法エールVol.44

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ご挨拶

平成24年7月九州北部豪雨では、過去に経験をしたことがないような大雨が降り、多くの被害が発生しました。被害に遭われた皆さまには、お見舞い申し上げるとともに、お亡くなりになった方につきましては、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

私たち法人も、今回の大雨被害直後に何かお手伝いができればと、数名で甚大な被害が発生した熊本市北区龍田地区の清掃作業のお手伝いをしてきました。雨の中、大勢の方と一緒に部屋の中や庭先の土砂排出等しましたが、次から次へとお手伝いをすることがでてくる状態でした。若い人たちが、ボランティア登録をされ、清掃作業のお手伝いの申し入れもされていました。また、2度目の時には、地元高校の野球部の人たちが、ボランティアとして、一所懸命にそして素直な心で取り組んでいるのを見て、感動致しました(高校名がわかりましたので、手紙で感謝の気持ちを伝えました。)。

阿蘇地方でも、大きな被害があったということで、会社経営をしている私の友人にも電話で話をしました。それぞれに電話先では、元気な声でしたが、元に戻るのは時間がかかるといわれ、悲痛な気持ちが伝わってきました。今回の被災からの復興・再興についても、「代受苦者」の心で接し、私たち法人も、しっかりと対応させていただきます。

それでは、今月号もよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

事業承継について

今回は、事業承継の第2回目です。親族、社員、役員へ承継する場合についてご説明します。

 

第1 株式対策

1 はじめに

事業承継で重要なのは、株式の承継です。創業時は株価がそんなに高くなくても、その後会社が急成長し、純資産額が設立当初よりも増えていると、株価も上がりますので、後継者に承継させる際に、1株が創業時の数百倍になっているケースがあります。

 

2 株式の承継方法

株式を承継させるには、生前贈与や遺言の活用が考えられます。特に遺言は、是非作成されることをお勧めします。遺言を残さなかった場合は、亡くなった後、相続人が遺産分割等で苦労するケースにもなります。話し合いがつかない場合は、株主としての権利を行使できない可能性もありますので、事業が停滞してしまいます。事業をスムーズに引き継がせるためにも、遺言書は重要です。

 

3 遺留分対策

遺言の場合に注意しておかなければならないのは、遺留分です。承継者に財産の大部分を承継させるという遺言を作成しても、遺留分の関係で思った通りにならない場合があります(遺留分については、法エール№8をご参照ください。)。

そのため、遺留分対策が必要となります。相続人となる家族と話し合いができるのであれば、遺留分の権利をもっている親族に、生前に遺留分放棄という手続を家庭裁判所で行ってもらえれば、相続発生時に、遺留分放棄した親族から遺留分の請求をされることはありません。ただ、この場合は、遺留分の権利をもっている人全員が、遺留分放棄をしなければ、将来遺留分放棄をしなかった人から遺留分の請求をされる可能性があり、将来への不安が残ります。親族の協力が必要です。

もうひとつの遺留分対策は、経営承継円滑化法の民法特例という制度を利用することです。これは、相続人となる親族全員から生前に合意をもらって、一部の財産を遺留分の算定財産から除外できるという制度です。これも、遺留分の放棄と同様、相続人となる親族全員と話をして了解をもらわなければなりません。この制度を利用するには要件がいくつかありますので、事前に専門家へご相談されることをお勧めします。

 

4 株式が分散している場合の手続き

相続等が発生している等で株式が分散している場合、株式を後継者等に集中しておく方がいいケースがあります。株主総会は、普通決議でも、原則、総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その議決権の過半数の賛成が必要となります。株式が分散しすぎて、株主の同意が得られず、普通決議でさえ過半数の賛成を得られないという状況が発生すると、事業に影響を及ぼします。

そのため、株式を普通株式から種類株式という株式に変更したり、会社や承継者が株式を売買にて取得したりする必要が生じます。種類株式は、議決権を制限できたり、剰余金を一部の株主に優遇したりと、いろいろな用途で使える制度ですので、事業承継の際には、是非ご検討いただければと思います。

 

第2 税金対策

事業承継で、株式や不動産等を承継者に譲渡する場合、税金が発生します。株価が非常に高いと譲渡に際して、多額の税金がかかる恐れがあります。そのため、株式に関しては、事業承継に際して、贈与税、相続税の納税猶予の制度があります。

事業承継に関しては、税金の問題が非常に大きなウェイトを占めますので、事業承継の計画をたてる際には、税理士の方との協議が必要となります。

 

事業承継は、上記以外にも検討すべき事項があり、難しいところがあります。事業承継計画をたてる際には、お近くの専門家にご相談されることをお勧めします。

次回は、第三者へ譲渡する場合について、ご説明します。

判例紹介

自動車の瑕疵と売買契約の解除

水戸地方裁判所 平成9年1月27日 判決

<事案の概要>

A: 消費者(原告)
B会社: 自動車販売会社(被告)

