法エールVol.47

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ご挨拶

10月に開催された「ハートフルくまもと大会メモリアルリレーマラソン」に参加しました。いつもお世話になっている方のお誘いもあり、当法人からは、私を含め4名で参加しました。KKWING外周(750m)を8時間で何周できるのかということを競う大会です。

私は、チームの2番目にスタートしましたが、2年前に痛めた両膝の調子を見ながらの疾走?でした。しかし、運動不足は否めません。70歳位のおばあちゃんからも追い越され、昔、スポーツをやっていたという片鱗すらありません。750mを走るという短い時間の間に、何とも情けない気持ちがこみ上げてきました。そして、走った後に決意しました。膝を治すリハビリと減量に取り組むということです。その日のうちに、早速実行に移し、現在実践中です。結果報告は、後日させていただきます。より良い法的サービスを提供していくためにも、まずは、自己変革から始めていきます。

それでは、今月号もよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

信託-主として民事信託について

前回は、信託の基本的な概念や仕組みを説明しました。今回は具体例を通して、信託の活用事例を紹介します。

 

(事例1)

Xは、地主として先祖代々承継してきた土地と建物(アパート・マンション等)を所有しており、その不動産収入(地代・賃料)が主たる収入です。妻Yとの間に子供はおらず、Xの法定相続人は、YとXの弟Zです。

Xは、自分が死んだら妻には不自由させたくないので、財産はすべて譲りたいのですが、次にYが死亡すれば、X家が代々引き継いできた不動産がYの親族に渡ることになってしまいます。XはYが死んだら、不動産はすべてX家の親族であるZやその子供たちに遺したいと希望しています。

遺言では、「すべての財産をYに相続させる。Yが死亡したら弟Z、Zが死亡している場合には、その子に相続させる」といった連続的な資産承継を定めることはできません。最終的にZやその子供たちに資産を承継させるには、妻Yに「すべての財産はZ(もしくはその子供)に遺贈する」旨の遺言書を作成してもらう必要があります。しかし、それはYの意思によるので、Zやその子供たちが資産を承継することは必ずしも保証されません。

このような事例では、信託を活用することで、Xの希望を反映させた資産承継のスキームを作ることができます。

 

1.XとA(信託会社等)との間で契約で信託の設定をし、受託者であるAに財産を移転します。

2.Xの生存中は受益者(この場合は地代・賃料を受け取る権利)をX本人にし、Xの死亡後は受益者をYにします(※受益者連続型信託)。こうすることで、X死亡後Yの生存中は、Yが地代や賃料を受け取ることができます。

3.妻Yの死亡により信託が終了するように定め、信託財産の帰属先をZやその子供たちに指定します。

 

こうすることで、最終的に、X家の先祖代々引き継いできた不動産は、Zやその子供たちに承継させることができますし、妻Yの生活を心配しなくてもすみます。

※受益者連続型信託…受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む)のある信託をいいます。

 

(事例2)

Xには、妻Yと知的障がいのある子供Zがいます。Xは、自分とYが亡くなった後の一人息子Zの生活が心配です。

Xは、X・Y・Z全員の死亡後に残った資産の全額を、Zがお世話になっている障がい者施設を運営する社会福祉法人甲に寄付したいと考えています。

X、Yの相続が発生すると、XYの資産すべてをZが相続します。Zが、「自分の財産の全部を社会福祉法人甲へ遺贈する」旨の遺言を作成すれば何ら問題ないのですが、Zには遺言を作成する能力がないため、Zの死亡時に残った資産は相続人不存在として、国庫に帰属します。

このようなケースで、事例1でも出てきた受益者連続型信託を利用することで、遺言では実現できないXが希望する資産の承継ができます。

 

1.Xは、Zのために法定後見開始申立てを行い、Zのために後見人を選任します。同時にXはA(信託会社等)との間で契約により信託を設定します。

2.内容は、当初は受益者をX自身とするが、Xの死後、2次受益者をYにします。さらにYの死後は、3次受益者をZにして、Zの生存中の生活・療養に必要な資金は、受託者Aから後見人Wに必要に応じて給付するようにします。

3.Zの死亡時に信託が終了するように定め、残った資産の帰属先を社会福祉法人甲に指定します。

 

