インターネット上の取引契約の成立時期

(東京地方裁判所平成17年9月2日判決)

 

<事案の概要>

①ヤフーが開設するインターネット上のショッピングサイトにおいて、Yの売り出していたパソコン1台の値段が2,787円と表示されていた。そこでXはこれを3台注文し、その日のうちにヤフーから受注確認メールを受信した。そのため、Xは注文が正確にできたと認識した。

 

②翌日にXはYから、サイトの表示は誤ってなされたもので注文には応じられないとそのメールを受信したが、これには納得せずパソコン3台を売り渡すよう求めるメールを返信した。その後の調査により、この契約の目的物はDVDソフトであったところ、Yからヤフーへの伝達は適正であったものの、入力ミスによって、インターネット上のショッピングサイトに中古パソコンと表示されてしまったことが分かった。

 

③その3日後にXはYから契約は成立していないこと、ヤフーはYからの連絡を受けて表示を削除したことでYとしても事故の拡大防止に対処したといった内容のメールを受信した。

 

④その後にXが再度パソコン3台の売り渡しを求め、Yは契約の成立を否定するメールのやり取りがあったが、数ヶ月後にXはパソコン自体は不要であるが、損害賠償として、同機種の中古パソコン3台分の代金相当額345,000円を請求した。

 

<今回のポイント>

ネット上の取引において注文者がサイト開設者から受注確認メールを受信した時点で売買契約は成立するかどうか。

<判決の要旨>

ヤフー(サイト開設者)による受注確認メールは売主の承諾と認めることはできず、これをもって契約が成立したと見ることはできない。よって、Xの損害賠償の請求は認められない。

 

<開設>

ネットの取引は、売主の「電子承諾通知」が注文者に到達したときに成立します。サイト開設者の受注確認メールは、注文者の申込みが正確に発信され、サイト開設者まで届いたことを、サイト開設者が注文者に確認するものでしかありません。そのため、受注確認メールでは、売主に意思表示が到達したといえるものではないようです。

本件以外にも、類似するネットの通信販売の事例において、値段表記を誤り、当初は注文を取り消すメールを送ったが、反発が多く「社会的信用を優先する」ため表記通りの金額で販売し、億単位の損失を出した会社もありますし、反対に「契約は成立していない」ことを押し通したという会社もあるようです。

何れにせよ、やはり間違いを起こさないよう確認することが肝要ですし、ヤフー・楽天・アマゾンなどショッピングサイト任せにしないというところも大切ですね。