Aさんは、平成3年11月24日、B会社から国産高級自動車を代金約660万円で購入した。

平成5年8月末ころ、車のエアコンの排水不良から床マットが水浸しになるトラブルが起きたという理由でB会社に修理を依頼し、同年9月14日に修理が完了したとして車両の引き渡しを受けた。しかし同月23日に走行中、エンシンの回転数が上がらなくなる現象か生ずるとして、B会社に車を引渡した。

その後、B会社が修理をしてAさんに引き渡そうとしたが、Aさんは安全性について納得の行く説明が得られるまで受領できないとして、受領を拒否した。

争点となったのは、平成4年2月ころから走行中にエンジンの回転数か落ちて急ブレーキをかけたようになる現象が起こることおよびエアコンの排水不良から床マットが水浸しになるなどのトラブルが発生し、B会社が修理をした後も改善されていないとして、修理不能の瑕疵(欠陥)が存在していることを理由としてAさんが売買契約を解除する旨を主張したのに対して、B会社はエンジントラブルに関する瑕疵は存在しておらず、排水不良については補修済みであるとして契約解除を争った点である。

 

<裁判所の判断>

本件車両を運転した場合、エアコンの排水不良により水滴が助手席の上に落ち、床が水で濡れること、時々ではあるが走行中に突然速度が落ち、アクセルペダルを踏んでも暫く加速できない状態になる事実が認められる。

そして、この瑕疵の内容は、通常の乗用自動車にはあってはならないものであるし、その程度は、B会社が修理をし、かつ不具合はないはずであると主張することと併せて考えると、修理不能であるものと判断しなければならない。そうすると、Aさんは、本件車両を買い受けた目的を達成することができないものであるから、Aさんの本件解除は有効なものである。

売買契約の解除により填補されるべき損害については、Aさんは平成3年12月初めから平成5年9月末まで約2年間本件車両を使用したこと、ただしその間数回にわたり走行中に異常な状態が生じ、正常な形での使用はできなかったことなどの事情を考慮すると、本件車両の売買代金から使用料相当額として4割を控除し、かつ弁護士費用として50万円を認めるのが相当である(認容合計金額4,487,000円)。

 

<コメント>

自動車の場合、一般の家電製品の場合と違って登録制度があることもあって、メーカーや販売業者は瑕疵(欠陥)の範囲を極めて狭く取り扱おうとする傾向が強いようで、瑕疵に関する問題の解決は難しくなっているのが実情のようです。ここにいう「瑕疵」とは、「売買の目的物が通常有すべき性能・品質を有していないこと」とされています。本件での主な争点は、エアコンの排水不良と走行中にエンジンの回転数が上がらなくなることが瑕疵に該当するか否か、これによる契約解除が認められるかという点でした。判決では、「この瑕疵の内容は、通常の乗用自動車にはあってはならないものである」「修理不能である」ことから瑕疵に当たると判断し、Aさんの損害賠償請求を認めたものです。

 

参考: 判例時報1600号125頁

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

7月に秋田県に旅行に行ってきました。秋田と言えば、「ナマハゲ!!」ということで、なまはげ館というところに行きました。そこでは、ナマハゲ体験ができ、実際にお面や衣装を着け小道具を手に持ちなまはげになりきることができます。これは非常に嬉しかったですね!ナマハゲは怖いというイメージがあったのですが、実は意外にいい人だということがわかりました。ここで少しナマハゲについてご説明します。(ナマハゲの由来等は地域等で様々な説があるようなのですが、ここでは真山地区のナハマゲについてご説明します。)

 

~ナマハゲとは~

ナマハゲは、むやみやたらに家々に入るのではない。ナマハゲを家に入れる主導権はその家の主人にある。ナマハゲは、家に上がりすぐに四股(シコ)を7回踏む。これで初めて家の中を歩き回ることができる。「ナマケモノはいないか!」などと、荒荒しい奇声を上げ畳を強く踏みしめながら歩き回る。そして、その家の主人がナマハゲをなだめて丁重にもてなしお膳を添える。ナマハゲは添えられたお膳に座る前に5回シコを踏む。ウオー!ウオー!と唸っているナマハゲに主人は酒肴をすすめる。主人とナマハゲとの間で様々な問答が交された後、ナマハゲは来年も豊作であるよう祈願し、再び立ちあがり3回シコを踏みまた歩き回る。ナマハゲはその家を立ち去る前に「来年もまた来るぞ!」と言い残し次の家へ向かう。ナマハゲは、その家の子供達が病気や怪我などせず幸福になれるようシコを踏むのである。

(なまはげ館HPより抜粋)

 

(龍田事務所 司法書士 佐藤 芽久美)

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