入学辞退と授業料の返還請求

最高裁判所 平成22年3月30日 判決

事案の概要

X ・・(受験生)
Y ・・(学校法人)
A ・・(Xの母)

Xは、Y設置の大学医学部の推薦入試に合格し、平成17年11月22日に入学金(100万円)、授業料等(700万6,000円)を納付して入学手続きを完了した。Y大学の入学手続要領には、いったん納付した入学金および授業料等を一切返還しない旨の特約(不返還特約)が記載されていた。Xは、在学契約の解除について、Aが平成18年3月末までにYに入学辞退を電話で伝えたと主張したが、Yは入学辞退の電話連絡を受けたのは4月5日であると主張した。

また、Xは、Yが毎年4月1日以降も補欠合格により入学者を補充しており、4月1日以降も辞退者が出ることを予測し、これに速やかに対応し、損失の回避ができる体制を採っていることから、Yには4月1日以降の辞退であっても4月7日までに辞退した本件においては平均的損害がなく、例外的に不返還特約は無効になると主張し、Yはこれを争った。

判決の要旨

学生募集要項の記載は、一般入学試験等の補欠者とされた者について4月7日までにその合否が決定することを述べたに過ぎず、推薦入学試験の合格者として在学契約を締結し、学生としての身分を取得した者について、その最終的な入学意思の確認を4月7日まで留保する趣旨のものとは解されない。

また、現在の大学入試の実情の下では、大多数の大学において、3月中には正規合格者の合格発表が行われ、補欠合格者の発表もおおむね終了し、学生の多くは自己の進路を既に決定しているのが通常であり、4月1日以降に在学契約が解除された場合、その後に補欠合格者を決定して入学者を補充しようとしても、学力水準を維持しつつ入学定員を確保することは容易でないことは明らかである。

これらの事情に照らせば、Y大学の学生募集要項に上記の記載があり、Yでは4月1日以降にも補欠合格者を決定することがあったからといって、Yにおいて同日以降に在学契約が解除されることを織り込み済みであるということはできない。・・・したがって、Xが納付した本件授業料等が初年度に納付すべき範囲を超えているというような事情はうかがわれない以上、本件授業料等は、本件在学契約の解除に伴って、Yに生ずべき平均的な損害を超えるものではなく、上記解除との関係では本件不返還特約はすべて有効というべきである。

解説

これまで最高裁は原則4月1日を基準として、その前に在学契約の解除の意思表示がされた場合は、大学側に平均的な損害は生じないとして、不返還特約(授業料等を返還しないという特約)は無効としています。(ただし、専願入試等の場合は除きます。)

一般的に考えても、4月1日から新学期ですので、大学側もその後に入学辞退され、納められた授業料等を返還することは予想していないでしょうから、最高裁の判断は妥当なものと考えられるでしょう。

それにしても、やはり医学部の授業料って高いんですね・・・。