遺言の活用①

「自分が死んだあと、子供たちが争いを始めないか不安なのできちんと整理しておきたい。」

「自分が死んだあと配偶者の生活が心配なので、遺言を遺しておきたい。」

 

と遺産分けを行う方、

 

「あまり多くはないが自分の遺産を世の中のために役立てて欲しい。」

 

と遺言で寄付をされる方、

 

「先祖代々の墓を守ってもらうようお願いしたい。」

 

と先祖供養を子供に託す方など、その目的は様々ですが、相談者の多くが自分の死んだ後争いが起こることなどを避けるために、遺言を活用されるようです。

 

今回は遺言の特徴やその種類、作成方法を説明します。

 

〈遺言書の特徴〉

 

遺言書を作成することで、

1.海外に相続人がいる場合や相続人同士が疎遠である場合などに相続手続が簡単にできます。

2.相続人以外の者に財産を分けることができる等遺言者が亡くなった後の手続を遺言執行者に託し、遺言者の希望通りに実現することができます。

3.一度遺言書を作った後でその内容を変更・取消することもできます。

〈遺言書の種類〉

 

遺言には

1.自筆証書遺言

2.公正証書遺言

3.秘密証書遺言

4.特別の形式による遺言

 

の4つの形式があります。このうち一般的には手続が比較的簡単な公正証書遺言が使われています。

 

公正証書遺言は、公証人という法律の専門家に相談しながら作成します。公証役場は熊本では熊本市、八代市、天草市の三カ所にあります。病気で入院しているなど公証役場まで行くことができない場合、別途費用はかかりますが公証人が出張することもあるようです。

 

公正証書遺言を作成する場合、証人2人が必要です。これは遺言者が遺言をする意思があるかを確認するためです。証人は相続人など一部の者はなることができません。

 

民法第974条 (証人及び立会人の欠格事由)

 

第九百七十四条次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。

 

一 未成年者

二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

 

証人がいない場合でも、公証役場に頼めば費用はかかりますが証人を出してもらえます。当法人では、遺言書を作成するための支援を行っていますので、最寄りの事務所までご相談下さい。

 

〈公正証書遺言の長所〉

 

公正証書遺言の長所として、

1.もし遺言書が無くなったり、破れたりしても公証役場で同じものをもらうことができる

2.原本は公証役場で保管されるので、偽造・変造される心配がない

3.公証役場で作成するため法律上の形式が整っており、法律上有効な遺言を作成できる

4.もし相続人の間で争いになり裁判等になっても、公正証書遺言があれば強力な証拠になる

 

などがあげられます。

 

正証書遺言の短所としては、遺言者死亡前に費用がかかる(公正証書作成の費用)ことがあげられます。反対に、たとえば自筆証書遺言等の場合、検認という手続きを裁判所でとるため、遺言者死亡後に費用がかかります。具体的には、家庭裁判所に遺言書が必要な形式を整えているか、偽造・変造がされていないかを確認してもらう検認手続が必要です。

 

次回、どのようなことを遺言に書くことができるのか、また書くことが多いのか、説明していきたいと思います。