野鳩の餌付け

(東京地方裁判所 平成7年11月21日判決)

 

<事件の概要>

区分所有者から使用賃貸していた専有部分に居住していたAが、平成元年~平成2年頃からベランダの手摺りに餌箱を取り付け、居室の窓を開放するなどして、野鳩の餌付け・飼育を始めた。そのため、専有部分やその付近に飛来する鳩の数は50~100羽を超え、糞や羽毛を上下左右の他の占有部分やマンション周辺に撒き散らして汚染し、洗濯物も戸外に干せず、雨樋には糞が詰まって悪臭を放ち、時には鳩の死骸も散乱した。

これに対し管理組合は、平成3年以降被告に何回も警告書を発し、鳩の餌付け禁止を求めたが、Aは無視した。Aは貸主である区分所有者(Aの母親)の注意にも耳を貸そうとしなかった。

そこで、管理組合が区分所有法60条1項(以下、「法」という)に基づき、Aの母とA間の使用賃貸借契約の解除と専有部分の引渡し、さらに餌付け等の行為の反復継続に対する不法行為の損害賠償を請求した。

 

<判決の要旨>

Aの行為は区分所有者の共同の利益に反する行為であって、共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難な場合に当たるとして、法60条1項に基づく使用賃貸借契約の解除と専有部分の管理組合への引渡しを認容し、Aに対して、鳩による外壁汚損の洗浄工事費用等200万円の賠償を命じた。

 

<解説>

近時、マンションやアパート等で近隣住民のトラブルが多くなってきているようです。隣人でありながら、顔や名前も分からないといったことがあると聞きますが、「向こう三軒両隣」という言葉のように、良好なコミュニティーの形成が、防犯や防災にはかかせないようですね。

 

<区分所有法 第60条1項>

区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって、当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。