こうすることで、Y及びZが生存中に残した資産は、国庫に帰属せずに、Xが希望するとおり社会福祉法人甲へ承継させることができます。

なお、受託者と後見人を同一人物が兼ねるということも可能です。

 

今回は、相続時に遺言では対応できない問題を、信託を活用することで解決できる事例を取り上げました。次回も引き続き、信託の活用例を紹介していきます。

判例紹介

自筆証書遺言が無効とされた事例

東京高等裁判所 平成18年10月25日

<事案の概要>

亡Aさんは、平成16年5月13日に死亡し、その相続人は、妻Bさん、長女Cさん、長男Dさん、二女Eさん、二男Fさん及び亡Aさんと亡Gさんとの間のHさんである。

自筆証書遺言は、縦約25.7cm、横約18.2cmの大きさに切り取られたカレンダーの裏面と封筒から成り、文書には、署名及び押印はなく、冒頭に「遺言書」と、末尾に「平成14年5月13日」という日付が記載されているほか、「妻と共有の土地家屋をDさんに」「マンション203号室だけをFさんに」などと記載され、封筒は、表に「遺言書」と記載され、裏面には、亡Aさんの氏名及び封じ目に「封」と判読できる1文字が記載され、亡Aさんの氏の印影が顕出され、検認時には既に開封されていた。

遺言は、東京家庭裁判所において検認された。Dさんは、検認の際、同年7月3日、亡Aさんの自宅の金庫の中に封筒に密封された文書を発見したと述べた。筆跡については、Dさんらは、亡Aさんの筆跡であると答え、封筒の裏面の印影については、Cさん、Eさん及びHさんは亡Aさんの印章であるかどうかは分からないと答えた。

 

<裁判所の判断>

文書には亡Aさんの署名及び押印がなく、自筆証書遺言として有効なものと認めることはできない。もっとも、亡Aさんが封筒に署名して押印し、かつ、文書と封筒が一体のものとして作成されたと認めることができるのであれば、亡Aさんの自筆証書遺言として有効なものと認め得る余地がある。

しかし、1.文書の作成日付の数か月前から亡Aさん死亡時までの間、Dさんのみが同居しており、2.Dさんは、亡Aさんの四十九日法要の当日、Cさんらに対し、文書のコピーのみを示し、文書を発見した時期についても告げず、3.検認の際、Cさんらに対し、文書及び封筒の各原本を初めて示し、遺言書を法要の当日に発見したと初めて告げたのであり、これらの事実に加え、4.検認の当時、封筒は既に開封されていたことをも考慮すると、Dさんの主張は認めることができない。

したがって、文書には亡Aさんの署名及び押印のいずれをも欠いており、遺言は、民法968条1項所定の方式を欠くものとして、無効である。

 

<コメント>

民法では、自筆証書遺言の要件について、厳格に規定しています。しかし、自筆証書遺言の場合、その遺言書がどのような状況で書かれたものかを後で確認をすることはほとんど出来ません。今回の事案は、家族の間で争いが起こってしまい、亡くなった人は残
された家族が争っている状況を目にしたら、とても悲しむことでしょう。(それを確認することはできませんが・・・。)

したがって、遺言は偽造や紛失がなく、証人も立ち会った公正証書遺言で残されることをお勧めします。少しでも相続が「争族」
になることが無いように、遺言を作成する際はその残し方にも気をつけた方が良いですね。

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

つい先日、大学の同級生に子どもが生まれたということで、出産祝いを友人たちとすることになりました。

毎回、何にするか悩むのですが、一人の提案で「おむつケーキ」を贈ることにしました。

実は、それまで私は「おむつケーキ」なるものを知らなかったのですが、主に紙おむつをデコレーションケーキのように装飾したもので、中には肌着やタオルも一緒にドレスアップさせたものもあるようです。「ケーキ」でも実際に食べれる訳ではありません!

よくよく考えてみると、その「物」自体は特に珍しいものではありませんが、実用的なものをちょっとした工夫で見た目も可愛いプレゼントに変えてしまうというアイディアは見習わないといけないな~と感じました。

普段からいろんな方向にアンテナを張り巡らせておかなければっ!と感じた出来事でした。

(健軍事務所 司法書士 山﨑 順子)

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