法エールVol.107

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ご挨拶

世の中には、不可解な痛ましい事件が発生することがあります。神奈川県座間市の連続殺人事件もその一例であるといえるでしょう。

自殺願望のある女性等をネットで検索し、直接連絡を入れ、自分のアパートに招き入れ殺害したというものです。そして、自殺願望者に実際に会ってみると、本当に死にたいという人はいなかった、と供述しているところからみると、殺害に至った動機・真相はますまる謎に包まれているといえるでしょう。

刑法上、自殺をしたいという人の自殺行為に関わると犯罪と罰せられます。自殺する人は無処罰ですが、この行為に関わると処罰されるのです。そして、この自殺関与には、自殺幇助と自殺教唆があり、また、別に同意殺人という犯罪もあります。

いずれも、殺人罪の減刑類型であり、法定刑は全て、6ヶ月以上7年以下の懲役又は禁錮と殺人罪よりも軽く、これらの罪の未遂も罰せられます。

また、痛ましい事件と言えば、熊本においても、平成23年に当時3歳の幼児を殺害し、遺棄したという事件がありました。当法人の清水事務所の近くで発生した事件でもあり、事件直後は現場に行き、ご冥福を祈らせていただいた記憶があります。

犯罪は、犯罪被害に遭った方だけでなく、そのご遺族にも大きな影を落としますが、「代受苦者」という言葉もあるように、他人事で済ませるのではなく、自分のこととして、これらの方々への支援も大切であると思います。

今月25日から来月1日までは、「犯罪被害者支援週間」ですが、当法人と連携している「NPO法人身近な犯罪被害者を支援する会」では、この週間にちなんで講演会とシンポジウムを開催します。私もパネラーとして登壇する予定ですので、お時間ある方は是非ご出席していただければと思います。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

信託

先月より、最近注目を集めている信託の活用についてご紹介しています。

前回は、任意後見と信託の併用、後継ぎ遺贈型受益者連続信託の事案を説明しました。今回は、社会問題化している事業承継にからんだ信託のスキームをご説明します。

事案

株式会社甲の代表取締役A(60歳)には、長男B、二男C、長女Dがおり、Bが、株式会社甲の取締役をしています。

Aは、60歳を機に、Bに株式会社甲の代表取締役を引き継がせたいと考えていました。Bは、代表取締役となることを了承しており、株式会社甲をもっと成長させたいという意欲を持っています。

Aは、株式会社甲の株式を100%所持しており、将来的にはBにすべての株式を承継させたいと考えています。

現在の株価は総額で300万円程度です。Bが会社の業績を伸ばすことにより株価が上がると、株式購入資金が用意できず、Bに株式を承継させることが難しくなります。ただ、すぐに渡してしまうのも株主権行使の点で不安があり、もう少し様子をみたいという気持ちがあります。

検討

上記の事案は、株式の譲渡のタイミングをいつにするかということが問題となっています。業績のいい会社は、株価が高く、後継者に承継することが困難です。承継させるために、株価を下げたり、銀行から融資を受けたり、経営承継円滑化法を活用したりと、会社ごとで様々な対策を講じています。

本件では、まだ株価が安く、すぐにでも承継すれば、税金も少額で済みます。しかし、Bは経営者としてはまだ未熟な面もあり、株式をすべて渡すことには抵抗があります。

この場合、信託を利用して解決できないか検討してみます。

信託には、自己信託というものがあります。これは、委託者と受託者を同一人として、信託契約を結ぶもので、契約当事者が同一人であるため、原則公正証書で契約書を作成しなければなりません。

本件の場合、委託者兼受託者がAで、受益者をBとします。株式の議決権行使は、受託者であるAが行います。もし仮にBが代表取締役にふさわしくないと判断した場合は、Aの判断で解任の決議をすることができます。受益者Bは、株式の配当が発生した場合は、その利益を受けることができます。また、Aが死亡したときは、信託を終了させ、Bに株式を帰属させるようにしておくことで、他の相続人が株式を相続することはありません。受益者をBとすることで、贈与税の問題が出てきますが、株価が300万円であるため、少額で済みます。

まとめ

自己信託は、これから増えてくるのではないかと思います。受託者がなかなか決まらないときでも、まずは自分で受託者になり、機を見て受託者を第三者にお願いすることもできます。自己信託の場合は、詐害的にならないようにする必要がありますので、設定する際は、専門家にご相談ください。

