法エールVol.109

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ご挨拶

皆様、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

年が明けてからしばらくは、天候も良かったようですが、成人式が終わってからの日本列島は寒波に見舞われ、雪の被害も多く出ているようです。私も、今年の寒さは身に浸みています。

さて、毎年当法人では、年度方針を立てていますが、平成30年度の年度方針を、「一剣一燈己を高め、人が輝き、社会を照らす」としました。

各自が持っている長所(剣)を磨き続け、法の光を照らしながら、一人でも多くの人を幸せにして欲しいという思いです。身近な人に法の光を当てるだけでなく、知識をより磨き、その人自身を輝かせる実力をも身に付けて欲しいという思いもあります。

そして、今年は、法人の中でまだ司法書士の資格のない人に、司法書士試験に合格してもらうための組織的な支援もこれまで以上に取り組んでいきます。仕事をしながらの受験ということになり、大変な面もありますが、より良い法的サービスのため、そして、自分自身の自己実現を果たし、より自己を輝かせるためにも、一生勉強をしていく志を貫いて欲しいと思います。

皆さんも、一年の計を立てられたことと思います。

ぜひ、その計を現実のものとし、心願成就されますこと祈念いたします。私も、熊本の復興とともに、くじけずに頑張っていきます。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

民法(債権関係)改正のポイント

平成29年5月、民法の債権関係の規定(契約等)を大幅に見直す「民法の一部を改正する法律」(以下、「民法改正法」といいます。)が成立しました。

民法の債権関係の規定(契約等)は、明治29年(1896年)に民法が制定されてから、約120年間ほとんど改正がなされていませんでした。この間、我が国の社会・経済の状況は大きく変化しており、取引に関する基本的なルールを定めている民法の規定を、この社会・経済の変化に対応させる必要がありました。また、民法が定めるルールの中には、裁判や取引実務では通用していても、条文では読み取りにくいものもあり、国民一般にとって分かりにくいものとなっていました。

そこで、民法のうち債権関係(契約等)の規定について、社会・経済の変化への対応を図り、また、国民にとって分かりやすいものとすることを主な目的として改正が行われることになりました。

改正の項目を小さいものまで含めると合計200程度になります。

そこで、今回からは、改正される民法の主な点につき説明をします。

なお、民法改正法は一部の規定を除き、平成32年(2020年)4月1日から施行されます。

民法改正の主な項目

  1. 消滅時効に関する見直し
  2. 法定利率に関する見直し
  3. 保証に関する見直し
  4. 約款(定型約款)に関する規定の新設
  5. 意思能力(判断能力)を有しないでした法律行為の無効の明記
  6. 債権譲渡に関する見直し(将来債権の譲渡)
  7. 賃貸借における敷金ルールの明文化

消滅時効の見直し

現在、債権の消滅時効を原則10年としつつも、飲食店の代金は1年、弁護士の報酬や小売の売掛代金は2年、医師の診療報酬は3年など、業種ごとに短期の時効期間が定められていましたが、複雑で分かりにくく、この区別も合理性に乏しいという指摘がなされていました。

そこで、民法改正法ではこの業種ごとの短期消滅時効の規定は廃止し、原則、「権利を行使することができる時から10年」もしくは「権利を行使することができることを知ったときから5年」のどちらか早い方の経過によって時効が完成するとしました。

但し、不法行為による損害賠償請求権(例えば、他人の物を過失で破損してしまった場合など)は、損害及び加害者を知ったときから3年、不法行為の時(物を破損したとき)から20年(除斥期間)とする現在の規定は、例外として維持されることになりました。また、不法行為であれ債務不履行であれ、生命・身体への侵害による損害賠償請求権(例えば、交通事故や医療ミスの場合など)は、その法益の重要性にかんがみ、権利を行使することができることを知ったときから5年、権利を行使することができる時から20年(時効期間)とする特則が設けられました。

(次号につづく)

判例紹介

女性専用車両の違法性

東京地裁 平成23年07月12日 判決

事案の概要

Y(鉄道会社)は、6両編成車両のうち、平日の始発から午前9時までの上り列車の最後部車両1両および午後6時以降A駅を発車する下り列車の先頭車両1両を、女性および小学生以下または身体の不自由な人(その介助者を含む)が乗車するための専用車両(以下、女性専用車両)と設定し、その旨を当該車両および駅のプラットホーム内に掲示した。女性専用車両に反対する任意団体は、特定の日時を指定し、その構成員とされるXら(男性ら5名)がA駅に赴き、午後8時24分発B駅行き区間電車に設定された女性専用車両に乗車した。上記予告を受けて、同日YのA駅駅長は、鉄道警察隊に連絡を取って事前に待機し、Xらに対し、上記女性専用車両に乗車しないよう説得を試みたが、不調となり、鉄道警察隊4名、警備員2名とともに、同車両に乗車した。同車両は定刻に発車し、午後8時30分頃にC駅に停車するとXらは鉄道警察隊員らとともに女性専用車両から下車した。

