法エールVol.39

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ご挨拶

パソコンをはじめとしたIT(情報技術)機器がなければ仕事にならないという職場が増えてきています。司法書士業務もIT機器を利用して登記申請を行っており、わが法人にいたってはIT機器に依存しつつあるという状況に至っています。

本来ITの役割は、時間効率を良くし、幅の広い業務ができる等質の高い仕事を行うためのものであったはず。ところが、ITの登場で、人間の防衛本能を刺激し、念のためのCCメールや資料作りに時間を割いてしまい、また、便利さのあくなき追求にIT業界が応えてきているためますます画面と向き合う時間が増えて、ストレスを溜めてしまうという、本末転倒の状況にあります。

この状況を打開すべく、ある企業の打ち合わせは手書きの「メモ」を基本とし、「トップレス・ミーティング(会議)」すなわち、モバイル機器やパソコンの持ち込みを禁止する会議や打ち合わせを実践しているということです。これにより、会議参加者の集中力を高め、より深い議論をすることになり、また、会議中に内職する人もいなくなるというおまけもついたそうです。

とはいえ、全くITをやめるのは無理ですね。ストレス緩和のためにも、ITから少しでも離れる時間を意図的に作り、休日には、会社のアドレスを気にしないルールつくりをトップ主導でしていくことが大切なことになるのではないでしょうか。

今月の格言、「酒は、飲んでも飲まれるな、IT機器は使っても、使われるな」。

今月号もよろしくお願いします。(2012年2月8日付朝日新聞参考)

(代表社員 大島 隆広)

ペットにまつわるトラブル

前回より、ペットにまつわるトラブルについて、Q&Aを交えて紹介しました。

今回も引き続き、ペットにまつわるトラブルQ&Aをご紹介したいと思います。

Q. 私が隣の家に回覧板を持っていったところ、庭で放し飼いになっていた秋田犬がとびかかってきました。わたしは手と足を数か所咬まれ、全治1カ月のケガをおいました。飼い主は、「回覧板は郵便受けに入れてくれればよかったのに。あえて敷地にはいってくる必要はなかったんだから、治療費は一切ださないと言っています。飼い主の言うとおり、私は治療費を請求することができないのでしょうか?
A. できます。
飼い主は、人に危害を加えないように丈夫な鎖でつないでおくべきで、外への散歩のときなどは、犬の行動を制御できるように大人が付き添うべきでしょう。また、今回のように屋敷内であっても、他人が訪問して通行することが予測される場所で犬を放し飼いにすることは、それ自体飼い主に落ち度があると考えられます。したがって、飼い主は人に危害を加えるおそれのある秋田犬を、不用意に屋敷内で放し飼いにしたことによって、その秋田犬があなたに加えた危害から生じた損害を賠償する義務があります。また、あなたは回覧板を届けるために隣家に行ったのですから、飼い主にとってもそのような用事で他人が家に来ることを通常なら十分に予測できたはずであり、自分の屋敷内において、訪問者に不慮の事故を起こさせないように配慮することは、当然の義務です。したがって、治療費を請求することはできます。

 

もし「猛犬に注意」の貼札が貼ってあった場合は?

家の門の付近に「猛犬に注意」などの貼札をしてある場合がよく見かけられますが、これには万一、犬による危害が生じたときに飼い主の責任を軽減する意図があるように思われます。しかし、このような貼札は被害者側の過失の有無強弱を判断する資料になることはあっても、加害者の注意義務を軽くする資料にはならないでしょう。すなわち、「猛犬に注意」の貼札は、これによって訪問者も犬に対する注意を呼び起こされ、犬による危害を防ぐ効果に意味があると言えます。

今回、治療費、慰謝料等の請求ができるか?

あなたが秋田犬に咬まれてケガをしたことについて、飼い主に過失が認められる場合、あなたは飼主に対して治療費だけでなく、ケガをしたことによる精神的苦痛に対する慰謝料、また、そのケガによって後遺症を負った場合は、後遺症をおわなければ今後得たであろう利益(逸失利益)を請求することもできます。

また、小学生が通学途中で通学路の道端に鎖などでつないである飼い犬に触ったりして、咬みつかれ大ケガをしたような場合、通行人が容易に近づける道路近辺に犬をつないでおくことについては、やはり飼い主の過失が問題となるでしょう。もっともこの場合、犬に手を触れたりした子ども側(親を含めた)との過失相殺を考慮することになり、損害賠償請求額は相当減額されることも考えられます。また、飼い主が不注意であったため、飼い犬が他人にかみついたりしてケガをさせたときは、刑事上も業務上過失傷害の罪が問題になります。(刑法211条)また、正当な理由がなく飼い犬を解き放したり、その看守を怠って逃がしたりすると、軽犯罪法に触れて処罰の対象となります。(軽犯罪法1条12号)

