成年被後見人が次回の選挙で投票したいと言っています。成年後見人としてどのように対応したらよいでしょうか。

成年被後見人の選挙権

平成25年5月、成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律(同年法律第21号)が成立し、公布されました。それまで、公職選挙法(以下「法」という)11条1項において、成年被後見人(以下「被後見人」という)は選挙権および被選挙権を有しないとされていました。しかし、この規定は成年被後見人の人権を侵害するとして東京地裁平成25年3月14日判決で違憲判決を受け、改正に至りました。

 

投票の支援は成年後見人の職務か

成年後見人(以下「後見人」という)にはその職務を行うにあたり、被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態および生活の状況に配慮しなければならないとされています(民法858条)。選挙権は、被後見人にとっても国政への参加の機会を保障する基本的権利であるため(憲法15条)、被後見人のためにヘルパーを手配するなど、選挙権の行使につき支援することが、後見人の職務として当然の義務と考えられます。

しかし、投票行動は、思想・信条の表明でもある以上、投票の内容について後見人が干渉することとならないように、細心の注意が必要です。

したがって、選挙期日の案内は問題ありませんが、「選挙に行こう」などといった推奨まで行うべきではなく、支援の申出が被後見人からない限り、後見人からの特段の働きかけは控えなければなりません。

 

「投票したい」と言われたら

支援の申出があった場合、後見人はその意思を確認したうえで、適切な投票方法を検討、選択し、支援を行うことになります。

身体障がいを抱える被後見人が、投票所において投票を行う場合は、その投票所がバリアフリーになっているか等、事前に市区町村の選挙管理委員会等に確認しておきましょう。心身の故障その他の事由により候補者や政党の記載ができない場合は、投票所の職員から補助すべき者2名が指定され、一人が代筆し、他の一人がこれに立ち会うとされています(法48条)。なお、投票日に投票に行けない場合は、期日前投票による投票(法48条の2)の利用を検討することになります。

また、疾病や身体の障がいのために投票日当日に投票ができない場合において、都道府県選挙管理委員会の指定する病院、老人ホーム等において投票をしようとする者は、市区町村の選挙管理委員会の委員長に対して、その投票をしようとする場所を申し立てて、投票用紙等の交付を請求することができ、不在者投票管理者に指定されているこれら施設の長も選挙人に代わって申立て・請求を行うことができます(法施行令50条1項・4項)。なお、被後見人が入院・入所する病院・施設等が指定されているかについては、事前の確認が必要です。

その他、身体に重度の障がいがある者や要介護度5の者は、郵便等により投票を行うことができます(法49条2項)。

各選挙における投票方法等の確認については、各市区町村の選挙管理委員会のホームページ等を参考にするとよいでしょう。

 

不正行為への対応

後見人は被後見人の投票行為を監督したり、確認したりする立場にはありません。しかし、被後見人の意思に反する投票行為が行われ、もしくは行われるおそれがある場合は、告発や法的処置等も検討しなければなりません。たとえば、被後見人が投票する意思(または能力)がないにもかかわらず、指定施設の施設長が被後見人の投票用紙を請求していたり、被後見人の知人がしつこく特定の候補者に投票するように働きかけたことにより被後見人の心身に支障が生じた場合は、後見人は選挙管理委員会と協働しての法的対応や、不法行為による損害賠償請求を行うことも検討すべきでしょう。

実践 成年後見 No.79/2019.03 掲載

【掲載者】 山﨑 順子