判例紹介

賃貸物件の手入れ

東京地裁 平成08年03月25日 判決

事案の概要

賃借人Xは平成元年7月2日、賃料月額9万7000円、敷金19万4000円で賃貸人Yから建物を賃借した。平成3年7月2日の契約更新時に賃料が1万円増額され、敷金も2万円増額されたのでXは追加交付し、敷金はあわせて21万4000円となった。

平成6年3月31日に賃貸借契約を合意解除、Xは同日建物を明渡した。

Yは、Xが通常の使用による損害以上に損害を与えたとして、補修工事を実施し46万9474円を支出し、敷金を充当したので敷金は返還できないと主張したため、Xが敷金の返還を求めて提訴した。

第一審(保土ヶ谷簡易裁判所平成7年1月17日判決)では、Xが破損に何らかの寄与をしたり、通常の使用を超える損害・損耗を超えないとしてXの請求を全面的に認め、Yが控訴した。

裁判所の判断

室内に発生したカビが相当の程度・範囲に及んでいたこと、本件建物の修繕工事をした業者が同一建物内の他の建物の修繕をしたがそこには本件建物のような程度のカビは発生していなかったことから、Xが通常の態様で使用したことから当然に生じた結果をいうことはできず、Xの管理、すなわちカビが発生した後の手入れにも問題があったといわざるを得ない。

カビの汚れについてはXにも2割程度責任があり、「故意、過失により建物を損傷した有責当事者が損害賠償義務を負う」旨の契約条項により、Xは修繕費の一部15万5200円のうち、3万円を負担すべきである。

以上から、Xが請求できるのは敷金21万4000円から3万円を差し引いた18万4000円とした。

コメント

大掃除の計画・実行の季節です。賃貸物件にお住まいの方は、物件の今の使用状況を見直す良い機会かもしれないですね。本件ではカビが発生した後に手入れを怠ったことで敷金が一部返還されない結果をもらたしました。

契約締結の際はもちろん、内容変更や契約更新、解除の際にも契約内容をよく読み、不明な点は司法書士・弁護士等専門家に相談して行動することをお勧めします。

(出典)『再改訂版・賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン』(一財)不動産適正取引推進機構編著大成出版社

司法書士日記

紅葉を見に行こうと、友人と女二人で広島の宮島に1泊2日の小旅行に行きました。ただ、紅葉狩りというのは名ばかりで、実際はご当地グルメを食べ続ける旅行となりました。広島風お好み焼きは3回食べ、生牡蠣、焼き牡蠣、もみじ饅頭、変わりもみじもみじ饅頭、あと、、、なんだっけ?

とにかく、食べたり、お酒飲んだり、ひたすら喋って笑って。お陰で、体重は順調に増加し、冬に向けて着々と蓄えております(笑)。ちなみに、紅葉はどうだったかというと、残念ながら記憶にあまり残っていません。あれ?そもそも何しに行ったんだっけ?

(健軍事務所 司法書士 山﨑 順子)

コラム

手作り教室

先日、高校の友達からの誘いで、まげわっぱの手作り教室に参加してきました。

まげわっぱのお弁当箱を人吉から来られた師匠に教えて頂き手作りしました。杉で作られたまげわっぱの部品に小刀を使い穴を開けて、桜の皮を通します。

釘は一本も使わず、木同士を組み合わせて組み立てていきます。材料を手に取ると、とても良い香りがして気持ちも癒されました。

師匠は普段、人吉のほうで作品を作ったり、工房で教えたりしていらっしゃるとのことでした。

会場では師匠の作品にも触れることができ、木のぬくもりや、技術力の高さに感動しきりでした。師匠のお嬢さんが後を継ぐと聞き、この素晴らしい伝統工芸が続いていくことに嬉しさを感じました。

参加者は20人ほど、子どもさんの人数を入れたら30人ほどの集まり、主催者の女性は高校の3つ下の後輩で元自衛官、明るく気さくな人柄です。以前は会社と家の往復ばかりだったこともあり、自分の友達やご主人の友達、友達の友達などご縁のある方とこういったゆるいつながりでの集まりを主宰するようになったとのことでした。

まげわっぱを作り終えた後、皆で食べた豚汁とおにぎりは最高に美味しかったです。

とても笑顔にあふれた活気のある会でした。こういったご縁を大事にしていきたいと思いました。

(清水事務所 大島 文恵)

お知らせ

寄り添う支援で笑顔ふたたび

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