ペットは家族の大事な一員ではありますが、隣近所とのトラブルを避けるためにも、飼い主としての責任を十分に認識して、飼うことが大事ですね。

(参考文献)『隣近所の法律知識出版』自由国民社

判例紹介

海外ツアー中、観光地に置き去りにされたことにつき、慰謝料請求が認められた事例

岐阜地方裁判所 平成21年9月16日 判決

<事案の概要>

Xさんは、B社との間で目的国をトルコ共和国とする募集型企画旅行契約(いわゆるパッケージツアー)を締結した。この旅行では、B社の従業員Cが添乗員としてすべての旅行行程に同行し、トルコではさらに現地ガイドDが同行した。

参加者らは、チャナッカレを専用バスで出発し、トロイ遺跡を観光後、ベルガマ遺跡観光(アスクレピオン、アクロポリスの順に観光)をした。

しかし、バスは、アスクレピオンを出発する際、Aさんを乗せずにアクロポリスに向かってしまい、Aさんは、アスクレピオンに置き去りとなった。

アスクレピオン観光では、現地ガイドDが先頭に立ち、参加者らはDの説明を聞きながら付いて歩くという方法で行われ、添乗員Cは参加者らの後方に付いて歩いた。アスクレピオン観光中および観光終了後バス出発までの間、参加者らに自由行動を取ることは認められていなかったが、Aさんは添乗員Cの指示に反して参加者らの列から離れ、添乗員CやDの許可を得ずに勝手に土産物屋で買い物をした。

添乗員Cは、トイレに寄った参加者ら数名を連れてバスに乗り込むと、Dから「オーケー」という声を掛けられ、すでに人数確認が済んで参加者らが全員いると思いこみ、バスをアクロポリスへと発車させた。

Aさんが買い物を終えて、バスに向かって歩き出したところ、バスが動き出した。Aさんは、バスが引き返すことを期待して10分程度その場で待機した後、近くにいた別の日本人旅行者の車に同乗し、アクロポリスに3分ほど遅れて到着した。

アスクレピオンとアクロポリスは、車でも20分、徒歩で1~2時間程度かかる距離にある。

アスクレピオン周辺には日本語が通じる者は少なく、Aさんも片言の英語を除き外国語に通じておらず、トルコ語は全く理解していなかった。また、Aさんは、わずかなトルコリラ(トルコの通貨)、クレジットカードおよびデジタルカメラしか所持していなかった。

以上の事実のもと、Aさんは、添乗員Cは点呼・確認を行い、参加者が欠けている場合には、待機、救援、保護を行うべきで、それを怠ったことは旅行契約に付随する義務の不履行にあたる等と主張して、民法715条(使用者責任)に基づいてB社に対して、慰謝料20万円の支払いを求めた。

 

<裁判所の判断>

(1)添乗員は、旅行業務取扱主任者または旅程管理主任者の資格をもって、業として団体旅行に付き添う者であり、社会通念上、旅行者の生命、身体、財産等の安全を確保するため、旅行日程中、その契約内容の実施に関して遭遇する危険を排除すべく合理的な措置をとる義務があるというべきである。

しかし、添乗員Cは、バスに乗り込んだ際、Dが添乗員Cに対し「オーケー」と声を掛けたことを、添乗員Cが参加者らの人数を確認し、全員がそろっているという意味だと勝手に思いこみ、漫然とこれらを行わず、そのため、Aさんがバスに乗り込むまで待機したり、周囲を捜索するなど、Aさんに対して何ら保護、救援活動を行わなかった。このことからB社はAさんに対して民法715条に基づく損害賠償義務がある。

 

(2)一方で、アスクレピオン観光では自由行動時間はなく、参加者らは、アスクレピオン観光中および観光終了後バスに乗車するまで、個人行動を慎む義務があったと認められる。それにもかかわらず、Aさんは、添乗員Cの指示に反して参加者らの列から離れ、添乗員CやDの許可なく勝手に土産物屋で買い物をしたために、Aさんは置き去りにされたのであり、Aさんにも過失があるといえる。

 

(3)旅行後、B社がAさんに対し、5,000円分の商品券を交付しており、Aさんの過失等一切の事情を考慮して、慰謝料は1万5,000円とするのが相当である。

 

<コメント>

これからゴールデンウィークの計画を立てられる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?パッケージルアーは移動の手配や現地での行程を任せられる点でとても便利です。しかし、その反面、団体行動になることが多いので、最低限のルールは守る必要がありますね。せっかくの旅行ですので、いい思い出に残るものにしたいです。

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

先日、とある講演会でお茶(日本茶)の歴史についての話を聴いてきました。

鎌倉時代から抹茶の飲み方が広がり、現在の煎茶の飲み方が広がったのは江戸時代になってからだそうです。もっと手軽にお茶が飲めないかということで、急須で飲む煎茶のスタイルが広がっていったそうです。

鎌倉時代から室町時代にかけては「闘茶」と言われるいわゆる利き茶が大流行し、家屋敷を賭けるなんてこともあったそうです。

私は大学生の時に、とあるアジアンレストランでアルバイトをしていた経験があり、お茶の飲み方やチャイの作り方等に興味を持っていたのですが、歴史を知るともっと興味がわいてきました。

着物を着てお茶をたてる・・・なんてこともしてみたいな~と思う今日この頃です。

(健軍事務所 司法書士 山﨑 順子)

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