かんとくにん?監督人って何をする人ですか ~その4~

  • かんとくにん?監督人って何をする人ですか ~その4~
  • かんとくにん?監督人って何をする人ですか ~その4~

成年後見人への支援やかかわり方はどのようにしたらよいのでしょうか。

 

監督人が選任されるケース

成年後見監督人(以下、「監督人」という)が成年後見人(以下、「後見人」という)とかかわるにあたっては、どのような理由で監督人が選任されることになったのかを把握する必要があります。監督人が選任される事情としては、本人の財産が多種・多額で管理に専門性を必要とする場合、不動産の売却や遺産分割が予定されている場合、後見人が後見事務に不慣れである場合などが考えられます。また、後見人の業務に不正があったり、不正を未然に防止するために、事後的に監督人が選任されることもあります。

監督人としては、これらの内容を確認し、その期待されている役割を認識したうえで後見人と接することになります。たとえば、財産が多種・多額の場合は、後見人が適切に財産を管理しているかを監督し、後見事務に不慣れな後見人に対しては、相談相手となって支援することになるでしょう。一方、不正があったと思われる場合は、その不正の有無を調査して改善を求めるなど、後見人に対し毅然とした態度で臨むことが必要な場合もあります。

 

後見人と接する際の心構え

監督人には、後見人に対する一定の指導や助言、相談対応の役割が期待されていることから、後見人の職務の内容について丁寧に説明し、正確に理解してもらう必要があります。説明の仕方として、後見人に対し、その職務内容や後見人として注意すべきことなどを文書にして示すなどといった工夫も必要でしょう。特に、後見人として行ってはいけないこと(相続税対策のため本人の財産から親族に贈与したり、家庭裁判所の審判がないにもかかわらず後見人の報酬として勝手に本人の預金から引き出すなど)や、監督人の同意が必要となる法律行為(民法864条)については、その説明を受けたことについて、後見人からサインをしてもらうといった方法も考えられます。このようにしておくと、監督人から後見人への説明不足を防ぐこともできます。

しかし、後見人の中には「監督」という言葉に抵抗感をもつ人も少なくありません。監督人が選任されたということは、信用できない者とみられているのではないかと誤解し、家庭裁判所や監督人に不信感を抱く人もいるでしょう。また、後見人が監督人よりも年長の場合、年少の監督人からの監督を受けることに違和感をもつ後見人もいるかもしれません。

本人の生活状況や性格などをよく知っている後見人は、本人のために熱心に活動を行っているものの、それがときとして適切な後見事務かどうか悩ましい問題が出てくることもあります。たとえば、施設入所中の本人の自宅を心配して毎日のように交通費を支出して自宅を訪問したり、今は読むことがほとんどできない雑誌を購入するなどした場合、監督人が「監督」という名の下に、後見人に対して一方的にそれらの活動を否定するような発言をすることは、後見人の熱意を削いだり、監督人に反発心を抱くことになりかねません。監督人は後見人の心情にも配慮しつつ、適切な後見業務の伝え方にも工夫が必要でしょう。同時に、監督人から法律的・福祉的な観点からのアドバイスや報告書作成の支援を受けることができるなど、監督人の存在は後見人にとってもメリットがあることを実感してもらう取組みが大切です。

 

監督人としてのゴールを意識する

今後、中核機関等による後見人への支援体制が整えられていく過程において、監督人は後見人が適切な後見事務が行えるよう支援することがさらに期待されています。後見人が適切な後見事務を行うことができれば、本人の意思決定支援や身上保護を重視した支援にもつながるからです。そして将来、監督人による支援の必要性がなくなったときは、不正のおそれがないなども確認したうえで、監督人を辞任することも検討することになるでしょう。

 

(司法書士 山﨑 順子・やまさき じゅんこ)

実践 成年後見 No.86/2020.05 掲載

【掲載者】 山﨑 順子