Xらは、女性専用車両は、本来誰でも自由に乗車できるものであるにもかかわらず、Yは健常な成人男性の乗車を事実上禁止しており、当該行為は憲法で保障された居住・移転の自由を侵害するとともに法の下の平等に反し、不法行為に該当すると主張した。

判決の要旨

現在、Yを始めとする多くの鉄道運行事業者が実施している女性専用車両の設定は、平日の通勤通学の時間帯に相当な混雑をする首都圏等大都市圏の通勤電車において、痴漢犯罪の被害を受けるおそれのある女性の乗客に対し、少しでも安心、快適な通勤通学環境等を提供するために行われていると解せられ、これは目的において正当というべきである。しかも、本件鉄道において、女性専用車両が設定されるのは、平日の通勤時間帯の一部電車で、しかも設定されるのは6両編成の車両のうちわずか1両のみに過ぎず、これは健常な成人男性の乗客をして他の車両を利用して目的地まで乗車することを困難ならしめるものではないから、健常な成人男性の乗客に対し格別の不利益を与えるものでもない。Y女性および小学生以下または身体の不自由な人(その介助者を含む)が乗車するための専用車両であると掲示したことをもって、女性専用車両の表示に関するYの裁量権を逸脱した違法なものと評価することは相当でないし、これが社会的相当性を欠いた、男性の乗客に対する不法行為を構成するということもできない。

コメント

本件は、鉄道会社が女性専用車両が健常な成人男性の利用を事実上禁止したとしても、憲法で保障する居住・移動の自由(憲法22条1項)を侵害するものではなく、法の下の平等にも反しないとしました。現在、痴漢犯罪の問題は社会問題となっていますが、痴漢の被害を防ぐだけでなく、痴漢の冤罪を防ぐためにも、女性専用車両を設けることは必要な対策として一般に受容されています。多くの人が利用する公共機関において、このような対策を取ることは、犯罪防止の観点からも今後ますます必要になってくるのかもしれません。

司法書士日記

今年も2月18日、熊本城マラソンの日が近づいてきました。

今年も昨年と同じように、フルマラソンの抽選に当選し走るのですが、「走るの好きですか?」と問われると、正直きついし好きではないなと言うのが答えです。

ではなぜ走るのか、昨年は運動不足解消のための最終目標のみたいなもので走ったのですが、全身筋肉痛になるは、その日に夜熱をだすはで、散々な目に遭い来年はやめておこうかなという気分が強かったのですが、なぜだか申込みの日になったら不思議と申込みを済ませていました。

考えてみたら、当日の朝のスタートラインの非日常の光景、走っている沿道の景色、ゴールした時の感動そういったものがきつい苦しいという思いより強かったのでしょう。

今年も2月18日に向けてぼちぼちトレーニングを続けています。

今年はどんな感動が待っているのでしょう。ちょっと楽しみです。

(健軍事務所 司法書士 小山 信一郎)

コラム

平成30年 飛躍の年に!

平成30年、新たな年が始まりました。

「平成」からもう30年なんですね。「平成」と年号が変わった時、私は何をしていたかというと、当時中学校3年生(年齢がバレる(笑))、「平成」に変わった翌日に同級生と故郷水俣から電車で1時間かけて熊本市内で行われた高校受験の模擬試験を受けに行きました。

早朝から夕方まで行われ、模擬試験が終わり、同級生と静まり返った下通を歩いて熊本駅まで向いました。

なんとなく「昭和が終わったんだな。」との寂しさと「新たな時代が始まる。」とドキドキした両方の感情を抱いた日だったと記憶しています。

どちらかというと「新たな」という感情に思いを馳せ、残り2ヶ月高校受験に向かってがむしゃらにがんばって希望する高校に合格という結果を出したという思い出です。

あれから30年、そして来年は年号が変わります。

今年はこの「平成」時代に経験・体験した出来事、そして出会った全ての方々に感謝し、中学校3年生の頃のようにがむしゃらにがんばってやりぬく飛躍の年にします!

(龍田事務所 中村 享子)

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