権を実行します。
しかし、貸金業者は、事実上担保権の実行は難しいが、とりあえず何かの担保を取るという意味で、担保権を設定したりします。
今回の事案も、建物の共有持分のみに根抵当権を設定していた事案で、そもそも、仮登記のままでは抵当権の実行はできません。
今回は、破産手続で免責許可決定された被担保債務については、消滅時効の進行が観念できないが、この場合、民法396条は適用されず、民法167条2項に基づき抵当権自体が消滅時効にかかると判示した最高裁判決をご紹介しました。
コラム
~「泥染め」体験~
先日、山鹿の八千代座の周辺で染物体験をしました。
今回の染料は、植物ではなく「泥」。
地元・不動岩のふもとの「赤土」とチブサン古墳の朱色にも用いられている「ベンガラ」の2種類。
これらを混ぜたり、染める順番を調整することで、ピンク・黄色・オレンジ・白の美しく繊細なグラデーションを生み出すことができます。
また紐での絞り方で、模様も無限大。とても簡単なので、子どもにも大人気だそうです。
山鹿に行かれる際には、世界に一つだけのハンカチやストールを作ってみてはいかがでしょうか。
薄場事務所 髙岡 愛
司法書士日記
先日、熊本市内で開催されたとあるイベントに参加しました。
内容は、よりよいプレゼンテーションを行うための練習の場として、自分の仕事や活動していること等を20枚のスライドが20秒ずつ映し出される間に発表するというもの。
私はそのプレゼンを聴く立場で参加しました。
夏休み期間中ということもあり、小学生から高校生のプレゼンもあり、短い時間に伝えたいメッセージをどのように伝えていくか、その言葉遣いや声のトーンや表情など、とても工夫されていました。
社会人の発表では、様々な業種の方がプレゼンされ、皆が知らない新しい分野の話になると、「お~」と歓声が上がることも。
よく「司法書士さんってどんなお仕事しているの?」と聞かれることもあり、我々の仕事を知っていただくためにも、このようなプレゼン技術を磨いたり、異業種の方との交流がもっと必要だと感じたイベントでした。
(健軍事務所 司法書士 山﨑 順子)
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